縄文時代に作られた素焼きの人形「縄文土偶」
10000年以上前から弥生時代が始まる2000年前まで製作され、現在のところ、全国で2万点以上の「縄文土偶」が出土しているのだそう。
そんな、数多ある縄文土偶の中でも「国宝」に指定されている土偶は、たった5つのみ。
そのうちの2つ「縄文のビーナス」と「仮面の女神」が、長野県茅野市にある「茅野市尖石縄文考古館」に展示されているとのことで、見に行ってみることにしました★
「茅野市尖石縄文考古館」へのアクセス
中央自動車道を西へ
「茅野市尖石縄文考古館」は、長野県茅野市の中部にあります。
東京からのアクセスは、車では、首都高4号線と中央自動車道を通り、諏訪南ICから八ヶ岳ズームラインと八ヶ岳エコーラインを経由して2時間半。
電車では、特急あずさで茅野駅下車。メルヘン街道バスに乗って尖石縄文考古館前下車。所要時間は2時間40分。
都内から日帰り圏内です。
八ヶ岳山麓の風景
雄大な八ヶ岳山麓の風景。
約4000年から5000年前の縄文時代中期、ここは文化の中心地でした。
「茅野市尖石縄文考古館」は、そんな、縄文時代最盛期の出土品を多数収蔵・展示する日本でも屈指の博物館。縄文マニアにとっては聖地のような所です。
縄文マニアの聖地「茅野市尖石縄文考古館」
「茅野市尖石縄文考古館」の外観
「茅野市尖石縄文考古館」の外観です。
緑豊かな「縄文の道」沿い、周囲には「尖石石器時代遺跡」と「与助尾根遺跡」があります。
広々とした駐車場も整備されています。
「茅野市尖石縄文考古館」の入り口
「茅野市尖石縄文考古館」の営業時間は、9:00から17:00まで。定休日は毎週月曜日。拝観料は大人500円です。
さっそく、館内へと入っていきましょう〜♪
「茅野市尖石縄文考古館」の営業時間・入場料
- 住所:長野県茅野市豊平4734-132
- 営業時間:9:00~17:00
- 定休日:月曜日
- 入館料:大人500円、高校生300円、小中学生200円
- HP:https://www.city.chino.lg.jp/site/togariishi/
国宝土偶のレプリカ
のっけから、入って入り口のロビーに、当博物館のメインの展示物「縄文のビーナス」と「仮面の女神」のレプリカが飾られていました! スーパースター(ヒロイン)です!
コロナ禍のため、マスクをしているのもかわいい♪
賞状「縄文のビーナス殿」
ローブを纏った「縄文のビーナス」
こちらは、「縄文ドキドキ総選挙2020」投票数第一位「縄文のビーナス殿」の賞状。
トロフィーに囲まれて、赤いローブを纏った「縄文のビーナス」。大人気です★
ちなみに、当館は、1955年に「茅野市尖石考古館」として開館し、1979年に現在地に移転。2000年7月に現在の「茅野市尖石縄文考古館」としてリニューアルオープン。
「縄文のビーナス」の出土は1986年、「仮面の女神」の出土は2000年なので、スターがここにやって来たのは考古館の歴史上比較的最近ということになります!
2000点もの縄文時代中期の出土品を展示
縄文土器の展示
「茅野市尖石縄文考古館」では、八ヶ岳西麓の縄文時代の遺跡出土品、蓼科山麓周辺の先土器時代の遺跡出土品、茅野市内各地の遺跡から出土した土師器や須恵器、古墳の副葬品や石器、土製品など約3000点が収蔵されています。
そのうち、展示されているのは2000点ほどのようですが、目玉である「縄文のビーナス」と「仮面の女神」以外にも、素晴らしい造形の縄文土器が多数展示されていて、かなり見応えのある展示内容となっています。
様々な形の土器がある
諏訪湖周辺の出土ポイント
長野県は縄文時代の中心地だそう。
上の写真のジオラマは、八ヶ岳山麓から諏訪湖盆地の一帯で遺跡がある場所を指し示したもの。赤いポイントが縄文時代の遺跡で、緑が縄文時代の前の旧石器時代、青が縄文時代の後の弥生時代の遺跡なのだそう。
かなり多くの縄文遺跡があることがわかります。弥生時代は稲作が始まったため、平地部分に遺跡(青いポイント)が多く、旧石器時代は氷河期のため植物ではなく動物が主食であったため山地に遺跡(緑のポイント)が多いと考えられているのだそう。
縄文時代とは?
