「インド」(India:भारत)
4500年を超える歴史を持ち、12億人の人口を抱える大国「インド」。
スパイスを使った『料理』、輪廻や解脱の考えがある『哲学』や『宗教』、周期と即興で作られる『音楽』、歌と踊りがメインの『映画』、サリーやターバンなどの『ファッション』、どれも「インド」的!
独特で多様な世界「インド」の旅をご紹介します。
今回は、タージマハルです!
たったひとりの妃のためだけに建てられた、世界で一番美しい建物「タージマハル」
白亜の殿堂、真っ白に輝く真珠、ヤムナー川のほとりに佇む夢・・・。
タージマハル!
それは人類がこの地球上に残した最も優雅で、最も完璧な美しさを備えた建造物である。
そう言っても決して過言ではないでしょう。
世界遺産「タージマハル」(Taj Mahal:ताज महल)のご紹介です。
赤砂岩で造られた入り口の楼門です。タージの姿が微かに見えます。
あそこで荷物検査をしてから中に入ります。いよいよです!
見えました!タージです!
楼門をを抜けると視界が一気に広がります。
広大な空間。
碁盤目状に区画された庭園は緑の絨毯に敷き詰められています。
その中央には豊かな水を湛えた泉水と、それを十字に貫く水路がありました。
そして、鏡のような水面にはでっかくて白い伽藍が、「ドン!」と逆さに映っています。
魔法のような建物、タージの姿です。
教科書やガイドブックの写真そのままの「タージマハル」。
しかし、実際に見てみなければわからない事があります。
それはその大きさです。
広大な庭園をタージに向かって歩いていくと、徐々にその白い伽藍が大きくなっていきます。
圧倒的な量感、凄まじい迫力、間近で見るタージは想像以上に巨大でした。
タージマハルの構成はシンプルで、そして、完璧なものです。
タージは95メートル四方の基壇の上に建てられています。
基壇の四隅には、高さ43メートルのミナレットが聳え立っており、基壇の真ん中に鎮座するタージを取り囲んでいます。
本体の大きさは57メートル四方、高さは67メートルあります。
ペルシャ式の「イーワーン」と呼ばれる開口部を中心とした構成が四つの面を囲み、その上に真ん丸い巨大な玉葱形のドームがどっかりと載っかっています。
ドームの周りには四つのチャトリ(小亭)が配されています。
四方どこから見ても同じ形に見える、完璧な造形です。
これら、基壇からミナレット、チャトリなどの全ては真っ白な大理石で統一されています。
タージは、遠目からは純白に輝いて見え、近くからは優雅なマーブル模様の彩りを見ることができます。
そして、その白は時間や光の具合により微妙に色合いを変えるのです。
朝の日の光に照らされた黄色。夕焼けは茜色から時間と共に薄紫色にドームを彩ります。
雨季の曇天がドームを暗灰色に沈ませ、満月の夜は伽藍を青白く浮かび上がらせます。
私はつるつるに磨かれた大理石の基壇の上をピタピタと歩きながら、白い、夢のようなこの建物を見て周りました。
かつては無数の宝石が埋め込まれていたといわれる壁面には、象嵌細工の唐草模様が緻密に描かれています。
雄大な構成と緻密な細工を持つタージは、ムガル帝国のありとあらゆる「粋」が凝縮されたものなのでしょう。
美しくも哀しい「タージ・マハル」にまつわるドラマ
万人を虜にするような美しい「タージ・マハル」。
しかし、その魅力は透き通るような白い姿態だけに留まりません。
「タージ・マハル」にはドラマが、それも、美しくも哀しい、人々をうっとりとさせてしまうようなドラマがあるのです。
ムガル帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーン(在位1628~58)は、最愛の妃ムムターズ・マハルが亡くなると大いに嘆き悲しみました。
彼は、その悲しみを癒すため、そして、彼女の魂に安らぎを与えるために壮大な墓を建設することにしました。
ムガル帝国の技術の粋を結集して、また、帝国の莫大な財産を浪費して、22年の工期をかけて、廟は完成します。
それが「タージ・マハル」です。
「タージ・マハル」は、皇帝の妃に対する愛の結晶なのです。
ひとりの女性のためだけにこれほどの物を造ってしまう。
妃ムムターズにとってこれ以上の喜びはないに違いありません。
ロマンチックです。
けれども、これを造らされる国民はたまったものではないことも確か。
しかも、です。
なんと彼は、信じられないことにタージの裏に流れるヤムナー川の対岸に、黒い大理石を使った自らのタージをも造ろうとしていたというのです!
困った王様です。
けれども、もし、真っ黒な「タージ・マハル」が建造されていたのだとしたら、白いタージに負けず劣らず美しかっただろうな、と私は思いました。(↓イメージ)
結局、黒タージは夢と終わりました。
シャー・ジャハーンは息子のアウラングゼーブの反乱により捕らえられ、アーグラー城に幽閉されてしまったのです。
アーグラー城の一角にある塔「ムサンマン・プルジュ(囚われの塔)」からは、ヤムナー川のほとりに佇む「タージ・マハル」の美しくも哀しい姿が見えます。
彼は晩年、この塔の上から、自らの造営した「タージ・マハル」を眺めながら過ごしたのだそうです。
亡き愛妻の思い出と、夢と消えた黒タージの幻想をうつろな目で思い描きながら・・・。
そして、幽閉されてから7年後、彼はこの部屋でひとり、静かに息を引き取ったのだと言われています。
「タージ・マハル」の建造は、国の財政を傾かせ、後の帝国の瓦解を早めることとなりました(タージが造られなかったとしても、イギリスの軍事力の前には為すすべもなかったでしょうが)。
朝の光を浴びたタージ・マハル
しかし、たったひとりの女性のために造られたこの廟が、いまや世界中の観光客を集めるインド随一の観光資源となっているのです。
妃に対する個人的な「愛」が、数百年後の国民たちの懐を潤している。これは、シャー・ジャハーンにも思いも寄らなかったことでしょう。
私は、このタージを眺めながら、そんなことを考えました。
夕闇の中に浮かび上がる「裏タージ」
タージ・マハルの裏に流れるヤムナー川。
その対岸からは、表側とは別のタージの顔を見ることができます。
私はレンタサイクルで対岸に渡り、「裏タージ」を見ました。
ちょうど夕暮れ時で、夕陽が川に浮かぶところが見えました!
夕陽を浴びた「裏タージ」
タージ・マハルには2回訪れています。
これは、裏タージを見たのとは別の時。夕焼け空に浮かび上がるタージのシルエットです。
夕暮れ時、私は友人とレンタサイクルでヤムナー川の畔へと行きました。
そこで見た光景・・・。
私たちは言葉を失いました。
「息を呑む」とは、まさにこのこと!
一生忘れることのできない、「タージ・マハル」のシルエットです。
旅行時期:1994年2月・2003年10月