「ソング・オブ・ラホール」再起をかけた音楽家たちの、奇跡の一夜が幕を開ける!!
パキスタン・イスラム共和国の街ラホール。彼らは伝統楽器を駆使してジャズに挑戦し、世界へと打って出た!
ついには本場NYでウィントン・マルサリスとの共演に招かれるが・・・。音楽の興奮と希望に満ちたドキュメンタリー。
パキスタンの伝統楽器を使ってジャズを演奏!
パキスタン共和国の街ラホール。この街で活動する伝統音楽家たちがこの物語の主人公です。
ムガル帝国時代からの長い歴史を持つインド古典音楽。このラホールの街でもその思想や技術は現代に至るまで脈々と受け継がれ続けてきました。
しかし、インドと袂を分かち、パキスタン共和国が建国された後の1970年代、国はイスラム化を強め、音楽家の地位は低下。さらに1990年代には音楽や舞踏などを敵視するタリバンが台頭し、パキスタンの伝統音楽は消滅の危機に瀕していました。
そんな現状を見かねたのが、「イッザト・マジード」(Izzat Majeed)
パキスタン生まれでロンドン在住の彼は、2005年に200万ポンドの私財を投じ、ラホールに「サッチャル・スタジオ」というレコーディング・スタジオを建設。イスラム化で職を失った音楽家たちを探し出して「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」を結成したのです!
イスラム神秘主義のスーフィー詩人「サッチャル・サルマスト」から名付けられているこのスタジオでは、当初、パキスタンの古典音楽や民族音楽がレコーディングされ、アルバムがリリースされていたのだそうです。
けれども、タリバンの影響で音楽を聴く人が減っており、国内でコンサートを開くとテロの危険がつきまとうという状況の中、彼らは自分たちの音楽を多くのリスナーに聴いてもらうため、新たなチャレンジをする必要に駆られました。
映画のキャッチコピーである「スウィングしなけりゃ”あと”がない!」
そうです。彼らは、パキスタンの伝統楽器を使ってジャズに挑戦したのです!
2008年、マジードはパキスタンの伝統音楽と西洋のジャズの融合を思いつき、デイブ・ブルーベックのスタンダードナンバー「テイク・ファイブ」のカバーをリリース。
YOU TUBEにアップされたプロモーション・ビデオは世界中に注目され、原作者のデイブ・ブルーベック自身も「これは、私が今まで聴いた中でも最も面白く最も異なる「テイク・ファイブ」の録音だ」と語るなど大反響!
リリースされたアルバム「サッチャル・ジャズ」もアメリカ、イギリス、カナダでiTunesのワールド・ミュージック・チャート1位を獲得するなど大ヒットとなりました。
アルバムの記事はこちら↓
「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の伝統音楽家たち、ニューヨークに打って出る!
Sachal Jazz Ensemble ‘Lahore Jazz’ (Live) – BBC News
そんな折、イギリスのBBCが彼らの映像を取り上げ、それを見たニューヨークの伝説のジャズ・ミュージシャン「ウィントン・マルサリス」(Wynton Marsalis)から、彼らをニューヨークに招待し、世界最高峰のビッグバンドと共演させたいという申し出が舞い込んできました。
サッチャル・ジャズの音楽家たちにとって、これはパキスタンの伝統音楽を世界に知らしめる絶好のチャンス!けれども、絶対に失敗は許されない、”あと”がないチャンスでもあります。
映画「ソング・オブ・ラホール」は、そんな彼らのニューヨークでの挑戦の模様を密着ドキュメント。
地元ラホールの「サッチャル・スタジオ」でのセッションの様子や、それぞれのミュージシャンの素顔やインタビューなども交えながら、「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の演奏とその挑戦の素晴らしさを伝えています。
さて、ここで、「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の音楽家たち(映画「ソング・オブ・ラホール」のメインキャスト)をご紹介します。
アルバム「サッチャル・ジャズ」では、ヴァイオリンやヴィオラなどのストリングスオーケストラも参加した合計43名の大所帯ですが、NY公演に参加した「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」はコンパクトな構成。そのうちの主要メンバーは↓です。
- ニジャート・アリー(Nijat Ali):指揮、編曲、ハルモニウム
- バーキル・アッバース(Baqar Abbas):バーンスリー
- サリーム・ハーン(Saleem Khan):ヴァイオリン
- アサド・アリー(Asad Ali):ギター
- ラフィーク・アフマド(Rafiq Ahmed):ナール
- ナジャフ・アリー(Najaf Ali):ドーラク、ミルダング
- バッルー・ハーン(Ballu Khan):タブラ
- イザット・マジード(Izzat Majeed):サッチャル・スタジオ創立者、プロデューサー
ちなみに、彼らをニューヨークに招聘した「ウィントン・マルサリス」(Wynton Marsalis)は、現代において最も著名なジャズ・ミュージシャンの一人であるトランペット奏者、および作曲家です。
ジャズ、およびクラシック合わせて9つのグラミー賞を受賞しており、「ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ」の芸術監督も務める大物中の大物。
彼をリーダーに、今日のジャズ界を担う15人の一流演奏家によって構成されているのが「ウィントン・マルサリス & ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ」(Wynton Marsalis and The Jazz At Lincoln Center Orchestra)です。
Sachal Jazz Ensemble & Wynton Marsalis in Marciac – Take 5!
