♪密林のポリフォニー/イトゥリの森ピグミーの音楽

イトゥリ森ピグミーの音楽【音楽】エスニック音楽
♪密林のポリフォニー/イトゥリの森ピグミーの音楽

アフリカ中部、コンゴ民主共和国北東部にある赤道直下の熱帯雨林地帯。

アフリカ大陸の最深部ともいえるこの地域に「イトゥリの森」はあります。

この森に、数万年の昔から変わらぬ狩猟採集の生活をし続けてきた民族が、一般的に「ピグミー族」と呼ばれる、成人男性の身長が1.5m未満であるという特徴を持った人々です。

 

「ピグミー」(Pygmy)とは、古代ギリシャ語を語源とする「矮小な」という意味の言葉で、「ピグミー族」という民族がいるわけではありません。

コンゴやカメルーン、ガボン、中央アフリカなどの熱帯雨林地帯には、多くの狩猟採集民が暮らしていますが、身長が低いという共通性はあるものの、それぞれ異なる言語を話し、部族名も「ムブティ」「アカ」「バベンゼレ」「バカ」「ビンガ」「エフェ」「トゥワ」「ウォチュア」など様々。その起源も別々であると考えられています。

 

そんな「ピグミー族」の文化の中で、世界的に特に高い水準にあると言われているのが、即興による複雑なポリフォニーが特徴的な声楽です。

この「密林のポリフォニー」は、レコーディング機材を運びながら熱帯雨林を分け入り、現地の居住地にて彼らのリアルなチャントを録音したアルバム。

人類学的に見ても貴重なレコードです。

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複雑なポリリズム、16ビートのリズム、高度なピグミー族の音楽

このアルバムがレコーディングされたのは、イトゥリの森に住む「ムブティ」(Mbuti)の居住地においてです。

森の中の虫や鳥の鳴き声、木々のざわめきをバックに、彼らの見事な歌声がクリアな音声で録音されています。

 

「ピグミー族」の音楽にはリケンベ(親指ピアノ)などの楽器も用いられますが、その主体は声楽。

即興による複雑なポリフォニー(複数の独立した声部(パート)からなる多声音楽)が特徴です。

ひとりが声を発し、それに呼応するように声を出し、それが何人も続き、幾重にも重なって複雑なポリフォニーを作りだしていくのです。

「ピグミー族」の歌は何百種類もあるそうですが、それぞれの歌に名前があるわけではありません。

ただし、「夢のうた」「あそびうた」「成女式のうた」といった分類はあるようです。

 

「ピグミー族」は大人から子供まで歌の天才です。

誰もが個性的な歌声を持ち、みんな素晴らしいアレンジャーです。

それぞれが際立った個性を持ちつつも、みんなで歌う合唱の中で見事に調和していきます。

 

また、リケンベなどを用いた彼らのリズム感覚も相当なもの。

16ビートの上に2拍子、3拍子が重なったポリリズム!

現代のミュージシャンも真っ青な音楽センスです。

「ピグミー族」の総人口は、約3万人ほど。

彼らは、10〜20人ほどの小さな集団で移動生活を行っているそうです。

彼らの信仰は森にあります。森を偉大な守護者であり、供給者であり、聖地であると考え、森を「父」や「母」と呼ぶこともあるそうです。

「ピグミー族」には政治組織などはなく、村が最高の社会機関です。

男女平等社会で、食料採集には男女とも携わり、相談事などの話し合いも男女とも参加して行われるそうです。

 

このアルバムの現地録音を担当したのは「大橋力」氏。

大橋氏は、映画『AKIRA』の主題歌を担当した「芸能山城組」の組頭として知られている方(組頭としての名前は山城祥二)。

※芸能山城組と言えば、毎年夏に西新宿で行われる「ケチャ祭り」の主催者です。

 

アルバムの解説には、大橋氏による現地録音の模様が書かれていました。

なんでも、「ピグミー族」の住むイトゥリの森へは、オフロードを1700km走破し、自分の足で100km以上歩いたのだとのこと。

毒蛇やワニが潜み、虫やマラリアをはじめとした病原菌がうようよいる熱帯雨林地帯。

そんな過酷な場所を重いレコーディング機材を運びながら「ピグミー族」の集団を探して回るというのは相当な大変さです。

 

大橋氏の苦労によって世にリリースされた「密林のポリフォニー」

世界最高の声楽のアルバムのひとつです。

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