アジアの近現代美術に特化した世界唯一の美術館「福岡アジア美術館」
2024年4月20日 (土)から2024年9月3日 (火)まで、開館25周年を記念するコレクション展「アジアン・ポップ」が開催されています。
今回、福岡に訪問した際に立ち寄り、作品を鑑賞してきましたのでご紹介します★
福岡アジア美術館
ブー・ホァ(中国)の壁画
「福岡アジア美術館」は、長年にわたり、アジアの交流拠点都市としての役割を果たしてきた福岡市が1999年(平成11年)3月6日にオープンさせた美術館。
場所は、博多区下川端町のリバレインセンタービル7・8階にあり、地下鉄中洲川端駅下車6番出口より徒歩すぐと、アクセスも便利。
入場料も200円と、気軽に観覧できる美術館です。
コレクション展「アジアン・ポップ」
コレクション展「アジアン・ポップ」
「福岡アジア美術館」には、アジア23ヶ国の約3000点の作品が収蔵されているそうですが、今回のコレクション展「アジアン・ポップ」で展示されている作品は、6ヶ国127点。
さっそく、作品を鑑賞〜♪ 気に入った作品をご紹介します。
作品は全て写真撮影可でした。
ファン・リジュン(方力鈞)[中国]「シリーズ 2 No.3」
入り口を入って冒頭に展示されていたのは、ファン・リジュン(方力鈞)[中国]の「シリーズ 2 No.3」
天安門事件後の表現の不自由さや、矛盾にみちた体制への漠然とした失望感を表した作品だそう。
モデルは、スキンヘッドの自分であるとのこと。
現代の中国の社会を表しているような作品。
中国商業ポスター
1920~30年代の上海や香港のポスター
こちらは、1920~30年代の上海や香港の商業ポスター。
共産主義になる前の中国の商業ポスターです。外資系企業を中心に自社商品の宣伝ポスターとして、これまでの吉祥図様からおしゃれな女性たちへとモデルが変わったのだとか。
レトロなデザインが魅力的です♪
ウ・ティエンチャン(呉天章)[台湾]「春宵夢IV」
ウ・ティエンチャン(呉天章)[台湾]の「春宵夢IV」
暗い部屋の中に、この絵だけが飾られています。
突然、台湾の懐メロ歌謡が流れて、絵が電飾で点滅します!
と、その時、突然、台湾の懐メロ歌謡が流れて、絵が電飾で点滅!
ちょっとびっくりしました(汗)
この作品は、異文化支配が続いた1950年代の台湾への郷愁を表した作品。作者にとっては、この時代が最も台湾らしいと感じる時代なのだそう。
イフティハール・ダーディー[パキスタン]「何というベールだ!」
イフティハール・ダーディー[パキスタン]の「何というベールだ!」
イスラムの道徳を表す、ベールから覗く女性の目の周りを、挑発的なポーズの大衆映画の女優が取り囲んでいます。
社会が女性に求める矛盾を表しているのだそう。
イフティハール・ダーディー[パキスタン]「肉を食べるムスリムは塩辛いものが好き、一方ヒンドゥー教徒は甘いものが好き」
イフティハール・ダーディー[パキスタン]の「肉を食べるムスリムは塩辛いものが好き、一方ヒンドゥー教徒は甘いものが好き」
対立を続けるイスラム教徒とヒンドゥー教徒のそれぞれに対する偏見を描いています。
アトゥル・ドディヤ[インド]「ガンボージ色のガッバル」
アトゥル・ドディヤ[インド]の「ガンボージ色のガッバル」
1975年公開のインド映画史上最大のヒット作『ショーレー(邦題:炎)』に登場する悪役ガッバルを中心に描いた作品。
周りに描かれた映画の暴力的なシーンと無垢な祈りの様子の対比により、暴力的な映画を大衆が礼賛していることへの批判的な視点が感じられます。
パキスタン映画ポスター
パキスタン映画ポスター
パキスタン映画は、1960~70年代に最盛期を迎えました。
映画産業の中心となったのは古都ラホールで、年間100本以上の映画が制作されたのだそう。パキスタンの映画文化は、ラホールの名にちなんで「ロリウッド」と呼ばれているとのこと。
バングラデシュ、リキシャ・ペインティング
バングラデシュの首都ダッカの街を走る「リキシャ」と、その装飾である「リキシャ・ペインティング」
リキシャの車体後背部のブリキ板に描かれる絵は「リキシャ・ペインティング」と呼ばれ、映画スターや風景、宗教、政治家や災害、戦争を描いたものなど、様々なモチーフが描かれています。
擬人化された動物
ヒンドゥー教の神様など
映画スター
タージマハル
ラジ・クマール・ダス(絵)、ガッファール工房(車体製作)[バングラデシュ]「リキシャ」
バングラデシュでは、現在でもこのような派手な「リキシャ・ペインティング」が描かれたリキシャが街を行き交っているのだそう。
ちなみに、福岡アジア美術館では、オリジナル・リキシャを作るワークショップなども開催しているようです。
ドゥリヤ・カージー、デイヴィッド・エルスワース、イフティハール・ダーディー、エリザベス・ダーディー[パキスタン]「ハート・マハル」
ドゥリヤ・カージー、デイヴィッド・エルスワース、イフティハール・ダーディー、エリザベス・ダーディー[パキスタン]の「ハート・マハル」
パキスタンでは、リキシャではなく、トラックにこのような絵が描かれます。絵はないけどバスも飾り付けがすごい!
