キューバ中部の古都「トリニダー」
この町の近郊に、スペイン植民地時代の大規模なサトウキビ農園、世界遺産「ロス・インヘニオス渓谷」(Valle de los Ingenios)があります。
観光列車で訪れた「ロス・インヘニオス渓谷」についてご紹介します。
世界遺産「ロス・インヘニオス渓谷」を見に行く
トリニダーから約15Kmのところにある「 ロス・インヘニオス渓谷」(Valle de los Ingenios)
世界遺産にも登録されているこの渓谷に行くため、朝早起きしました。
カサ「Hostel Glenda」のロビー
カサでの朝食
宿泊しているカサ「Hostel Glenda」で朝食を食べながらファミリーとお話しします。
私が、列車に乗って「ロス・インヘニオス渓谷」に行くつもりだということを知ると、家族でかくかくしかじかと相談。
結局、宿に案内してくれたおばちゃん(Emma:エンマ)の旦那さん(Edvardo:エドワルド)が駅まで案内してくれるということになりました。
助かります!
トリニダー駅から鉄道に乗って「マナカ・イスナガ」へ
トリニダー駅構内の操車場
宿を出て、エドワルドと一緒に歩いていくと、ほどなくして線路が見えてきました。
トリニダー駅と駅の操車場です。
結構広々とした操車場には、蒸気機関車や客車などが数台、停まっていました。
駅の向こう側に事務所があり、そこの窓口で「ロス・インヘニオス渓谷」の駅、「マナカ・イスナガ」までの列車のチケットを購入します。
料金は10CUC(1,000円)、エドワルドが窓口の人に料金や出発時間などを聞いてくれました。
列車の出発は9:30分、まだ少し時間があるので、操車場辺りをぶらぶらと探索してみることにします。
蒸気機関車(Tren de Vapor)
操車場を歩いていると、機関士のひとりが近づいてきます。
そして、いろいろ説明をし始めました。
この鉄道は、サトウキビを運搬するという目的のため、1880年代に敷設されたのだそうです。
サトウキビ畑のあるロス・インヘニオス渓谷の「マナカ・イスナガ」から、ここ「トリニダー」を経由して、南6Kmのところにある港町「カシルダ」へと続く鉄道。
現在ではサトウキビの運搬には利用されておらず、観光客用として運行しているのだとのこと。
蒸気機関車のフロント
トリニダー駅の踏切
停車していた蒸気機関車はアメリカ製で1906年の建造。
ちなみに、キューバに鉄道が敷設されたのは1837年のことで、これは世界で7番目に早いのだそうです。
サトウキビの劣化を防ぐためには、迅速に出荷しなくてはならず、そのためにいち早くキューバに鉄道が導入されたのでしょう。
トリニダー駅と列車を待つ人々
そろそろ出発の時間が近づいてきました。
機関士にお礼を言い、1CUCの謝礼を渡します(ちょっと少ないと不満そうではありましたが)。
エドワルドとも別れ、ホームに腰掛けて列車を待ちます。
トリニダー駅のホームは、本当にちっちゃなホーム。
でも、1日に一本しかない、2両編成の観光列車用なので、これで充分です。
列車がやってきました!
残念ながら蒸気機関車ではなく、ディーゼルの機関車です。
聞いたところによると、この時、蒸気機関車が故障してしまっており、代わりにディーゼル機関車での運行となっているのだとのこと。
かなり残念ですが、仕方ありません。
イスナガ駅へ向かう観光列車の車内
9:30分に列車は出発しました。
車内は7割くらいの乗車率で、乗客はすべて観光客。
列車は「マナカ・イスナガ」を目指し、のろのろと走っていきます。
列車のスピードはかなり遅いです。それなのに結構揺れます、この列車。
車内には、ギターを弾き語りするミュージシャンがひとり、乗っていました。
ミュージシャンの歌とギターを聴きながら、ゆっくりと流れゆく緑豊かな「ロス・インヘニオス渓谷」の風景を眺めます。
ミュージシャンの歌とギターはあまりうまくはなかったですが、美しい風景と味のある音楽、なかなか心地よい気分です♪
列車から見えるロス・インヘニオス渓谷の風景
列車から見える広大な「ロス・インヘニオス渓谷」の眺め。
「ロス・インヘニオス渓谷」は、サン・ルイス(San Luis)、サンタ・ロサ(Santa Rosa)、メイエル(Meyer)という3つの渓谷の総称だそうです。
観光列車の車窓
車窓から見えた馬に乗る人々
車窓からは、放牧された牛や馬、馬に乗って移動する人々の姿が見えました。
自転車でも追い越せそうなスピードで、ゆっくりと進むこと約1時間。
10:30分に、列車は「マナカ・イスナガ」に到着。
15Kmの距離に1時間かかっています!
