ポルポト支配前の60~70年代前半のカンボジアン・ロック。
それは、60年代のサイケなガレージ・ロックを模倣し、カンボジアのローカルな伝統をミックスさせた音楽であったようです。
そんなマニアックな音楽を現代に蘇らせたのが、2001年にアメリカ西海岸LAで結成された6人組のバンド「デング・フィーヴァー」です。
LA発のカンボジア歌謡+サイケ・ロック
1997年、バンドの中心人物であるイーサン・ホルツマンは、カンボジアを旅しました。
その時耳にしたのが、60~70年代に作られたカンボジアン・ロックだったのだそうです。
彼は、この音楽に魅せられました。
そして、大量のカセットを購入しアメリカに帰国、仲間を募ってこの音楽を演奏するバンドを結成することにしたのだとのこと。
歌手は、LAのリトル・プノンペンで出会ったチャウム・ニモルを起用。
彼女は、アメリカ移住前はカンボジアの人気歌手だったそうで、王族の前で歌ったこともある実力者でした。
こうして結成された「デング・フィーヴァー」は、2003年に1stアルバム「Dengue Fever」をリリース。アルバムは西海岸の音楽シーンで大きな注目を集めます。
そして、2005年には2ndアルバム「Escape From Dragon House」をリリース、2008年に発表された本作「ヴィーナス・オン・アース(Venus On The Earth)」は3rdアルバムということになります。
なんと言っても、クメール語で歌うチャウム・ニモルの歌声が素晴らしいですね。
艶っぽい歌声と微妙な陰影のあるサイケな音楽が醸し出す昭和歌謡的な場末感!
たまらないです。
ところで、バンドの名前「デング・フィーヴァー」の由来は、もちろん、東南アジアなどで発生する感染症「デング熱」。
39度の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、発疹などを伴う恐ろしい病気ですが、現在のところワクチンは存在しないそうです。
2014年に日本国内でも発症者が現れて大変な騒ぎになったのは記憶に新しいところです。
この「デング・フィーヴァー」を一度聴いてしまったら、エスニック・アジア好きな方の中には、もしかしたら、チャウム・ニモルの歌声に魅せられるという「デング・フィーヴァー」熱に罹ってしまうかもしれません。
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