ジャマイカ出身のレゲエミュージシャン「ボブ・マーリー」(Bob Marley)
”レゲエの神様”と呼ばれ、ミュージシャンのみならず世界中の数多くの人々に影響を与え、死後30年以上経った現在でも世界中でその楽曲が聴かれ続けているミュージシャンです。
ボブ・マーリーは、1945年2月6日、ジャマイカ北岸ミドルセックス群セント・アン教区ナインマイルズで生まれました。本名はロバート・ネスタ・マーリー。父は英国人で白人、母はジャマイカ人で黒人です。
父は建設会社を経営する裕福な人物でしたが、ボブの誕生後すぐに離婚、父は10歳の時には亡くなったため援助もなくなり、母とボブはキングストンのスラムであるトレンチタウンに移りました。
トレンチタウンは、多くのレゲエミュージシャンが生まれ育ち、活動の拠点とした場所として知られています。ボブが音楽活動を開始したのもこのトレンチタウン。
ボブは、1963年、「ティーネイジャーズ」 (The Teenagers) というグループを結成してプロデビュー。その後、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーとのトリオで「ウェイラーズ 」(The Wailers) として活動。
1972年にはメジャーレーベルである「アイランド・レコード」と契約し、メジャーデビューアルバム「キャッチ・ア・ファイア」(Catch a Fire)をリリースします。
そして、同年、楽曲「アイ・ショット・ザ・シェリフ」(I Shot The Sheriff)が全米ビルボードチャート1位を獲得。
このアルバムは世界中でヒット!エリック・クラプトンを始め、多くのミュージシャンが彼の曲をカバーしました。
社会性のある歌詞と攻撃的な楽曲が、特にカリブやアフリカ系のヨーロッパ移民やアフリカ系アメリカ人の共感を呼び、ボブ・マーリーは、彼らにとってカリスマ的な存在となったのです。
このアルバム「レジェンド~ザ・ベスト・オブ・ ボブ・マーリー」は、アイランド・レコードから1973年〜1983年にかけてリリースされた13枚のアルバムから14曲をピックアップしたベストアルバム。
いい曲が目白押し!ボブ・マーリーの魅力を存分に味わうことのできる一枚です♪
今回は、このベストアルバム収録の楽曲の中から、個人的に気に入っている曲いくつかをご紹介します。
本物の「レベルミュージック(反抗の音楽)」、ボブ・マーリーの音楽
Bob Marley – No woman No cry
上の楽曲は、アルバムの2曲目に収録された「ノー・ウーマン・ノー・クライ」(No woman No cry)
1974年リリースのアルバム「ナッティ・ドレッド」(Natty Dread)に収録されている楽曲です。このベストアルバムでは、1978年のロンドンでのライブ演奏が収録されています。
哀愁を帯びたメロディー&マーリーの歌声といい、辛い現実に涙を流す女に「No woman No cry」と語りかける歌詞といい、ボブ・マーリーらしさ満点の一曲。
ライブでの観客の大合唱もいい雰囲気出しています♪
Bob Marley – One Love
レゲエのスタンダードナンバーとしてあまりにも有名なこの曲「ワン・ラヴ|ピープル・ゲット・レディ」(One Love/People Get Ready)
1977年リリースのアルバム「エクソダス」(Exodus)に収録されている楽曲です。
曲自体は1965年に発表されていたのだそうですが、「インプレッションズ」(カーティス・メイフィールドが所属)のヒット曲「ピープル・ゲット・レディ」のコードとメロディーを一部使用していることで、2つの曲名を合わせたタイトルとなっています。
レゲエミュージシャンを始め、様々なアーティストにカバーされていて、ジャマイカ観光のPRソングとしても長年使われ続けているそう。
団結と神への感謝を訴える歌詞も、メロディーもポジティブで楽観的な雰囲気の楽曲。
確かにジャマイカPRにぴったりの曲です♪
Bob Marley – Could You Be Loved
「クッド・ユー・ビー・ラヴド」(Could You Be Loved)は、1980年リリースの「アップライジング」(Uprising)に収録された楽曲。