トリニダーとイスナガを結ぶ観光列車
写真が観光列車です。
列車が駅に着くと、乗客たちは「マナカ・イスナガの塔」を目指して歩き始めます。
線路を利用するモーター車
イスナガで売られていた人形
途中には、Tシャツやら人形やらを売る土産物屋が並んでいました。
塔は駅から歩いてすぐです。
世界遺産「ロス・インヘニオス渓谷」と「マナカ・イスナガ」
マナカ・イスナガの塔
「マナカ・イスナガの塔」です。
塔の高さは45.5m、7階建てで塔の上までは136段の階段を上ります。
階段の上り、結構しんどいです。
ロス・インヘニオス渓谷の風景
「ロス・インヘニオス渓谷」には、植民地時代の18世紀末から19世紀にかけて、大規模なサトウキビ農園が広がっていました。
当時、渓谷には50以上の製糖工場があり、約3万人もの黒人奴隷が工場やプランテーション農場などで働かされていたそうです。
「マナカ・イスナガの塔」には、かつて各階に違った音のする鐘が取り付けられていたそうで、その音で労働者たちに終業の合図などを送っていたのだとか。
マナカ・イスナガの塔から見たロス・インヘニオス渓谷の眺め
塔の上から眺めた「ロス・インヘニオス渓谷」の眺めです。
プランテーションの総面積は約270㎢、多数の製糖工場の廃墟が残っているそうです。
下に見える建物は、大農場主のイスナガ一家の住居跡。現在はレストランとして利用されています。
イスナガ一家は、1835年に渓谷を一望できるこの塔「マナカ・イスナガの塔」を建てました。
当時、この塔はキューバで一番高い建物だったそうで、イスナガ家の権勢を見せつける意味合いがあったのだと言われています。
広大なロス・インヘニオス渓谷の風景
1512年、キューバにやってきたスペイン人たちは、この島に砂糖を持ち込みます。
砂糖による交易は、この地方を豊かにさせ、彼らは繁栄を享受しました。
18世紀末から19世紀にかけて、キューバの砂糖は世界一の生産量を誇ったそうです。
当初、労働者としては、先住民が奴隷として使役されていましたが、ひどい扱いと旧大陸から持ち込まれた病気により絶滅させられてしまいます。
そこで、スペイン人たちは、アフリカから黒人奴隷を輸入し、働かせるようになったのです。
現在、キューバにいる黒人系の人たちは、この時連れてこられた黒人奴隷の末裔です。
ランチはチキン!
塔から降りた私たちは、再び列車に乗り込み、ほんの10分ほど進んだ場所にある停車場で下車しました。
下車した先に別の邸宅があり、ここでランチタイム。
私は、チキンの定食を注文。ライスやバナナフリッター、サラダが載ったシンプルな定食(8CUC:800円)。
そこそこ美味しかったです。
向こうに見えるのは「マナカ・イスナガの塔」
奴隷制が廃止されたのは1820年のこと。
しかし、19世紀に独立戦争が起こるまでプランテーションは存続し、その時になってようやく製糖工場は停止され、放棄されることとなりました。
帰りの列車は、13:30分発。
再び、ゆっくりとトリニダーへと向かって列車は進みます。
途中、車内でうとうと・・・。
トリニダー駅に到着したのは、15:00のことでした。
旅行時期:2013年4月〜5月
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