インドは舞踊の宝庫。数あるインドの舞踊の中でも、四大古典舞踊のひとつに数えられている舞踊「カタック」の公演が都内で行われるというので観てきました。
墨田区みどりコミュニティセンターで開催された「Reverbs of Kathak(レヴァーブス・オブ・カタック)」。
インドから舞踊家「Dr. Madhuri Apte(マドゥリ・アプテ博士)」が来日し、カタック舞踊を披露するとのこと。
墨田区のコミュニティセンターに本場インドの古典舞踊家を招聘
こちらが、「Reverbs of Kathak(レヴァーブス・オブ・カタック)」の案内です。
Xで流れてきて、WEB申し込みフォームがあったので、すぐに申し込みをしました。
主催は、日本にいるインド人カタック舞踊家で、インドのプネーに住む自らの師匠である「マドゥリ・アプテ博士」を招聘し、来日公演を実現させたということの様子。
公演時間は2時間。プログラムは8演目あり、マドゥリ・アプテ博士のほか、博士の高弟たちやゲストパフォーマーによる演舞が行われるとのこと。
ゲストパフォーマーは、日本人カタック舞踊家の「前田あつこ」さん。主賓は、インド人初の日本の区議会議員当選者である「プラニク・ヨゲンドラ」さん(現在は日本の県立高校の校長)。
今回の公演「Reverbs of Kathak(レヴァーブス・オブ・カタック)」が行われた会場は、「墨田区みどりコミュニティセンター」内にある大広間(上の写真)。
来場していたお客さんは、墨田区や江戸川区などに住んでいるであろうインド人の方がほとんどでしたが、日本人のお客さんもちらほら。それと、ゲストパフォーマーとして参加している日本人カタック舞踊家「前田あつこ」さんのお弟子さんらしき人たちが来場していました。
さて、ここで、インド古典舞踊「カタック」とは、どんな舞踊なのか、ちょこっとご説明します。
インド古典舞踊「カタック」とは?
「カタック」の歴史
「カタック(Kathak)」のルーツはヒンドゥー教のお寺。カタックとは、”語り部”を意味します。
紀元前の頃から、北インドでは「カタカ」と呼ばれる語り部が村々の寺院を廻って、「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」などのヒンドゥー教の叙事詩を語って聞かせていました。
カタカたちは、そのうち語りにパントマイムや歌や音楽、踊りなどを取り入れるようになり、舞踊としての形式が出来上がっていきました。
16世紀、インド北部はペルシャや中央アジア由来の王朝「ムガル帝国」の支配下に置かれます。
そして、カタックは、宮廷内でペルシャや中央アジアの舞踊の影響を受け洗練されていき、高度な舞踊芸術へと昇華されていきました。
カタックの特徴
カタックは、身振りの表現である「ヌリティヤ」と、感情の表現である「アビナヤ」を舞踊の表現手段としています。
神々に捧げる「ヴァンダナ」や「ヴァルナ」、インドの太鼓タブラと足の動作で掛け合いをする「タトカル」、旋回する動作の「チャッカル」、一瞬に動きを静止する「ハスタック」などの踊りの形式や動作があります。
踊り手の足首には100個以上の真鍮製の鈴(グングル)が付けられており、踊り手のステップによる鈴の音のシャンシャンというリズムと、インド太鼓タブラのビートが、インド古典音楽のリズム周期(ターラ)によって即興で掛け合いされていきます。
また、チャッカルの旋回の激しい動きから瞬時に静止するハスタックへの流れは、ハッとするような美しさ。空手や居合の型を見ているような心地よい緊張感があります。
さて、そろそろ開演時間の16時。幕が上がり、マドゥリ・アプテ博士と、その高弟たちが登壇。スピーカーからインド古典音楽が流され、カタック舞踊が始まりました!
激しい足の動きと複雑なリズムが織り成すインド古典舞踊「カタック」
プログラムの最初は「ガネーシュ・ヴァンダナ」
ヒンドゥー教の象の頭の神様、ガネーシャ神に捧げる舞踊です。
出演者は、マドゥリ・アプテ博士と、その高弟であるテジャスウィニー・ガネカルさんと、マドゥラー・ザンバレさん。
中央の方がマドゥリ・アプテ博士
インド太鼓タブラをはじめとした、インド古典音楽のリズムに合わせて舞踊家たちが踊ります。
本来は、ステージの脇で古典音楽家たちが生演奏するのですが、今回の公演ではスピーカーから演奏の録音が流されていました。
2演目目は、マドゥリ・アプテ博士のソロの舞踊「ラースタール」
この演目が、今回観たプログラムの中で最も感銘を受けた演目でした。
↓の動画をご参照ください。
タブラのリズムに合わせて刻まれる高速のステップとシャンシャンと鳴る鈴の音。素早い腕の動き。
旋回する動作の「チャッカル」と、一瞬に動きを静止する「ハスタック」の動と静のコントラスト。
本当に見事です!
旋回する動作の「チャッカル」
YOU TUBEなどで見ると、この「ラースタール」という演目が一番多く紹介されており、カタックのメインの演目である様子。
所作は、南インドの舞踊「バラタナティヤム」とは、かなり違いがあります。むしろ、スペインのフラメンコに近い感じ。
ちなみに、カタックはフラメンコのルーツとも考えられているそうです。
3演目目は「カンディータ」。出演者はテジャスウィニー・ガネカルさん。
この方が、博士を日本に招聘した方である様子。
4演目目「ガニート・アーティ」
テジャスウィニー・ガネカルさんのお弟子さんたちの演舞。
可愛らしい踊りです♪
5演目目は、ゲストパフォーマンス「前田あつこ」さんの演舞です。
前田さんのカタック舞踊は、ナマステインディアやアムルート・マンタン公演などで、何度か観たことがあります。
6演目目「カンハ・レー」
こちらも、テジャスウィニー・ガネカルさんのお弟子さんたちの演舞。4演目目よりも年上のお弟子さんたちです。
カラフルな衣装で華やか
踊りのレベルはそんなに高くないですが、たくさんの妙齢の美女たちがカラフルな衣装で踊るので華やか♪
7演目目「バジャン」
再び、マドゥリ・アプテ博士のソロの舞踊です。
この「バジャン」では、カタックの真髄とも言える「アビナヤ」(感情の表現)がすごかったです。
目の動きや、手や首の動き、動きの緩急などによって、様々な感情を表現していきます。
7演目目が終わったところで、主賓であるプラニク・ヨゲンドラさんの挨拶がありました。
ちなみに、ヨゲンドラさんは、葛西の西インド料理店『カフェと印度家庭料理レカ』のオーナーでもあり、この後お店に食べに行ったのですが、公演後、彼もお店に来ていて、ばったり出くわしました。
最後の演目は、「サルガムとガリン・ロターンガン」
出演者は、マドゥリ・アプテ博士と、その高弟であるテジャスウィニー・ガネカルさんと、マドゥラー・ザンバレさん。
ソロで踊るマドゥリ・アプテ博士に、高弟が一人ずつ加わって、最後は3人で踊って大団円。
素晴らしい公演でした!
墨田区みどりコミュニティセンターで開催された、インド古典舞踊「カタック」の公演「Reverbs of Kathak(レヴァーブス・オブ・カタック)」
インドから来日した舞踊家「Dr. Madhuri Apte(マドゥリ・アプテ博士)」の舞踊は、目を見張るほどの素晴らしさ。その所作ひとつひとつに目が釘付けになりました!
「本物を観た」という充実感があります★
このような素晴らしい舞踊を観る機会を与えてくれたお弟子さんに感謝です。
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