2016年4月17日(日)、江戸川区西葛西の「グローバル・インディアン・インターナショナルスクール東京(GIIS)」で、南インド古典音楽(カルナータカ音楽)の公演、「天上のリズム」グランドフィナーレが開催されました。
南インド音楽で使われる素焼きの壷の楽器「ガタム」、その最高の奏者として世界的に知られている人物が「ヴィックゥジー」こと、「ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム」です。
素焼きの壷の楽器「ガタム」の世界的奏者「ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム」
「ヴィックゥジー」は、イギリス人ギタリスト「ジョン・マクラフリン」や世界的なシタール奏者「ラヴィ・シャンカル」、インドの打楽器「タブラ」の最高峰「ザキール・フセイン」らと共に世界に衝撃を与えたジャズ・フュージョングループ「シャクティ」に参加。
また、1992年には、アメリカ人ドラマー「ミッキー・ハート」とコラボしたアルバム「Planet Drum」によって、グラミー賞も受賞しています。
今回、ヴィックゥジーは、シャクティにも参加した長男の「カンジーラ(トカゲの皮のタンバリン)」奏者「V.セルヴァガネーシュ」、その息子でヴィックゥジーの孫でもある超絶技巧のカンジーラ奏者「S.スワーミナータン」
ヴィックゥジーの弟子で甥でもある、南インドの両面太鼓「ムリダンガム」奏者である「N.ラーマクリシュナン」、海外公演歴の豊富な実力派のバイオリン奏者「S.ヴェンカタスブラマニアン」を率いて来日。東京と静岡で5回の公演を行いました。
この「天上のリズム」グランドフィナーレは、そのラストの公演となります。
「天上のリズム」グランドフィナーレ
グローバル・インディアン・インターナショナルスクール東京(GIIS)
会場に貼られたポスター
会場は、日本の「リトル・インディア」、江戸川区の西葛西にあるインド人学校「グローバル・インディアン・インターナショナルスクール東京(GIIS)」
西葛西駅から徒歩15分ほどのところにあります。
当日は、嵐のような雨が降るあいにくの天気でしたが、たくさんのお客さんが集まっていました。
入り口にあった受付
入り口の受付では、パンフレットとオリジナル手ぬぐいが販売されていました。
どちらも1,000円。
「天上のリズム」パンフレット
オリジナル手ぬぐい
さっそく、両方とも購入!
パンフレットは、映画のプログラム並みの豪華なつくり。手ぬぐいもここでしか手に入らないオリジナルです。
会場は3階、全席自由です。
会場は3階にあって、全席自由。
ガタム、ムリダンガム、カンジーラ、バイオリン、口琴のモールシン。
手書きのイラストが可愛らしい感じ。
ステージ
素焼きの壷「ガタム」
ステージです。
ステージには、素焼きの壷「ガタム」が4つ、その脇に「カンジーラ」、右端に両面太鼓「ムリダンガム」、左には、V.セルヴァガネーシュが使うカスタマイズド・ハンドドラム「SG KIT」があります。
会場には、70席くらいのパイプ椅子があり、客入りは6割ほど。
嵐のため、来場が遅れているようで、公演の開始も15分押しでのスタートとなりました。
リズムワークショップ! 講師:ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム
公演のプログラムは、第1部「リズムワークショップ」から始まりました。
講師は、「ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム」を中心に、息子の「V.セルヴァガネーシュ」、孫の「S.スワーミナータン」。途中から、甥のムリダンガム奏者「N.ラーマクリシュナン」も参加しました。
セルヴァガネーシュにより、南インド古典音楽のリズムについて説明がなされます。
幾つかの簡単なリズムを教えられ、聴衆も彼らと共に一緒に手拍子を打ってリズムを体験していきます。
ヴィックゥジーの弟子のひとりであるモールシン奏者の竹原幸一氏によると、南インド古典音楽は、「区切られた時間をリズムでデザインする芸術」であるとのこと(パンフレットより)
インド古典音楽では、演奏に使われるリズムパターンが無数にあり、それらひとつひとつに名前が付いているのだとのこと。
例えば、「アーディターラ」は4+2+2の8拍子、「ミスラチャープターラ」は3+4の7拍子などなど。
このリズムの拍子を声にして、歌のようにして表現するのが「コナッコル」
聴衆たちは、セルヴァガネーシュが提示した「コナッコル」を発音しながら手拍子を皆で叩いていきます。
その聴衆の発音と手拍子に合わせて、ヴィックゥジーたちもそれぞれの楽器を叩きます。
一体感に包まれる会場。
途中から、ムリダンガム奏者のラーマクリシュナンも出てきました。
ラーマクリシュナンが発音する「コナッコル」とムリダンガムのリズムがぴったり一致しています!