さて、ここで「縄文時代」とは、どんな時代なのか。ちょこっとご説明。
縄文時代は、今から約13000年前から約2300年前まで、およそ一万年間続いた時代です。
縄文時代とそれ以前の旧石器時代の一番大きな違いは、「土器」が発明されたということ。土器の発明により、食材を煮炊きし、貯蔵することが出来るようになり、これまで食べられなかったものを食べられるようになりました。
また、地球環境も大きく変わりました。厳しい氷河期であった旧石器時代と異なり、縄文時代は現在と変わらない温暖な気候になり、暮らしやすくなりました。
縄文時代の大きな特徴は、何と言っても、立体的で過剰な装飾が施された「土器」。土器の多くは実用的とは言い難い形をしており、その形状や大きさも様々です。
縄文時代の人々は、狩猟や採集、漁で生計を立てていたそうですが、実用的ではない、手の込んだ土器を作るための十分な時間があったということから、彼らの生活は、旧石器時代人の生活よりも随分とゆとりがあったということがわかります。
なお、縄文時代の人々は、意外にも、かなり広域に渡って交流していたことがわかっています。
信州産黒曜石が北海道でも見つかっていたり、茅野市内の遺跡から千葉県の銚子産のコハクや、東関東で流行していた形の土器が見つかったり。
「土偶」も縄文時代を象徴するもののひとつ。土偶は11000年くらい前に生まれ、縄文中期以降にたくさん作られるようになりました。
そんな土偶の代表作、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」をそろそろ見に行くことにしましょう〜♪
国宝「縄文のビーナス」
国宝「縄文のビーナス」
こちらが、国宝「縄文のビーナス」です!
「縄文のビーナス」は、縄文時代中期(今から約4000年から5000年前)に製作されたと見られる土偶。茅野市内の棚畑遺跡にて、昭和61年(1986年)9月8日に発掘されました。
国宝に指定されたのは、平成7年(1995年)6月15日です。
高さは27cm、重さは2.14kgあり、妊婦を象っているとみられます。
粘土に細かい雲母片が練りこまれているために、肌がうっすらと輝いているように見えるのが特徴で、他にはあまり例がないとのこと。
土偶の多くは壊された形で発見されることが多いですが、この「縄文のビーナス」は完全な形で埋められたものと考えられています。
1986年に棚畑遺跡で出土
頭に渦巻き文様のある円形のものを被っていますが、これは帽子か髪型かはわかりません。
顔は切長の目と尖った鼻、おちょぼ口などの八ヶ岳山麓の縄文時代中期の土偶に特有の顔。お腹とお尻が大きく張り出していて、妊娠中の女性の姿を見事に表しています。
「縄文のビーナス」の後ろ姿
「縄文のビーナス」の後ろ姿です。
渦巻き文様の円形の被り物、丸みを帯びたフォルム、平でそり返った背中、安定感のある足。全体のバランスが見事! 縄文人の美的センスに脱帽です★
発掘時の様子
「縄文のビーナス」の説明
「こわされる土偶が多い中で、なぜこの土偶がこわされなかったでしょうか。また、人々はこの土偶になにを願い、なにを祈ったのでしょうか。」
本当に謎が尽きません!