映画では、ニューヨークでのウィントン・マルサリスとのセッションの中で、「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の面々が悪戦苦闘する姿が映し出されています。
言葉も全く通じず、音楽の思想も方法論も異なるジャズとパキスタン古典音楽の融合。簡単なことではありません。
だけど、お互い音楽に人生を捧げ、その世界の頂点にまで登り詰めた者同士。最終的にステージで披露された演奏は素晴らしいものとなりました。
映画の中で、指揮者のニジャート・アリーが、語った言葉。
「全世界に知ってほしい。パキスタン人は芸術家でテロリストじゃないことを」
彼らの思いが、NY公演での奮闘と、その素晴らしい音楽に現れているようでした。
ちなみに、映画「ソング・オブ・ラホール」の監督は、パキスタン・カラチ生まれの「シャルミーン・ウベード・チナーイ」(Sharmeen Obaid-Chinoy)と、アメリカ・シアトル生まれの「アンディ・ショーケン」(Andy Schocken)の共同監督。
特にシャルミーンは、人権や女性問題を多く手掛けるアジアでも注目の女性ドキュメンタリー監督のひとりです。
Sachal Jazz Ensemble & Wynton Marsalis – Limbo Jazz
”サッチャル・ジャズ”東京JAZZ公演♪
2016年9月2日(金)〜9月4日(日)の3日間。
東京有楽町の東京国際フォーラムで、今年で15回目を迎える「東京JAZZ」フェスティバルが開催されました♪
そのプログラムの2日目の9月3日、地上広場において、なんと「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」が出演したのです!
彼らの演奏はこの日の地上広場での”トリ”
21:15~22:00までという遅い時間でしたが、会場は熱狂の渦に包まれましたー。
東京JAZZフェスティバル(9/3)地上広場にて
21:15からサッチャル・ジャズ・アンサンブルの公演
今回のこの公演は、なんと、”無料”での公演でした。
彼らの来日費用、出演料などは、クラウドファウンディングで集めたようです(↓がそのHP プロジェクトは終了済み)。
サッチャル・ジャズ・アンサンブルの初来日公演にご支援を!(motion-gallery.)
初来日支援プロジェクトの主催者は、映画「ソング・オブ・ラホール」の配給・宣伝チーム。
映画公開にあたり、映画の宣伝と、彼らの音楽の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいという思いから企画されたのだとのこと。
結果として、目標金額の150万円(渡航費100万、宿泊費50万)を大きく上回る211万8500円が集まったそうです!
東京国際フォーラム地上広場は大盛り上がり!
少し小雨模様の東京国際フォーラム地上広場。
飲食ブースなどが並ぶ地上広場での公演はすべて無料なため、大勢の人がサンドイッチを食べたり、ビールを飲んだりしながら音楽を聴いたり、通りすがりにふらっと立ち寄ったりして、入れ替わり立ち替わりごった返している状況でした。
ひとつ前に行われた、オーストラリアのピアニスト「ポール・グラボウスキー&フレンズ」のライブから見始めたのですが、尺八演奏家「中村仁樹」とのセッションが最高でした。
そして、21:15分、いよいよ、「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の登場です!
サッチャル・ジャズ・アンサンブルの演奏
東京国際フォーラム地上広場は、これまで以上にすごい人だかり!
本流のジャズではない、パキスタンの伝統音楽&ジャズという異色の存在ながら、この人の入りはちょっとびっくり!
「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の面々が登場すると大歓声が巻き起こり、大盛り上がりの中でのスタートとなりましたー。
演奏された曲目は↓
- Ditched Me
- Shalamar
- Rhythmesque
- イパネマの娘
- テイク・ファイブ
- Shalamar(アンコール)
特に「イパネマの娘」、そして、やっぱり「テイク・ファイブ」が良かったです♪
来日していたと思われるのが、指揮者の「ニジャート・アリー」、ギターの「アサド・アリー」、ナールの「ラフィーク・アフマド」、ドーラクの「ナジャフ・アリー」、タブラの「バッルー・ハーン」、プロデューサーの「イザット・マジード」、それに、プロモーション・ビデオに出演していたシタール奏者「ナフィース・カーン」 ※他にも居たかもしれません。
ただ、残念だったのが、インドの横笛であるバーンスリー奏者の「バーキル・アッバース」がいなかったこと。
バーキルは、ウィントン・マルサリスに「世界で最も偉大な現代ミュージシャンの一人」と称されたミュージシャンで、自身で使うバーンスリーは手作りしているというすごい音楽家なんです。
話によると、来日直前に心臓発作で入院してしまい、残念ながら参加できなかったのだとのこと(病状は回復している模様)。
今回はバーキルの代わりとして、ダブルリードの木管の笛シャーナイの奏者が参加していました(名前はわからないです)。
会場は大混雑していて、ほとんど見えなかったのですが、「バッルー・ハーン」のタブラの超絶リズム、そして、「ナフィース・カーン」のシタールの音色が素晴らしかったです。
「テイク・ファイブ」の時は、会場はうねるように盛り上がってましたー。
最後は、会場からの「アンコール!」の声に応えてもう一曲演奏。
熱狂の渦の中、「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」の来日公演は終了しました!
来日した「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」のメンバーたち
演奏の後、みんなで挨拶する「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」のメンバーたちです。
会場からの大拍手喝采。
大団円の中での公演終了!
大満足!素晴らしい来日公演でした。
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