25年間迷子だった男が、 Google Earthで起こした奇跡とは――?
『英国王のスピーチ』の製作陣が贈る、圧巻の感動実話。
5歳で迷子になった少年が25年後、GoogleEarthを使って故郷を見つけ出す感動の実話
5歳の時に迷子になってしまったインド人の少年「サルー」
オーストラリアで養子として引き取られ、成人した彼が25年後にGoogle Earthを使って故郷を探し出す。
この映画はインドで実際に起こった出来事を題材とした物語。本人「サルー・ブライアリー」のノンフィクション本『25年目の「ただいま」5歳で迷子になった僕と家族の物語』を原作とした、オーストラリアで製作された映画です。
監督は、本作がデビュー作となるオーストラリア人監督「ガース・デイヴィス」。主演の少年サルー役に「サニー・パワール」、成人したサルー役には『スラムドック$ミリオネア』で主演を務めた「デヴ・パテル」、サルーの恋人役に「ルーニー・マーラ」、オーストラリアの母スー役に「ニコール・キッドマン」が起用されています。
2016年に公開された本作は、批評家や観客から高く評価され、第69回アカデミー賞では、作品賞を含む6部門にノミネートされ、ゴールデングローブ賞では4部門、放送映画批評家協会賞では6部門にノミネートされました。
巷での評判の高かった本作ですが、観て納得。
鑑賞後、涙が止まらない。素晴らしい映画でした★
5歳で迷子になり、1600㎞も離れた大都会カルカッタへ
1986年、物語はインドのとある地方都市から始まります。
少年サルー(サニー・パワール)は、石運びの仕事をしている母カムラ(プリヤンカ・ボセ)と兄弟姉妹たちと暮らしています。
父親がいないため一家は貧しく、サルーの兄グドゥ(アビシェーク・バラト)は、家計を助けるため、学校にも行かず働いています。
自分も家族の役に立ちたいと考えたサルーは、ある日、夜の駅での仕事(到着した列車の中から乗客の残したゴミを回収する仕事)に一緒に連れて行ってくれとグドゥにせがみます。
しかし、ここで悲劇が起こります。
夜中、眠くなってしまったサルーは、停車していた回送列車の中で眠ってしまい、その回送列車が走り出してしまったのです。
誰もいない回送列車の中で兄グドゥの名を叫び続けるサルー。
しかし、列車は延々と走り続け、ようやく停車した先は、見たこともない土地でした。
サルーの故郷から1600㎞も離れた土地、西ベンガル州の州都コルカタ(当時の名称はカルカッタ)です。
サルーの故郷のあるカンドワからコルカタまでの道のり
広大なインド、1600㎞も離れると言葉も通じません。
見知らぬ大都会でひとり彷徨い歩く、5歳の少年サルー。
身寄りのないホームレスの子供は大都会の中ではとても弱い存在。サルーを捕まえ、売ろうとする大人の魔の手が次々と襲い掛かります。
そんな魔の手を逃れ、サルーが行き着いた先は、身寄りのない子供たちが収容される孤児院でした。
ここでサルーは幸運を掴みます。
オーストラリアの夫婦が養子として引き取ってくれることになったのです。
時は移り2008年、場所はオーストラリアの町メルボルンのとある学校。
成長したサルー(デヴ・パテル)は、同じインド出身の学生と親しくなったり、素敵な恋人ルーシー(ルーニー・マーラ)と愛を育んだりと、充実した学生生活を送っていました。
サルーはオーストラリアに来て以来、養父母となったジョン(デヴィッド・ウェンハム)とスー(ニコール・キッドマン)に愛情いっぱいに育てられてきたのです。
しかし、ある時、インド出身の友人が開いたホームパーティーでインドの揚げ菓子“ジュレビ”を見た途端、サルーの脳裏に幼い頃のインドの記憶が一気に蘇ります。
「自分は迷子なのだ。母や兄は今も自分のことを探しているかもしれない」
そう思ったサルーは、自分の母や兄の住む故郷を探すことを始めるのです。
広大な地図上から5年をかけて故郷を見つけ出す
