1960〜1980年代にかけて世界中の民族音楽のフィールド・レコーディングを行った「ノンサッチ・レーベル(NONESUCH)」
その中でも、名録音として有名なアルバムがこの「ショナ族のムビラ2 アフリカン・ミュージックの真髄2」です。
このアルバムは、アフリカ南東部の国ジンバブエに住む民族「ショナ族」の伝統民族楽器「ムビラ(Mbira)」の演奏を録音したアルバム。
録音は、1977年、ジンバブエの現地録音。ポール・バーリナーによる採録です。
「ムビラ」とは、箱の上に並んだ金属の板を弾いて演奏する楽器で、楽器分類上では「ラメラフォーン」と分類されます。日本では「親指ピアノ」という名前で呼ばれることもあります。
一説によると、オルゴールのルーツであるとも考えられているそうです。
親指ピアノは、アフリカ各地で古くから演奏されてきた楽器で、地域によって「カリンバ」や「リケンベ」など様々な呼び名があります。
楽器の形も地域によって様々ですが、ジンバブエの「ムビラ」は、その中でも最も高度に洗練された楽器として知られています。
さてさて、とにもかくにもまずは、「ムビラ」の音を聴いてみましょう。
オルゴールのルーツ!ムビラが奏でる涼やかなアフリカの調べ
Nhemamusasa – Mhuri ye kwa Rwizi 1972
上の動画は、「仮小屋のための枝伐採(Nhemamusasa)」という曲。
ショナ族のムビラ曲の中でも有名な一曲で、イギリスのサブカルチャー・環境音楽の旗手「ペンギン・カフェ・オーケストラ」やアメリカのサックスプレイヤー「ポール・ウィンター・コンソート」などが、この曲をアレンジして自身のアルバムに楽曲を収録しています。
「ムビラ」には、鉄の棒をハンマーで叩いて平べったくした22から24の鍵盤が取り付けられています。
その鍵盤を両手の親指で弾いて演奏します。
「ムビラ」のアンサンブルは、通常、2台以上の「ムビラ」とひょうたん製の「ガラガラ」、そして、ヴォーカルからなります。
涼やかで優しい温もりを感じさせる「ムビラ」の金属音が心地いいです。
「ムビラ」と「ガラガラ」は、3拍子12拍を片方が4×3、片方が3×4で演奏しています。
ふたつのリズムの規則のズレや合一が複雑な音のバリエーションを生み出し、トランシーな高揚感をもたらすのです。
Mhuri yekwa Magaya performs “Mahororo”
上は、YOUTUBEに上げられていた「ムビラ」演奏の動画です。
みんな丸いたらいのようなものを持っていますが、あの中に「ムビラ」が入っています。
「ムビラ」は、音を大きくするために、しばしば「カラバシ(デゼ)」と呼ばれる丸いたらいのようなものに入れて演奏されます。
「カラバシ」の外部には、貝殻や瓶の栓などが取り付けられていて、ジージーというノイズが発生するようになっています。
「ムビラ」の金属的な音色と「ガラガラ」のシャカシャカ音、そして、ジージーというノイズとヴォーカルのヨーデル風の歌声が、なんともトランシー!
Tozvireva Tingaputike Neshungu-Mbira DzeNharira
「ムビラ」は、500年以上の歴史を持つと考えられています。
先祖崇拝の伝統を持つショナ族は、古来より先祖崇拝の宗教的な儀式の中で「ムビラ」を演奏してきました。
儀式は夜通し続き、人々は全員で歌い、踊り、飲み、手を叩いて一夜を過ごすのだそうです。
部族の霊媒師は「ムビラ」を演奏し、トランス状態になります。
そこに先祖の霊が乗り移り、人々に様々なお告げを告げて去っていくのだとのこと。
ショナ族の人々が長い歴史の中で培ってきた「ムビラ」の単純で複雑なリズム。
彼らとは全く違った音楽世界の中で生きてきた西洋は、1960年代になって、その方法論を知り、「ミニマル・ミュージック」と呼ばれる音楽を生み出しました。
「ミニマル・ミュージック」(音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる現代音楽の1ジャンル)を代表する作曲家として知られる「スティーブ・ライヒ」が、アフリカの民族音楽の強い影響を受けたことは有名です。
500年もの長い伝統を持ちながら、現代音楽的なモダンさを感じさせる「ムビラ」の音楽。
とても魅力的です。
収録曲
- 仮小屋のための枝伐採 Nhemanmusasa(“The Cutting of Branches for a Temporary Shelter”)(a)器楽の抄録I (b)器楽の抄録II (c)声のパートを含む完全な演奏
- ダンデ(ザンベジ河急流に近い北部/ジンバブエの一地域の名称) Dande(A region in Northern Zimbabwe near the Zambezi Escarpment)
- 大声で言うだろう(ヴァージョンI) Taireva(Version1)(“We Shall Speak Out”)
- 肉と地(オリジナル・ヴァージョン) Nyamaropa Yekutanga(“Original Version of Meat and Blood”)
- 大声で言うだろう(ヴァージョンII) Taireva(Version2)
- ライオン Shumba(“Lion”)
- 森の中の肉 Nyamamusango(“Meat in the Forest”)
- 偉大なるシャミヌカ Chaminuka We
♪アフリカ音楽
https://search-ethnic.com/music/shona-mbira
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