インド北部。カシミールの夏の主都「シュリーナガル」
シュリーナガルにあるダル湖では、夜明け前から早朝にかけて、地元の農家たちが小舟に野菜を積んで集まる水上マーケットが開かれています。
今回、その水上マーケットを見に行ってきたのでご紹介します。
前回の記事は↓
早朝のアザーンが聴こえる中、夜の水路をシカラで進む

夜明け前の5時。準備を済ませてハウスボートのテラスへ行くと、昨日のシカラの船頭のおじさんが待っていました。
9月下旬のシュリーナガルの朝は結構寒いので、パーカーと薄手のダウンジャケットを着込んで防寒対策です。
シカラに乗って水上マーケットまでの往復と見学で1時間半ほど。途中トイレは無いので済ませておく必要があります。

さっそくシカラに乗り込み出発!
シカラのソファーには温かい毛布が用意されていました。これは有り難い!
早朝の闇の中、船頭のおじさんはゆっくりと櫂を漕ぎだします。
動画もご覧ください↓

早朝5時、界隈には朝のアザーンの呼び声が方々のモスクから聴こえてきていました。
暗闇の中、水路沿いの水上家屋からの灯りが目に眩しい。
地元の人の漕ぐシカラや小舟も既に活動を始めています。
波のない水路。両脇に並ぶ建物の姿がくっきりと水面に映っています。

シカラは水上家屋の並ぶ界隈を抜け、蓮の葉が群生する地帯を進んでいきます。
しばらく進むと、向こうからカシミールの伝統茶「カワ」を売る小舟が近づいてきました。

肌寒いということもあり、カワ売りからカワを購入。
一杯50ルピー。二杯で164円です。

こちらが「カワ(Kagawa)」
「カワ」は、カシミール地方で古くから親しまれている、サフランやカルダモン、シナモンなどで香りをつけた伝統的なお茶。
牛乳を加えず、緑茶をベースにスパイスやナッツを合わせるのが特徴で、黄金色の美しい水色と、華やかで繊細な香りを楽しむ飲み物です。
この「カワ」が美味でした♪
華やかな香りとスパイシーな風味。砂糖の甘味。体がポカポカと温まります。

カワを飲みながらシカラに揺られていると、次第に空が白んできました。

そして、出発してから30分ほどで、シカラは水上マーケットが行われる場所に到着!
地元の農家が集う「Floating Vegetable Market(水上野菜市場)」

水上マーケットは、カシミール語や現地の英語表記では「Floating Vegetable Market(水上野菜市場)」と呼ばれています。
この市場の特徴は、観光客向けの土産物市場ではなく、湖の周辺で農業を営む人々が、実際に野菜を売買するための市場だということ。
ベトナム南部のメコンデルタの水上市場と並ぶ、世界でも珍しい現役の水上市場です。
場所はダル湖の南西側にある水路や湿地帯が広がるエリアの一角。
到着したのは午前6時ちょっと前。ちょうど農家の舟が集まり始める時分でした。
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市場では、農家同士の売買だけでなく、市街地から来た仲買人や小売商が野菜を仕入れているのだそう。仕入れた野菜はシュリーナガル市内の青果市場や露店に運ばれていくのだとのこと。

観光客のシカラもちらほらと見掛けますが、その数は数艘ほど。
治安の影響から観光客の数自体が少ないということもあるのでしょう。観光客向けの物売りの船の数も少なく、観光客に対して積極的に売り込みを掛けてくる感じでもありませんでした。

日が昇ってきました。
朝焼けが水面に映って綺麗です。


ダル湖では、湖面や湿地を利用して野菜を栽培する伝統的な農業が発達しました。
代表的なのが、「ラード(Raad)」と呼ばれる浮遊式の畑です。
湖に生育する水草や葦などを集め、厚い層にして浮かべ、その上に土や有機物を載せて野菜を育てます。こうした畑は水面に浮かんでいるため、水位の変動にある程度対応できます。
一方、湖には「デンブ(Demb)」と呼ばれる湿地性の畑もあり、こちらは必ずしも水面に浮いているわけではありません。
水上マーケットで売られる野菜は、こうした湖の中や周辺の農地で栽培されたものです。


ダル湖の水上マーケットでは、カシミール料理に欠かせない野菜を数多く見ることができます。
最も多く売られていたのが「ナドル(Nadru)」。蓮根です。ダル湖を象徴する食材で、カシミール料理ではヨーグルト煮込みのナドル・ヤクニや、揚げ物などに使われます。畑ではなく湖底の泥の中から採取されます。
「ハーク(Haakh)」は、カシミールで日常的に食べられる青菜。アブラナ科の葉野菜で、シンプルな煮込み料理に使われます。水上農業の重要な作物のひとつです。
「モンジ(Monj)」は、コールラビのこと。カシミールでは葉も含めて料理に利用され、モンジ・ハークなどの家庭料理に登場します。
「シンガラ(Singhara)」は、ヒシの実。湖や湿地で採れる水生植物の実で、茹でたり、粉に加工したりして食べられます。
そのほか、季節に応じてキュウリ、トマト、ナス、カブ、大根、ニンジン、カボチャなども取引されているとのこと。

マーケットの様子を見て感じたのは、活発に売買が行われているようではないということ。
シビアに商品の取引をするというよりも、仲間同士の会話を楽しんでいるという感じ。
ちなみに、この市場では現金による売買だけでなく物々交換の習慣も残っていおり、 湖で生産した野菜と、米、小麦、ジャガイモなどを交換する取引も行われているのだそう。



