ポール・デスモンド(Paul Desmond)作曲、デイブ・ブルーベック・カルテット(The Dave Brubeck Quartet)の1959年発表のシングル曲「テイク・ファイブ(Take Five)」
誰もが一度は耳にしたことのあるジャズの名曲中の名曲です。
あらゆるミュージシャンにカバーされ続けてきた、この「テイク・ファイブ」を2011年にあるグループがまたカバーしました。
そのグループ名とは、「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」(Sachal Studios Orchestra)
パキスタン北部、パンジャーブ州ラホールにスタジオを持つ、北インド古典楽器&ストリングスオーケストラのグループです。
洗練されたジャズ&ボッサの名曲を北インド古典音楽の手法で絶妙にアレンジ
Sachal Jazz Ensemble ‘Take Five’
上の動画が、その「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」による「テイク・ファイブ」です(オフィシャルビデオは現在見れなくなっています)。
大編成のストリングスオーケストラをベースに、シタールがあの印象的な旋律を奏でます。
そして、神業的なタブラのリズムとスパニッシュギターの競演。
北インド古典音楽の音楽的手法による「テイク・ファイブ」の演奏です。
原曲をリリースしたデイブ・ブルーベック自身が、「これは、私が今まで聴いた中でも最も面白く最も異なる「テイク・ファイブ」の録音だ」と語っている通り、インパクト抜群です!
この「テイク・ファイブ」が収録されているアルバム「サッチャル・ジャズ(Sachal Jazz)」は、2011年にリリースされるや否や、ジャズやインド音楽、ワールドミュージックのリスナーにかなりの反響を呼び起こし、iTunesのジャズチャートで1位になったり、ピーター・バラカン氏の選ぶ年間BEST10に選ばれたりしました。
このアルバム「サッチャル・ジャズ(Sachal Jazz)」に収録されている曲は全部で8曲。
どれもジャズ&ボサノヴァの名曲ばかりです。
- 「テイク・ファイブ」(Take Five (Dave Brubeck / Paul Desmond))
- 「デザフィナード」(Desafinado (Antonio Carlos Jobim / Newton Mendonca))
- 「マウンテン・ダンス(ラーガ)」(Mountain Dance – RAGA (Dave Grusin))
- 「イパネマの娘」(Garota De Ipanema (Antonio Carlos Jobim / Vinicius De Moraes))
- 「ミスティー」(Misty (Errol Garner))
- 「サマー・サンバ〜ソー・ナイス」(Samba De Verao (Marcos Valle Kostenbaden / Norman Gimble))
- 「ジス・ガイ」(The Guy’s In Love With You (Burt Bacharach / Hal David))
- 「イパネマの娘(ラーガ)」(Garota de Ipanema – RAGA version )
インドの擦弦楽器「サーランギー」とインド音階「サレガマパダニ」で歌う女性ヴォーカルの声の絡みが心地よい「デザフィナード」
勢いのあるシタールの音色がカラフルな「マウンテン・ダンス(ラーガ)」
メロディアスなストリングス&シタールと、ガラ(素焼きの壷)&タブラのリズムの調和が見事な「ミスティー」
打弦楽器「サントゥール」をはじめ、様々なインド楽器がリズム&メロディーを奏でる「サマー・サンバ〜ソー・ナイス」
「サロード」の渋さが哀愁のある曲調をうまく表現した「ジス・ガイ」
ラテンなパーカッションのリズムをベースに、シタールやサーランギー、バンスリがお馴染みのメロディーを立ち替り奏でる「イパネマの娘(ラーガ)」
どの曲もとても魅力的です。
「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」の編成は合計43名の大所帯。
ストリングスは、ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラほか28名、生ギターとベース、タブラ&ドーラック他のパーカションが6名、シタール、サーランギー、サントゥール、バンスリなどのインド楽器、そして、ピアノ、アコーディオン、マルダンなどの演奏家が参加しています。
彼らは、長年、パキスタンやインドの映画音楽などの制作に携わってきていて、このアルバムは、オーケストラ創立50周年の記念アルバムなのだとか。
Sachal Jazz Ensemble & Wynton Marsalis – Sanu Nehar Wale Pul Tay Bula Ke
上の動画は、ウィントン・マルサリスとのニューヨークでの公演の様子。
2011年にアルバム「サッチャル・ジャズ」で世界をびっくりさせた「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」
2013年に世界向けのセカンド・アルバム「ジャズ・アンド・オール・ザット」(Jazz And All That)をリリースしています。
このアルバムは、ジャズのみならず、ロック&ポップスの名曲もカヴァーした、ファーストに増してバラエティーに富んだ内容となっています。
「ジャズ・アンド・オール・ザット」には、ジョン・レノン=ポール・マッカートニーの「エリナー・リグビー」やR.E.M.の「エブリバディ・ハーツ」のカヴァーも収録。
北インド古典音楽(ヒンドゥスターニー音楽)の手法を忠実に守りつつ、他ジャンルの音楽を料理するアレンジの妙。そして、職人芸的な高度な演奏技術も健在です。
古今東西、異なるジャンルをミックスした音楽は数あれど、これほど完成度の高い音楽はなかなかないです!
デイブ・ブルーベックもアントニオ・カルロス・ジョビンも、ビートルズもR.E.M.も、「サッチャル・ステューディオズ・オーケストラ」の手によってインド音楽になってしまいました。
映画と来日公演の記事はこちら↓
♪インド音楽
https://search-ethnic.com/music/sachal-jazz
コメント