エリック・ムーケ(Eric Mouquet)とミシェル・サンチェーズ(Michel Sanchez)によるフランスのエレクトロニカ・ユニット「ディープ・フォレスト(Deep Forest)」
1992年に、ピグミー族のチャントやカメルーンやセネガルなどのコーラスを現代的なハウスビートとミックスし、クラブシーンにセンセーションを巻き起こしたファースト・アルバム「Deep Forest(邦題:アフリカン・コーリング)」のリリース(1992年)から3年。
彼らが満を持してリリースしたセカンド・アルバムが、この「ボエム(Boheme)」です(1995年リリース)。
アフリカをモチーフした前作と打って変わって、セカンド・アルバムの舞台は東ヨーロッパ。
東欧を放浪するジプシーのダンス音楽、ハンガリーやトランシルヴァニアの古歌、そして、モンゴルの民族歌まで、ヨーロッパ、ロシア、アジアを股に掛けた広大なユーラシア大陸の空気を感じさせる作品に仕上がっています。
1996年のグラミー賞のベスト・ワールド・ミュージック・アルバム賞を受賞作品です。
ハンガリーやジプシーの古歌をサンプリングし、ハウス・ビートとミックス
Deep Forest – Marta’s Song
上の動画は、アルバムのリードオフシングルでもある曲「マルタズ・ソング(Marta’s Song)」
ロバート・アルトマン監督の1994年製作の映画「プレタポルテ」のサウンドトラックに収録された楽曲としても知られています。
印象的なヴォーカルは、ハンガリー出身のシンガー「マルタ・セベスティエン」
マルタがトランシルヴァニアの民族曲を歌い、台湾の民族音楽がサンプリングされているとのこと。
とにかく、マルタの歌声がいいです。
「マルタ・セベスティエン」は、世界的に知られたハンガリーの歌姫。
共産主義時代からフォーク・ミュージック・グループ「ムジカーシュ」のリードヴォーカルとして活躍し、その名声は国外にまで響いていたとのこと。
近年では、映画「イングリッシュ・ペイシェント」やスタジオ・ジブリの「おもいでぽろぽろ」にも楽曲を提供しました。
マルタのヨーロッパとも、アジアとも感じられるような歌声が広大なユーラシアを感じさせる「マルタズ・ソング」
中間部のヴァイオリン・ソロもいいです。
Deep Forest – Bohemian Ballet
「ボヘミアン・バレエ(Bohemian Ballet)」
ジプシーのダンス音楽とロンドン・ハウス・ビートを融合させた楽曲。
ジプシーダンスの手拍子から始まり、哀愁に満ちたメロディーと歌声がアップテンポのビートとうまくマッチしています。
泥臭いジプシー・ダンスの楽曲がハウス・ビートによって洗練された感じです。
DEEP FOREST & SEBESTYÉN MÁRTA – Twosome.
「トゥーサム(Twosome)」は、トランシルヴァニアの古曲をふたりのシンガーが歌う楽曲。
シンガーは、「マルタ・セベスティエン」とハンガリー出身のシンガー「カタリン」だそうですが、カタリンの声はシンセサイザーによってかなり声質を変えてあるそう。
マルタ&カタリンの印象に残る歌声と、テンポの良いハウス・ビート。
優雅で流れるような美しい曲です★
Freedom Cry- Deep Forest
「フリーダム・クライ(Freedom Cry)」は、日本のホンダ・シビックのCM曲として使われたこともある、本作のハイライト・トラックのひとつ。
ハンガリアン・ジプシーの伝統曲をサンプリングした曲で、原曲は刑務所で過ごす男が房内で過ごす気持ちを歌った曲であるとのこと。
アフリカンのような太い男性ヴォーカルの声が強い印象を与えます。
歌詞はわからないですが、聴いているだけで、悲哀と大らかさ、そして、少しのユーモラスさを感じさせる心に残る名曲です。
Deep Forest – Cafe Europa
「カフェ・ヨーロッパ(Cafe Europa)」
のっけから冒頭のアラビックなメロディーラインにやられてしまうこの曲。
ハンガリーの打絃楽器「ツィンバロム」の煌びやかなリズムと、パンフルートの魅惑的な音色が交互に重なり合い、スピード感のある重低音のハウス・ビートがアンダーグラウンドな雰囲気を醸し出しているオリエンタルでサイケな曲です。
アラブ、ヨーロッパの東西の音楽が融合した万華鏡のような楽曲、たまらないですね!
Deep Forest – Boheme
アルバムの最後を締めくくるのは、アルバム・タイトル名ともなっている楽曲「ボエム(Boheme)」
ハンガリアン・ジプシーの歌曲をサンプリングした印象的なトラックです。
メインの女性ヴォーカルの哀愁に満ちた歌声と流れるようなメロディーラインが、ジプシーの辿ってきたユーラシア大陸の長い道のりと、悠久の歴史を感じさせます。
間奏部分の、ほのぼの感ある女性ヴォーカルと男性ヴォーカルの掛け合いもいい感じ。
悲哀と哀愁と、楽天さと大らかさと、ユーモラスさが混じった、「ジプシー(ロマ)」の旅路を感じさせるアルバムを象徴するような一曲です。
ディープ・フォレストのセカンド・アルバム「ボエム(Boheme)」
原曲のサンプリングとハウス・ビートとのミックスというエレクトロニックな手法でありながら、聴いている者にその地域の文化や人々が紡いできた歴史を感じさせる、彼らの最高傑作のアルバムだと思います。
♪テクノ・ハウス・ラウンジ
https://search-ethnic.com/music/deepforest-boheme
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