この市場がいつ始まったのか、正確な創設年代はわかっていません。
しかし、少なくとも100年以上続いている市場として記録されています。
ダル湖の周辺には古くから水路を利用して生活する人々が暮らしており、農作物の輸送にも舟が利用されてきました。
市場はこうした水上生活と農業の発達に伴って形成されたものと考えられます。
農家にとって舟は農作物を運ぶ輸送手段であり、同時に販売する店舗でもあります。陸上に市場を設けるより、湖の中で売買する方が合理的だったのです。
市場の存在は長年にわたり地元の生活に密着していましたが、写真家や旅行メディアによって紹介され、海外からの観光客にも知られるようになりました。



数多くいた小舟の中でひときわ目を惹いたのが、花売りの小舟。舟の船体には「FLOWER MAN」と書かれています。
赤やピンク、紫、黄色など鮮やかな色彩がとても華やか!
色とりどりの切り花を満載したこの舟は観光客向け。
ダル湖の水上野菜市場に観光客が増えたことで数十年前から存在していたそうで、この日は見掛けませんでしたが、サフランや工芸品を売る舟もあるとのこと。

舟に積まれている花は、赤やピンク、黄色のダリア。小ぶりな赤やピンクのジニア(百日草)。紫色のアゲラタム。赤やオレンジの羽毛状のケイトウ。オレンジ色のマリーゴールドなどなど。
カシミールでは花の販売が地域の生活文化の一部となっており、家庭やお店、ホテルなどで花瓶に飾ったり、結婚式や祝祭などで花束、花飾り、会場の装飾などに使用したり、宗教行事で供花や儀礼に使われたりしています。

この花売りの舟から赤とピンクのダリアを2輪購入♪
お値段は2輪で100ルピーでした。
鳥の囀りを聴きながら、朝の水路をゆったりと航行

水上マーケットを見学した後、シカラはマーケットを離れ、帰路へ。宿泊しているハウスボートへと戻ります。
来る時は真っ暗だった水路も、だいぶ明るく遠くまで見渡せるようになっていました。

水路沿いには木造の小道が所々にあります。
時間があれば、こういった小道も歩いてみたいところ。


水路沿いに並ぶ商店も営業を開始しています。




爽やかな朝。たくさんいる水鳥や水路脇のハウスボートや行き交う小舟、シカラなどを眺めながら、ゆっくりと進みます。
聴こえるのは鳥の囀りと船頭が櫂を漕ぐ音だけ。
極上のひと時。
動画もご覧ください↓









水上マーケットを出発して30分後、ダル湖に戻ってきました。


ハウスボートに帰着。
水上マーケットへの往復・見学は、1,000ルピーでした。

船頭さんはいつの間にか、マーケットで蓮根を購入していた様子。


テラスから眺める朝のダル湖もなかなかGood!
さて、ハウスボートに戻ったところで朝食です♪
カシミールブレッドとヌーンチャイの朝食


「Moustache Houseboat Srinagar」の朝食は、カシミールブレッドとバター、ヌーンチャイのシンプルな朝食。オムレツも付けてくれました。
カシミールでは伝統的なパン職人(カンドゥル)が窯で焼いたパンを、朝食やお茶の時間に食べる習慣が根付いています。

カシミールには、たくさんの種類のパンがありますが、いただいたのは「ギルダ(Girda)」と呼ばれるパン。
表面に指先などでくぼみや模様をつけて焼くのが特徴で、外側は香ばしく、中は柔らかく、やや噛み応えがあります。カシミールで最もスタンダードなパンで朝食の定番です。

こちらは、「ヌーンチャイ(Noon Chai)」
茶葉と牛乳、塩、重曹などを使ったピンク色の塩味のミルクティーです。
塩味のある温かいミルクに茶葉の渋みと香ばしさが加わり、乳製品のまろやかさと塩気が共存する、スープにも似た独特の味。

バター、オムレツ、ヌーンチャイと、塩味のオンパレードだったので、飲み物は甘いカワにした方が良かったかも。

食後は、ハウスボートのテラスでのんびり。
テラスの椅子に座って朝のダル湖を眺めます。





ゆったりとダル湖の風景を眺めていると、オヤジたちのボートに混じって、勢い良く櫂を漕ぐ女性の姿が!
舟の上には3人の子供も見えます。
どうやら、お母さんが子供たちを舟で学校へと送っているようです。
動画もご覧ください↓
この後、同じように子供を舟で学校に送るお母さんの姿を2回ほど見ました。
毎日繰り返されるシュリーナガルの日常のひとコマです。

カシミールの伝統的なハウスボートでの宿泊と、テラスからのダル湖の眺め。シカラに揺られてのダル湖の遊覧。夜明け前の水上マーケット。
ハウスボートとダル湖を満喫しました♪
午前10時頃までのんびりした後、チェックアウトし、市内の陸上のホテルへと移ります。
水上野菜市場(Floating Vegetable Market)の概要と地図
- 住所:Dal Lake, Karapura, Rainawari, Srinagar, Jammu and Kashmir 190003
- 時間:6時00分~7時30分
インド・シュリーナガルおすすめのホテル

シュリーナガルでの宿泊は、ダル湖にあるハウスボート「Moustache Houseboat Srinagar」
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ガート17からシカラで10分ほどの静かな場所にあり、テラスからは広大なダル湖が見渡せます。
象嵌細工が施された室内の調度は素晴らしく、エアコンやホットシャワーも完備。朝食はカシミールブレッドとヌーンチャイやカワティーをいただくことができます。シカラもチャーター可能。
スタッフのサービスも良く、素晴らしいひと時を過ごせるハウスボートです。
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