2009年にドイツの振興レーベルである「Eastblock Music」がリリースしたアルバム「ポルスカ・ルーツ(Polska Rootz)」
このアルバムは、ポーランドのアンダーグラウンド・ミュージック・シーンの代表的アーティストの楽曲をコンピレーションした作品です。
ベルリンの壁崩壊から20年を経た、かつての”東側”の国であるポーランドの、クラブを中心としたアンダーグラウンド・シーンに集う若者たちに聴かれている楽曲たちを16曲収録。
ポーランドの新世代の音楽を垣間見ることのできる貴重なアルバムです。「オフィス・サンビーニャ」によって日本盤がリリースされているのもすごいことです。
ビーツ、ダブ、ミックス&フューチャー・フォーク from ポーランド!
さて、ポーランドのミュージック・シーンと言っても、どんなアーティストがいて、どんな音楽が聴かれているのか、全くわからないと思います。私もわかりません。
だけど、ポーランド中東部で生まれたアップテンポな民族舞踏音楽「マズルカ」や、ポーランド出身の作曲家ショパンがしばし取り上げていたミドルテンポの宮廷音楽「ポロネーズ」などは知っている人もいるはず。
ポーランドは、ヨーロッパにおける音楽大国のひとつなのです。
また、ソ連の強い影響下に置かれた”東側”に位置していたポーランドですが、他の東欧圏の国とは違って音楽の面では寛容だったようで、70年代にはポーランド国内にジャズやタンゴのシーンが生まれ、ロックやパンクなどのバンドも活動していたのだそうです。
さらに、レゲエやダブも70年代後半には流入し、それらの西側経由の音楽とポーランドの伝統的な音楽をミックスさせた独自のポピュラー音楽シーンが形成されていたのだとのこと。
このアルバム「ポルスカ・ルーツ(Polska Rootz)」に収録されている楽曲は、現代の世界のミュージック・シーンのスタイルを踏襲しているものの、いずれもポーランド独自の雰囲気を感じさせる楽曲ばかり。
ポーランド音楽を初めて聴くリスナーにとっては、かなり新鮮に感じる音楽です。
Zakopower – Kiebyś Ty
上の動画は、「ザコパワー(Zakopower )」というフォーク・ロックバンドの楽曲「Kiebyś Ty」
ポーランド風味を感じさせるヴァイオリンの音色と、ヴォーカルの歌声とカリスマ的な存在感がなかなか♪
「ザコパワー」は、ポーランド山岳部にある町「ザコパネ」で2005年に結成されたグループで、グループの名前は町の名前に由来しています。
バンドのリーダーは、ヴォーカル兼ヴァイオリンのセバスティアン。彼の故郷「ザコパネ」の民族音楽とロックやポップスなどをミックスした音楽スタイルで、これまで6枚のアルバムをリリースしています。
2012年にリリースされた楽曲「Boso(裸足)」は、ポーランド国内のチャートや賞を席巻する大ヒット曲となったのだとのこと。
PSIO CREW – Hajduk
こちらは、「プシオ・クルー(Psio Crew)」というグループの楽曲「Hajduk」。
「プシオ・クルー」は、ポーランド中南部の都市「ビェルスコ・ビャワ(Bielsko-Biała)」出身のグループで、活動開始は2004年から。
彼らの楽曲は、ポーランド伝統音楽にドラムンベースやラガマフィン、ダブ、ヒップホップなどの要素を融合した音楽スタイルです。
実験的な音楽を志向しているバンドのようですが、現在までにアルバムリリースは1枚のみの様子。
上のPV、イラストが効果的に使われていたり、ブレイクビーツのダンサーと伝統的なダンサーの対決があったりと、なかなかポップで面白いです♪
lao che hiszpan
「ラオ・チェ(lao che)」というグループの楽曲「hiszpan」
「ラオ・チェ」は、1999年にポーランド中部の都市「プウォツク(Płock)」で結成された、オルタナティブロック、クロスオーバーのグループ。
グループ名は、映画「インディー・ジョーンズ魔宮の伝説」に出てくる脇役の名前から取られているそうです。
2005年の2ndアルバム「ワルシャワ蜂起(Powstanie Warszawskie)」でスターダムへとのし上がり、2008年リリースの3rdアルバム「ゴスペル(Gospel)」では、シングル曲「黒のカウボーイ(Hydropiekłowstąpienie)」がチャートの上位を独占し、アルバムはプラチナディスクを獲得、国内の音楽賞を多数受賞するなどビッグ・ヒットとなりました。
上の楽曲「スペイン人(hiszpan)」は、その「ゴスペル」からの一曲です。
STRACHY NA LACHY – Przedszkole
「ストラフィ・ナ・ラフィ(Strachy na Lachy)」というグループの楽曲「Przedszkole」
「ストラフィ・ナ・ラフィ」は、ポーランド北西部の都市「ピワ(Piła)」出身のオルタナティブロックバンドです。
これまで7枚のアルバムをリリースしており、プラチナディスクやゴールドディスクを数度獲得、チャートのTOPを記録した楽曲も複数曲ある人気バンドです。
上の動画の楽曲は、アルバム「Autor(著者)」に収録されている曲なのですが、曲名「Przedszkole」は、”幼稚園”の意味のよう。
この不穏な感じの曲調と”幼稚園”がどう結びつくのか、ちょっと興味あります!
