パキスタンの宗教歌「カッワーリー」の歌い手、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン( ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン)の歌唱です。
イスラム神秘主義宗教歌「カッワーリー」の伝説、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(نصرت فتح علی خان:Nusrat Fateh Ali Khan)
「カッワーリー」とは、イスラム神秘主義(スーフィズム)と深い関係にある宗教歌謡。
主にパキスタンとインドを中心に歌われる歌謡です。
正統派のイスラムでは、歌謡は禁ずる傾向がありますが、むしろそれを積極的に修行の中に取り入れようとしたのがスーフィーです。
カッワーリーは主にダルガー(聖者廟)の中で演奏されます。
繰り返されるリズムと神秘的なメッセージの歌によって神と合一することを目的とした音楽なのです。
けれども、現在のパキスタンではカッワーリーは大衆音楽として大きな人気を博しているようです。
このヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(パキスタン・パンジャーブ州ファイサラーバード出身)は、1997年に既に他界していますが、20世紀を代表するカッワーリーの歌い手として、パキスタン・インドでは伝説的な存在とみなされています。
また、ヌスラットは西洋にカッワーリーを知らしめた人物としても有名です。
元ジェネシスのピーター・ガブリエルに見出された彼は、ハリウッド映画のサウンドトラックをいくつも手掛けるなど、インドのラヴィ・シャンカルなどと同様に世界を股に掛けて活躍しました。
カッワーリーの基本構成は、メインヴォーカルとハルモニウム(小型のオルガン)と太鼓です。
3人から10人ほどで演奏されます。
インド古典音楽のラーガに似ていて、基本的な旋律や音階に基づき、その場その場で即興で演奏するスタイルです。
また、カッワーリーでは、メロディーやリズムとともに神秘詩が重要な役割を果たしています。
歌詞には、ハムド(唯一神アッラーを称える賛歌)、ナート(預言者ムハンマドを称える賛歌)、マンカバト(スーフィー聖者を称える賛歌)があり、この順番で歌われるそうです。
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンは、「カッワーリー」の分野において、最も多くのアルバムをリリースした人物として知られています。
アルバムの総数は125を数えるそうです。
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