ボブ・マーリー最後のヒット曲のひとつです。
新しい曲ということで、ギター、ベース、ドラム、ピアノだけでなく、電子キーボードのクラビネットが使われていて、レゲエシーンだけでなく、ガレージ・ハウスなどのクラブシーンでも人気がある楽曲。楽器としては、ブラジルの振動打楽器「クイーカ」も使われています。
テンポの速いノリの良い楽曲で、歌詞は(神に)愛される資格はあるのかと自分に問いかけるような内容。
Bob Marley – Redemption song
「リデンプション・ソング」(Redemption song)は、「アップライジング」(Uprising)に収録された楽曲。
アコースティックギターの伴奏とマーリーの語りかけるような歌声が魅力的な曲。
この曲も、数多くのミュージシャンにカバーされてきた名曲です。
この曲、冒頭の歌詞がインパクトあります。
昔、略奪者どもはこの俺を力づくで捕え、奴隷商人の船に売っ払った。
そのすぐ後で、奴らは絶望のどん底に突き落とされた俺を買い取った。
対訳:山本安見(アルバムライナーノーツより)
この歌詞は、アフリカから連れてこられた黒人奴隷の歴史について語ったもの。
ジャマイカもアメリカ大陸の国々と同じく、16世紀半ばからの大航海時代、多くの黒人がアフリカから奴隷として連れてこられました。
その悲劇の時代から現在まで、苦難と戦い、解放を願い続けてきた黒人の歴史が弾語りっぽい感じで歌われています。
ボブ・マーリーは、白人の父と黒人の母の間に生まれたハーフですが、「ラスタファリ運動」(ジャマイカの労働者階級の間から生まれたアフリカ回帰運動)を思想のベースにするなど、黒人としてのアイデンティティーを強く持っていた様子。
心に響く名曲です。
Bob Marley Jammin
「ジャミング」(Jamming)は、「エクソダス」(Exodus)に収録されている楽曲。
この曲もレゲエの名曲としてあまりにも有名な楽曲。
のんびりとしていて、ちょっとユーモラスな雰囲気が魅力的。
ちなみに、この「ジャミング」(Jamming)という言葉、”楽しい時間を過ごす”という意味があるのだとのこと。
レゲエは、「レベルミュージック」(rebel music:反抗の音楽)とも呼ばれます。
ジャマイカの国民の90%以上は黒人奴隷やマルーン(逃亡奴隷)の子孫であるため、白人や欧米に対する抵抗の歴史、西洋物質主義への反感などが強くあります。
そのため、レゲエミュージシャンが書く歌詞も、社会や政治、物質主義や植民地主義への批判や反抗が主題とされることが多いのだとのこと。
また、「レゲエ」といえば、ドレッドヘアーと赤・黄・緑のラスタカラーですが、これは実はレゲエではなく「ラスタファリ運動」のシンボルなのだそうです。
「ラスタファリ運動」とは、エチオピア帝国最後の皇帝「ハイレ・セラシエ1世」を「ジャー(現人神)」と、ジャマイカのジャーナリスト・企業家の「マーカス・ガーベイ」を預言者と考え、アフリカ回帰を主義とする宗教的運動のこと。
レゲエミュージシャンは、必ずしもラスタファリアンではありません。
ですが、ボブ・マーリーがラスタファリアンであったため、レゲエと言えば「ラスタファリ」がイメージされることが多くなったのだとか。
偶数拍にアクセントのあるリズムパターンを持つ「レゲエ」の音楽、「レベルミュージック」と呼ばれる物質主義や植民地主義への批判を歌った歌詞、「ラスタファリ運動」とそのシンボルであるドレッドヘアーと赤・黄・緑のラスタカラー。
これらは、「ボブ・マーリー」という人物の存在によって世界的に広まったものです。
今や、「レゲエ」という音楽は、ジャマイカやカリブ海のみならず、アジアやアフリカ、ヨーロッパ、中東に至るまで世界的に演奏され聴かれる普遍な音楽となりました。
「ボブ・マーリー」、20世紀のポピュラー音楽の歴史に残る偉大なアーティストだと思います。
♪ラテンアメリカ音楽
https://search-ethnic.com/music/bob-marley
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