インド北部。カシミールの夏の主都「シュリーナガル」
町の中心に広がるダル湖を船頭付きの手漕ぎボートシカラで巡ります。
今回は、シカラでのダル湖遊覧についてご紹介します。
前回の記事は↓
シカラとは?

「シカラ(Shikara/شکارا)」は、カシミール地方の湖や水路で使われる、細長い木造の小舟です。
シュリーナガルのダル湖やニギーン湖でよく見られ、色鮮やかな屋根、装飾された木製の船体、クッションを敷き詰めた座席が特徴です。
シカラの正確な起源や誕生年代は明らかではありません。しかし、シュリーナガル周辺では古くから湖と運河を利用した水上交通が発達し、湖岸の集落や水上農地を結ぶため、小舟が日常的に使われてきました。
現在のような装飾的なシカラが観光の象徴となった背景には、19世紀後半から20世紀にかけて発展したハウスボート文化があります。
当時、カシミールを訪れる英国人などの滞在者が増え、湖上に浮かぶハウスボートが宿泊施設として普及しました。
それに伴い、宿泊客を岸からハウスボートまで運んだり、湖上を遊覧したりするためのシカラが発達したのです。
シカラに揺られてのダル湖遊覧は、シュリーナガル観光のメインイベントのひとつ。
ハウスボートへのチェックインを済ませると、さっそくスタッフにシカラのチャーターをお願いしました。
シカラに乗ってダル湖クルーズ出発

宿泊していた「Moustache Houseboat Srinagar」のスタッフに「シカラでダル湖を遊覧したい」と伝えると、待ちかねていたようにシカラに案内され、さっそく出発!
船頭は先ほどガート17からハウスボートまで乗せてくれた初老の男性です。
船頭さんの話によると、シカラ遊覧は1時間で1,000ルピー。3時間だと3,000ルピーとのこと。取り敢えず1時間と答えておきました。
船頭は船尾付近に座り、ハート形やスペード形にも見える幅広いブレードを持つ櫂を左右に櫂を操作しながら進みます。
この漕ぎ方はシカラならではの光景で、静かな湖面を滑るように進む姿が印象的です。

宿泊しているハウスボートを出発し、岸辺沿いに進んでいきます。
岸辺にはハウスボートがズラリと並んでいました。
ダル湖、およびニギーン湖には、900隻以上のハウスボートがあるとのこと。


しばらくしてシカラは岸辺から離れ、湖の奥へ。
徐々に波が静まり、水面が穏やかになっていきます。
湖の向こうには綺麗な山並みが見えます。


進んでいくと、前方に蓮の葉がたくさんある地帯が見えてきました。

「蓮」はカシミールを象徴する植物。蓮根はカシミール人のソウルフードです。
しかしながら、この群生地帯はまだ序ノ口のようで、奥に行くと一面蓮に覆われた場所がある様子。

蓮の群生地帯を抜け、シカラは再び湖の中央へ。
波はさらに鎮まり、向こうの山並みがまるで鏡のように水面に映っています。
動画でもご覧ください↓


天地逆になったような不思議な感覚。聴こえる音は船頭の櫂を漕ぐ音だけ。
暖かな日差し、爽やかな風、心地よい揺れ。柔らかなシカラのソファーに横になり、これ以上ないほどリラックスした気分で風景を眺める。
シュリーナガルに来て良かったと心から思う瞬間です。
湖の中にある小島に立ち寄り

さらに進んでいくと、前方の湖の中に小さな島が見えてきました。
船頭によると、あの小島に立ち寄るとのこと。


島に到着しました。
ここでシカラを降りてしばし散策。

島の桟橋にはハート型のオブジェが設置されていました。
話によると、ここで誰かがウエディング写真を撮るため、このオブジェを用意したのだとのこと。

島の中は緑溢れる美しい庭園になっていました。
楽園のような雰囲気ですが、午後の日差しが強くなってきていて結構暑い!

ちなみに、島にはトイレがありました。
20ルピーしたけど、シカラにはトイレが付いていないので、有り難いです。
島をちょこっと歩いてトイレを済ませた後、シカラに戻り、再び出発!
蓮の群生地帯を遊覧

ハウスボートを出発して既に1時間以上経っており、どうやら自動的に3時間コースにされてしまった様子。
船頭さんは、来た方向へは戻らず、さらに湖の奥へと漕いでいきます。
どうやら蓮が一面に広がる場所に向かうようです。
しばらく進むと前方に蓮の広がりが見えてきました。

ダル湖は、夏になると蓮の花が咲き、湖底では食用の蓮根が育つ場所でもあります。
蓮は湖底の泥に地下茎を伸ばし、水面に大きな葉を広げます。水面から高く伸びた茎の先にはピンク色の花が咲きます。
ダル湖の蓮は観賞用としてだけでなく、その地下茎が食材として利用されてきました。
カシミールでは蓮根を「ナドゥル(Nadur/نادٕر) 」と呼びます。日本でもおなじみの蓮根ですが、カシミールでは日常の家庭料理から祭礼のご馳走まで、非常に重要な食材です。
カシミールのナドゥルは、日本の蓮根と同じ植物の地下茎ですが、流通する姿には違いがあります。
日本では節ごとに切り分けた、比較的太く短い蓮根をよく見かけます。一方、シュリーナガルの市場では、細長いナドゥルを何本も束ねて売る姿が特徴的です。
切り口には日本の蓮根と同様に穴が並び、シャキシャキとした食感があります。