この作品は、4人のパキスタン作家が下絵を描き、トラックの装飾職人たちが照明、板金、絵を描いて完成させたものだそう。
パキスタンのトラック文化を下敷きに、美術と大衆文化を融合させようとした作品であるとのこと。
ダリ・アル・マムーン[バングラデシュ]「彼等がスピーチをしている間」
ダリ・アル・マムーン[バングラデシュ]の「彼等がスピーチをしている間」
政治家がスピーチをしている間に、外国の植民地支配が進み、イスラームや映画スターなどが入り乱れ、文化的混乱が深まっていったことを描いた作品。
ミヤーン・エジャーズル・ハサン[パキスタン]「ドン!」
ミヤーン・エジャーズル・ハサン[パキスタン]「ドン!」
子供を抱えて戦うベトナム戦争時のベトナム女性と、観衆に向かって魅惑的なポーズを取る人気パキスタン映画女優の対比。
メイ・ディンイー(梅丁衍)[台湾]「トロツキーに捧ぐ」
メイ・ディンイー(梅丁衍)[台湾]「トロツキーに捧ぐ」
共産主義の革命家「トロツキー」を元にしたケンタッキーフライドチキンのキャラクター。
左右の写真は、1987年にケンタッキー・フライドチキンの中国1号店が北京・天安門近くの重要な場所に出店したことを示しています。
新年画[中国]
ルオ三兄弟(羅氏三兄弟)[中国]「我、北京天安門を愛す」
ルオ三兄弟(羅氏三兄弟)[中国]「我、北京天安門を愛す」
伝統年画の吉祥図様をベースに、現代消費社会の象徴でもあるマクドナルドやコカコーラ、携帯電話など描いた作品。
ホン・ソンミン[韓国]「アンダルシアの7つのキャラクター」
ホン・ソンミン[韓国]「アンダルシアの7つのキャラクター」
韓国の地方の名産品の広告キャンペーンをパロディにした作品。実際の広告は着ぐるみですが、作品では足を露出した女性が踊り、いかがわしさを演出。
韓国の通俗的な都市文化や、広告で煽る過度な消費文化を表しているのだとのこと。
コレクション展「アジアン・ポップ」
「福岡アジア美術館」の開館25周年を記念するコレクション展「アジアン・ポップ」(2024年4月20日 (土)から2024年9月3日 (火))
バングラデシュやパキスタン、中国、台湾をはじめとした、先鋭的なアジア現代美術を鑑賞することができました!
館内は空いており、じっくりと鑑賞が可能。入場料も200円と安価なので、お勧めの展覧会です★
「福岡アジア美術館」の場所・アクセス・営業時間
- 住所:福岡県福岡市博多区下川端町3-17・8F
- アクセス:地下鉄中洲川端駅下車、6番出口より徒歩すぐ
- 営業時間:9:30~19:30
- 定休日:水曜日
- 入館料:入館料(無料) アジアギャラリー観覧料(一般200円)
- HP:https://faam.city.fukuoka.lg.jp/
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