国宝「仮面の女神」
国宝「仮面の女神」
こちらは、国宝「仮面の女神」です。
「仮面の女神」は、縄文時代後期前半(今から約4000年前)に製作されたと見られる土偶。茅野市内の中ッ原遺跡にて、平成12年(2000年)8月23日に発掘されました。
国宝に指定されたのは、平成26年(2014年)8月21日です。
高さは34cm、重さは2.7kgあります。一般的な土偶よりもかなり大きいという特徴があります。
2000年に中ッ原遺跡から出土
顔には逆三角形の仮面がつけられていて、V字型のラインは眉毛を表現しているものと思われます。体には渦巻き文様や同心円文様、襷掛けの文様が描かれています。
内部は、空洞になっています(中空土偶)。
「仮面の女神」の後ろ姿
「仮面の女神」の後ろ姿です。
「仮面の女神」は、かなり大きいので存在感があります。安定感のあるフォルムと現代彫刻のような無駄のない造形。そして、文様のデザインが素晴らしいです。
発掘時の様子
「仮面の女神」の説明
「この土偶はお墓と考えられる穴から、しかも特別な出土状態で発見されたことから、死と再生のまつりに使われたのではないかと推測されます。」
特別感のある立派な土偶です★
似た土偶が辰野市と韮崎市でも出土
「仮面の女神」と似た土偶が長野県辰野市と山梨県韮崎市でも出土しているとのこと。
三角形の仮面やV字型の眉毛、襷掛けの文様などが似ています。
様々な形、デザイン! 展示された縄文土器の数々
下ノ原遺跡出土の土器
常設展示室Cでは、茅野市内の遺跡から出土した多数の土器や石器が展示されています。
上の写真は、下ノ原遺跡出土の「環状把手のある深鉢形土器」。上部の環状の把手部分の造形や基部の繊細な縄目文様が見事で、いったいこれは何に使ったのだろうかと考えさせられます。
現代彫刻のようなフォルム
この土器も下ノ原遺跡出土の土器です。
茅野市役所本庁の噴水のモデルとなった土器で、四角い形と緩やかな曲線から成るモダンな造形が見事!
館内には土器がたくさん!
大型の深鉢形土器
様々なデザインの土器
展示室には、様々な形、デザインの土器があります。
繊細で上品なもの、勢いと迫力があるもの。それぞれ工房が違ったのでしょうか。
加工された石などもたくさん展示
祭祀用に使われたと思われる土器
造形が不思議
顔面把手付土器
こちらは、「顔面把手付土器」
「縄文のビーナス」のような、切長の目と尖った鼻、おちょぼ口をした顔が土器の把手部分に付けられています。
これらの土器は、母性と深く関係する器だと考えられているのだとのこと。
「土製耳飾」
「嫁入り」の広がりを示す土製耳飾
こちらは、「土製耳飾」
耳たぶに孔を開け、そこに嵌め込んで使われたと考えられており、小さいものから大きなものまで様々なサイズもものが見つかっています。
「土製耳飾」の発掘場所の分布により、当時の人々の「嫁入り」の広がりがわかります。
与助尾根遺跡
「与助尾根遺跡」
茅野市尖石縄文考古館を見学した後、建物の隣に広がる「与助尾根遺跡」を訪れました。
緑の芝生の中に、復元住居がいくつか建っています。
「与助尾根遺跡」の案内板
「与助尾根遺跡」は、縄文時代中期の竪穴住居28箇所が発掘された遺跡です(昭和21年〜27年の発掘)。
発掘したのは小学校の教員をしながら考古学を研究していた宮坂英弌氏。
復元住居
藁葺きの住居がいくつかあります。
中に入ることも出来ます。
「与助尾根遺跡」には、縄文時代中期後半に同時に存在していたと考えられる6軒の住居が復元されており、住居の中に入ることもできます。
復元住居の内部
こちらが、復元住居の内部です。
建物は木の骨組みと藁で作られており、上部には採光と煙を逃すための通気口が見えます。土間には石で出来た囲炉裏がありました。
積雪対策も考えられている感じ
住居の骨組み
復元住居の骨組みです。
この辺りは雪が積もるので、積雪対策も考えられている感じ。
尖石石器時代遺跡
「尖石石器時代遺跡」
「尖石石器時代遺跡」の案内板
こちらは、茅野市尖石縄文考古館の道向かいの南西に広がる「尖石石器時代遺跡」です。
竪穴建物跡33棟をはじめ、53基の炉跡や列石、竪穴群、屋外埋甕などが発掘されていますが、まだ相当数の建物跡が地下に眠っていると考えられています。
長野県茅野市にある「茅野市尖石縄文考古館」
八ヶ岳山麓を中心とした2000点もの縄文時代中期の出土品が展示された日本でも屈指の博物館。中でも国宝に指定された2つの土偶「縄文のビーナス」と「仮面の女神」は必見!
国宝土偶以外にも、素晴らしい造形の縄文土器が多数展示されていて見応えあります。
10000年前の縄文時代の風景や人々の暮らしに思いを馳せる、貴重なひと時を過ごすことができる場所です★
「茅野市尖石縄文考古館」の場所・営業時間
- 住所:長野県茅野市豊平4734-132
- 営業時間:9:00~17:00
- 定休日:月曜日
- 入館料:大人500円、高校生300円、小中学生200円
- HP:https://www.city.chino.lg.jp/site/togariishi/
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