Masala Soundsystem – XXI wiek
「マサラ・サウンドシステム(Masala Soundsystem)」の楽曲「XXI wiek」
「マサラ・サウンドシステム」は、アラブからインドまでのエスニック音楽の要素を取り入れたミクスチャー・エレクトロニックサウンドを作り出しているグループ。結成は2002年です。
上の動画の曲「XXI wiek」は、ポーランドの伝説的なハードコアバンド「Dezerter」の曲をエレクトロ・ミクスチャーサウンドでカヴァーしたもの。
「ワルシャワ・ビレッジ・バンド」の女性ヴォーカルの二人が参加しており、そのインパクトのある声が印象的。
彼女たちの歌声は、ポーランドの伝統的な歌唱スタイルで歌われているのだとのこと。
また、ハードでエレクトロニックなサウンドの合間に聴こえる、リズムの拍子を声にして歌のようにして表現するインド古典音楽の「コナッコル」を使っているのも面白いです。
PVのメッセージと映像の表現も秀逸!
Kapela Ze Wsi Warszawa – Joint Venture in the village
「ワルシャワ・ビレッジ・バンド(Kapela Ze Wsi Warszawa)」の楽曲「村の合弁事業(Joint Venture in the village)」
「ワルシャワ・ビレッジ・バンド」は、1998年にワルシャワで生まれたポーランドのトラディショナル系ミクスチャー・バンドの代表格。
ポーランドを始めとした中・東欧の伝統的音楽をベースに、世界中の様々な音楽要素を取り入れて現代化させた先進性のある音楽が特徴で、デビュー当初から注目されていたバンドです。
2004年には、UKのBBCラジオ3主催のミュージック・アワードで”ベスト・ニュー・カマー賞”、ヨーロッパ放送協会から”ベスト・フォーク・レコーディング賞”を受賞しています。
グローバリズムによって失われつつあるポーランド音楽の伝統と、ポーランド人としてのアイデンティティを取り戻すことをバンドのマニフェストとしているそうで、ポーランドでは失われていた様々な楽器や歌唱法などを復活させていることでも知られています。
バンドの女性ヴォーカルの歌声は、”ホワイト・ヴォイス”と呼ばれる、喉を広く開けてパワフルに歌う歌唱法です。この歌唱法はポーランドの山岳地帯で羊飼いによって生み出された歌唱法で、遠くの人にも声がよく聞こえるようにと編み出されたものなのだそうです。
KOSMOFSKI I MUNIEK TANIEC WESELNY
「コスモフスキー(Kosmofski)」の楽曲「Taniec Weselny」
このバンドの詳細はわからないですが、ポーランド第二の都市「ウッチ(Łódź)」出身のパンク&ニューウェイブ系のバンドで、この楽曲「Taniec Weselny(結婚式のダンス)」は、結構ヒットした曲らしいです。
ポーランド風のアコーディオンとドラムによるテンポのいいリズムと、2人のメインヴォーカルのしゃがれ声がなかなかGood!
Żywiołak – Świdryga i Midryga
「ジョイヴィオワク(Żywiołak)」は、2005年に「Roberta Jaworskiego」と「Roberta Wasilewskiego」によって結成されたワルシャワ出身のフォーク・グループです。
2006年にポーランドのラジオ民族音楽祭”Nowa Tradycja”でグランプリを受賞し、注目を集めたバンドで、ポーランドの伝統音楽を継承するフォークに加え、ハード・ロックやサイケデリック・トランス、ダブなどの音楽的要素も持っているのだとか。
伝統音楽をベースにしながらもトランシーな雰囲気があって面白いです。
ダブやラガマフィン、パンクなど西側経由の音楽とポーランドの伝統的な音楽をミックスさせた新潮流のポーランド・ポップスを楽しめるアルバム「ポルスカ・ルーツ(Polska Rootz)」
グローバルなメインストリームの音楽とローカルな民族音楽のミクスチャーが、新鮮な驚きを感じさせてくれます。
ポーランド音楽なんてなかなか聴く機会はないですが、聴いてみると、なかなか良い音楽があるんですね!良盤です。
♪ヨーロッパ
https://search-ethnic.com/music/polska-rootz
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