『娘よ(DUKHTAR)』パキスタン山岳地帯を舞台とした母と娘の決死の逃走劇【映画】

娘よ【映画】 エスニック映画館
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遥かなるカラコルム山脈の麓──
婚礼の当日 花嫁となる10歳の娘を守るために
命を賭けた母と娘の脱出が始まった!

映画「娘よ」HP

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実話をもとに10年の構想を経て制作された、日本初公開のパキスタン映画

未だ、部族の掟によって支配されているパキスタン北部山岳地域。

映画「娘よ」(DUKHTAR)は、そんな部族社会に生きる母と娘を主人公にしたドラマ。パキスタンの村で起こった実話をもとに、10年の構想を経て制作された作品です。

監督・脚本・プロデュースは、この作品がデビュー作となる女性監督「アフィア・ナサニエル」

作品はすでに世界20ヵ国以上で公開され、第87回アカデミー賞外国語映画部門のパキスタン代表に選出されるなど、海外で高い評価を受けています。

本作品は、日本で公開される初のパキスタン映画です。

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部族の掟が支配する土地”トライバルエリア”

娘よ【映画】

映画の舞台はパキスタン北西部にある連邦直轄部族地域(FATA)。通称”トライバルエリア”と呼ばれているアフガニスタン国境地域です。

パキスタン中央政府の権限がほとんど及んでおらず、行政は「ジルガ」と呼ばれる部族長会議に委ねられています。

人口は約334万人で、パシュトゥーン人が主流派。

中央政府とは敵対的で、911テロを起こしたとされるタリバーンの活動地域としても知られており、タリバーンの支配を嫌う人々は地域から逃げ出し難民となっています。

主産業は牧畜ですが、それ以外に産業と呼べるものは麻薬の栽培や密貿易くらいしかなく、国際的に問題とされています。

パキスタン国内で最も教育が遅れた地域で、識字率は男性が約30%、女性は3%で、女性の地位が著しく低い地域でもあります。

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美しい山岳地帯をを背景に、母と娘の決死の逃避行がはじまる!

標高2,000mを越える山あいの村。

美しい母アッララキと10歳の娘ザイナブの親子は、そんな村のある部族の一員として暮らしていました。

母アッララキの夫は、部族の長であり、彼女は若くして部族長に嫁がされた身。

嫁いできてこのかた、母(ザイナブの祖母)と会うことも叶わず、娘ザイナブの成長だけが唯一の楽しみでした。

 

そんなある日、親子に危機が訪れます。

部族長である夫ドーラット・ハーンが、対立する部族とトラブル解決のために、娘ザイナブの縁談をまとめてきてしまったのです。

縁談相手は、相手部族の長老トール・グル。

ザイナブの人生はこれで終わってしまう。15歳の時にドーラット・ハーンに嫁がされた自分と同じように・・・。

アッララキは、恐れました。

 

そして、結婚式の当日、意を決したアッララキは、娘ザイナブを連れて逃亡を図るのです。

体面を潰された両部族は2人を共同で追跡します。

部族の掟を破った者に待つのは死あるのみ。

母と娘の決死の逃亡が始まります。

果たして彼女たちの運命は如何に・・・!

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部族社会に生きる女性たちのリアルが胸に突き刺さってくる

パキスタン フンザ カリマバード

映画の舞台である連邦直轄部族地域(FATA)は、パキスタン北西部、標高7,000m以上の山が60座以上も聳え立つカラコルム山脈の麓にある地域です。

映画の撮影は、FATAではなくインドとの国境地帯で行われたそうですが、その撮影地も治安が悪化し、過激派によるテロの危険がある荒廃した地域。しかも、標高2,500m以上の高地で気温は氷点下まで下るなど、撮影は過酷で困難を極めたそうです。

しかしながら、過酷な撮影の末にスクリーンに表現された映像は、素晴らしいのひと言。

 

そして、その風景の中で繰り広げられるアッララキとザイナブの逃走劇は、スリルとサスペンスに満ちています。

特に、追われる2人が村の細い路地を逃走する場面や、雄大なカラコルムの風景の中で展開されるカーチェイスの場面は、ハラハラドキドキ!

また、2人の逃走を手助けするトラックの運転手ソハイルとアッララキの、淡く、そして、決して実ることのない恋心や、母アッララキの娘ザイナブに対する母子愛も見どころのひとつです。

 

けれども、この映画を観た観客の胸に一番突き刺さるのは、パキスタン北西部の部族社会に暮らす女性たちの過酷な現実でしょう。

女性監督アフィア・ナサニエルは、本作「娘よ」について、このように語っています。

10年の歳月をかけ本作を制作した私は、実際に娘を持つ母親となり、幼い少女の結婚問題に目を背けることが出来なくなりました。毎年1400万人の少女が強制的に結婚させられている事実は、受け入れ難いことです。私たちを束縛する伝統やしきたりを打ち破ることに、どれだけの犠牲を払えば、自由、尊厳、愛を得ることができるのか、という重要な問いを映画の終盤で提起しました。

映画プログラム「監督からのメッセージ」より

冒頭の湖のシーン。

雄大な風景の中、長い髪を露わにし、ボートに乗るアッララキ。優雅に佇むその姿は開放感に満ち溢れています。

けれども、その映像は彼女の夢。

次のシーン、彼女は夢から覚め、場面は一気に薄暗い部屋の中へ。

そこには、部族に嫁いだ女として、自由と希望を奪われた現実がありました。

 

スクリーンの前の観客たちは、彼女の夢と現実の落差にまず衝撃を受け、物語が進むにつれ次第に厳しさを増していく彼女の境遇を見続けていくうちに、いつしか、彼女に感情移入していき、彼女の人生を共有するようになります。

観客たちは、まるで自分のことのように、追っ手を恐れ、娘と自分の境遇を嘆き、自由と愛を希求するのです。

パキスタンの部族社会に暮らす女性たちの過酷な現実を多くの人に知って欲しいというアフィア・ナサニエル監督の思い。

そのメッセージは、スクリーンの前の私たちに、十分過ぎるほどに伝わりました。

心を揺さぶるドラマ、緊迫感溢れる展開、印象的な映像美、強烈なメッセージ性・・・。

素晴らしい作品です。

キャスト

母 アッララキ       :サミア・ムムターズ
娘 ザイナブ        :サーレハ・アーレフ
トラック運転手 ソハイル  :モヒブ・ミルザー

スタッフ

監督・脚本・制作 :アフィア・ナサニエル
プロデューサー  :ムハンマド・ハーリド・アリー
撮影・編集    :アルムグハーン・ハサン

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