ラーマクリシュナンのムリダンガムのソロ。
ムリダンガムは、マハーバーラタなどのインド神話にも記述が残っているという古い伝統を持つ両面太鼓。
ジャックフルーツの木から作られ、円筒状の胴の両側にはヤギや水牛の皮が張られ、片方が高音、もう片方が低音が出るようになっています。
音の調律には石を使います。
様々な音色が両手で表現され、緻密で規則的なリズムパターンで組み合わされています。
見事な演奏、拍手喝采です!
南インド古典バイオリンコンサート
休憩の後、第2部「南インド古典バイオリンコンサート」が始まりました。
出演は、「S.ヴェンカタスブラマニアン」(バイオリン)と、「N.ラーマクリシュナン」(ムリダンガム)、そして、モールシン奏者の竹原幸一氏も参加です。
南インド古典音楽では、声楽が最上位。ヴィーナーや笛、バイオリンなどの旋律楽器は、声楽を模倣して演奏されるそうです。
インドでバイオリンが使われだしたのは、19世紀のこと。
インド音楽は、「コナッコル」のリズムを表現できるものであれば、どんな楽器でも演奏することができるそうです。
バイオリンも、インド声楽の音運びに適したチューニングをされ、インド式の奏法で演奏されます。
インドのバイオリンの演奏スタイルは、胡座をかいて座って胴を逆さにして胸のあたりで固定して構えます。
インド式のうねるバイオリンのメロディーラインとムリダンガムのカラフルなリズムの絡み。
モールシン(口琴)の個性的な音色がトランシーなアクセント!
聴衆も、先ほどの「リズムワークショップ」を思い出しながら、手拍子をしながら演奏に聴き入ります。
素晴らしい、聴き応えのある演奏でしたー♪
超絶リズム三世代トリオ「3G」スペシャルコンサート
さて、プログラムのラスト、第3部は、「超絶リズム三世代トリオ「3G」スペシャルコンサート」です。
出演は、「ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム」(父:ガタム)、「セルヴァガネーシュ」(息子:SG KIT-カスタマイズド・ハンドドラム)、「スワーミナータン」(孫:カンジーラ)
三世代によるパーカッションアンサンブルです!
スワーミナータンのコナッコルに合わせて、セルヴァガネーシュがドラムを叩き、ヴィックゥジーがガタムを叩きます。
セルヴァガネーシュが叩くドラムは、インド音楽の演奏に対応したカスタマイズド・ハンドドラム「SG KIT」
セルヴァガネーシュは、父ヴィックゥジーから身につけたカンジーラの技術をベースに、カルナータカ音楽の様々な可能性を追求し続けている、インド最高のパーカッショニストのひとりだそう。
ヴィックゥジーのガタムの演奏、素晴らしいです。
ガタムは、インド音楽の楽器用に特別に作られた壷で、指や掌などを使って、様々な技術を駆使してバラエティーに富んだ音を表現します。
ヴィックゥジーは、このガタムという楽器を世界に広めた張本人。
「シャクティ」のフロントマンかつ、イギリス人ギタリストの「ジョン・マクラフリン」によると、
ヴィックゥ・ヴィナーヤクラームはガタム。そしてガタムはヴィックゥ・ヴィナーヤクラームだ。
とのこと。
並んでいる4つのガタムはすべてピッチが異なるのだとのこと。
スワーミナータンのカンジーラのソロ。
カンジーラは、南インドのタンバリンで、大トカゲの皮が張られ、枠には小さなシンバルが取り付けられています。
乾いた高音と低くうねるような低音。その音のバリエーションは多様のひと言。
世界にタンバリン的な楽器は数あれど、ここまで複雑な音を出せるものは他にはないそうです。
今や、父セルヴァガネーシュに肉薄すると言われるスワーミナータンのカンジーラの超絶技巧。
見事と言うしかないです!
ラスト、本当のグランドフィナーレ!
ムリダンガムのラーマクリシュナンも加わって、ガタム、カンジーラ、SG KIT、ムリダンガムのパーカッションアンサンブル。
聴衆も手拍子で大盛り上がり!
素晴らしい一体感を感じることができました。
「天上のリズム」グランドフィナーレ、大団円の中での終了です。
南インド古典音楽最高峰の演奏を生で体験できた4時間。
シタールやタブラなど、北インドの音楽を聴く機会は数あれど、南インド古典音楽は日本ではなかなか聴けません。
貴重なひと時を過ごすことができました!
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