故郷を捜索するのに使ったツールは“Google Earth”
当時の列車の時刻を調べ、乗っていた時間から距離を割り出し、広大な地図から唯ひとつの手掛かりである駅前の給水塔を探すサルー。
それは、途方もない作業でした・・・。
“自分は迷子である”という思いに捕らわれたサルー。
貧しい暮らしをし、自分の帰りを待っているであろう家族を尻目に、オーストラリアでひとり幸せを謳歌しているという負い目。
一方、ジョンやスーという養父母の存在がありながら、実の母や兄を探し続けるという後ろめたさ。
そんなものを抱えながら、サルーは思い悩みます。
そんなサルーの心の葛藤、母スーや恋人ルーシーとの関係性も、この映画の魅力のひとつ。
特に大きな愛でサルーを見つめる母スーの姿が素晴らしいです。
スーたちは、サルーの他にもうひとりのインド人の少年マントッシュ(ディビアン・ラドワ)を引き取って育てることとなるのですが、スーたちは、優等生的なサルーに対しても、度々問題を引き起こすマントッシュに対しても、分け隔てない愛情で包み込みます。
ルーニー・マーラ演じる、強い意志と静かな知性を持った女性ルーシーもとても魅力的です。
そして、捜索を続けて5年。サルーはついにGoogle Earthから故郷の地を発見します。
サルーがはぐれた駅、ブルハンプール。黄色の部分の給水塔をGoogle Earthで探し出した。
上の空撮画像(Google Earthではなく、Google Mapですが)の黄色い部分が、サルーが発見した故郷の駅「ブルハンプール」の給水塔。
サルーの手掛かりはこれだけでした。
こんな小さなものを広大な地図上から探し出したのです!
故郷を見つけ出したサルーは、一路、インドのふるさとの地へと向かうことになるのですが、そのドラマについては作品を観てのお楽しみ。
母カムラとの25年ぶりの再会のシーンは、涙無くしては観れないものでした。
決して失われることのない、家族への愛とつながり
この映画は実話です。
2012年、彼の奇跡的な家族との再会は、ニュースや新聞で報じられ大きな話題となったそうです。
物語が終わった後、スクリーンには作品のモデルとなった「サルー・ブライアリー」本人がインドの故郷を訪れ、実母カムラと、養母であるスーの三人で談笑する光景が映し出されていました。
その微笑ましい様子に再び涙・・・。
青年サルー役のデヴ・パテルは、この映画について次のように語っています。
この作品に対してよく聞くほめ言葉のうち、最高だと思うものの一つは、映画を観終わったあと、母親や父親、兄弟に電話して「愛してる」と伝えたくなる、というものだ。
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』プログラムより
サルーの数奇な運命、Google Earthを使って故郷を探し出したという驚嘆の事実、25年ぶりの母との再会。唯一無二のドラマチックなストーリー。
けれども、それ以上に心に響いたのは、インドとオーストラリア、ふたつの家族によるサルーへの愛。そして、ふたつの家族に対するサルーの愛でした。
時が流れ、場所が変わり、状況が変化しようとも、決して失われることのない、家族への愛とつながり・・・。
エンドロールで流れるシーアの主題歌を聴きながら、涙が止まりませんでした。
キャスト
サルー :デヴ・パテル
幼い頃のサルー :サニー・パワール
ルーシー :ルーニー・マーラ
グドゥ :アビシェーク・バラト
スー :ニコール・キッドマン
ジョン :デヴィッド・ウェンハム
カムラ :プリヤンカ・ボセ
マントッシュ :ディビアン・ラドワ
スタッフ
監督 :ガース・デイヴィス
原作 :サルー・ブライアリー
脚本 :ルーク・デイヴィス
製作 :イアン・カニング、エミール・シャーマン
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