カシミール料理では蓮根の調理方法が非常に多彩です。肉料理が有名なカシミールですが、ナドゥルはヒンドゥー教徒のカシミール・パンディットとイスラム教徒の双方の食文化に登場します。
ヨーグルトをベースにした白っぽいグレービーで蓮根を煮込む「ナドゥル・ヤクニ(Nadru Yakhni)」。蓮根を細長く、あるいは薄切りにし、米粉やスパイスをまぶして揚げたスナック「ナドゥル・モンジェ(Nadru Monje)」。蓮根とホウレンソウを煮込んだ家庭料理「ナドゥル・パラク(Nadru Palak)」蓮根と魚を組み合わせたカシミールの伝統料理「ナドゥル・ガード(Nadru Gaad)」などなど。

蓮の群生地帯を抜け、シカラは傾き始めた太陽を右手前方に見ながら、進んでいきます。

時刻は午後5時過ぎ。出発して2時間近く経っています。
そろそろ宿泊しているハウスボートへ戻るようです。
湖の中に浮かぶ土産物屋でペーパーマッシュを買う

ハウスボートへと戻る途中、船頭さんに土産物屋に案内されました。
土産物屋ももちろん、湖上に浮かぶハウスボートです。

こちらが、案内された土産物屋。
「Jammu & Kashmir Govt. Cashmere Art Gallery」というお店で、カシミールの伝統工芸「ペーパーマッシュ(Papier-Mâché)」の専門店です。

シカラを降り、お店に入ると、目に飛び込んできたのは、店内を埋め尽くさんばかりに並べられたペーパーマッシュ。色彩の洪水です!
これを見て買わずにいられましょうか!

カシミールのペーパーマッシュは、紙を原料として成形した器物に、精緻な花や鳥の模様を手描きする伝統工芸です。
シュリーナガルを代表する工芸品のひとつで、ペルシャ文化の影響を色濃く受けています。
15世紀、カシミールを統治したスルタン、ザイン・ウル・アービディーン(Zain-ul-Abidin、在位1420〜1470年)は工芸や芸術の保護者として知られ、ペルシャや中央アジアの職人・技術を積極的に取り入れたと伝えられています。
その結果、カシミールではペルシャ由来の装飾文化と地元の美意識が融合し、独特の工芸が発達しました。
ペーパーマッシュもそのひとつです。
当初は装飾的な筆箱や文具箱などに用いられ、やがて花瓶、箱、家具の装飾、室内装飾品へと用途が広がりました。

ペーパーマッシュの装飾には、ペルシャの細密画、ムガル帝国の宮廷美術、そしてカシミールの自然が反映されています。
代表的なモチーフは、バラや小花を密集させた華やかな植物文様。チナールの葉というカシミールを象徴する大きな落葉樹の葉。金色の蔓草文様。ペルシャ美術にも通じる鳥を花や枝と組み合わせた図柄などなど。

それでもって、このお店で購入したペーパーマッシュがこちら。
イスラムらしい三日月形の吊り飾り。ブレスレット。丸形・角形の小箱(一番大きいのはコースター入り)。ミニシカラとシカラのマグネットの合計10点。
商売に長けていると言われるカシミール商人。畳み掛けるように様々な商品を見せてきて一筋縄ではいかない感じでした。
買い値は10点で4,150ルピー(約6,800円)。
高かったのか安く買えたのかはわかりませんが、気に入った物を買うことができて満足です♪

こちらは、土産物屋の桟橋からの眺め。
シカラや小舟が次々と行き交います。
モーターを付けている舟はほとんど無く、どの舟も船頭が櫂を漕いで進んでいます。
こんなに往来があるのに聴こえるのは櫂を漕ぐ音だけ。不思議な光景です。
動画もご覧ください↓

土産物屋でペーパーマッシュを物色している間、シカラの船頭さんはひと休み。
買い物を終え、シカラに乗り込みます。
絨毯やショールなどの布の店もどうか?と勧められましたが、それは断り、宿泊しているハウスボートへと向かいます。
アザーンの聴こえる中、夕方の水路を遊覧

シカラは水上集落のある界隈をゆっくりと進んでいきます。

夕暮れ時、シカラの数が増えてきました。
水路を進んでいく途中、遠くのモスクからアザーンの呼び声が聴こえてきました。
ほどなくして、別の方向からもアザーンが。近くのモスクからもアザーンが。
シュリーナガルの何千というモスクが一斉に夕方の礼拝の呼び掛けを始めたのです。
動画もご覧ください↓
アザーンを聴きながら、夕暮れの水路をシカラに乗って揺られる。
カシミールにいるということを実感する瞬間です♪

午後6時40分頃、シカラは宿泊していたハウスボート「Moustache Houseboat Srinagar」に到着。
ちょうど3時間のシカラ遊覧となりました。
夕食はハウスボートで。
翌朝は、朝の水上マーケットを見るため早起きし、再びシカラに乗る予定です。
続きの記事は↓
インド・シュリーナガルおすすめのホテル

シュリーナガルでの宿泊は、ダル湖にあるハウスボート「Moustache Houseboat Srinagar」
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ガート17からシカラで10分ほどの静かな場所にあり、テラスからは広大なダル湖が見渡せます。
象嵌細工が施された室内の調度は素晴らしく、エアコンやホットシャワーも完備。朝食はカシミールブレッドとヌーンチャイやカワティーをいただくことができます。シカラもチャーター可能。
スタッフのサービスも良く、素晴らしいひと時を過ごせるハウスボートです。
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