中米の国、グアテマラ。この国は手織物の宝庫。
古代マヤの時代に生まれた染織の技術は現在でも人々に受け継がれており、グアテマラの街には「ウィピル」と呼ばれるカラフルなブラウスを着た女性たちでいっぱいです★
今回は、そんなグアテマラの織物についてご紹介します。
グアテマラの織物
グアテマラの織物文化の伝統が色濃く残っているのは、北西部高原地帯です。
この地域には古代マヤの末裔である、およそ23の部族が1500年以上も続く伝統を守りながら暮らしています。
16世紀にスペインの植民地となったラテンアメリカ。コロニアル風の町が方々に造られ、カトリックの信仰が広まり、料理や服飾、音楽や絵画など、ありとあらゆるものがスペインの文化の影響を受けました。
そんな中、このグアテマラ北西部高原地帯は、マヤ時代からの民族の伝統を頑なに守り続けてきたのだとのこと。
その伝統が特に表れているのが、織物です。
この地域にある80あまりの村は、村ごとに独自の織物があります。衣服の形、色、模様など、それぞれの村ごと個性のある織物は、驚くほどバラエティに富んでいて、見ていて楽しいです。
織物の技術は、マヤの時代から親から子へと連綿と受け継がれ、現在でも老若男女、あらゆる人々が伝統的な織物を身に纏っています。
グアテマラに訪問した時、「チチカステナンゴ」「サン・アントニオ・パロポ」「サンタ・カタリーナ・パロポ」「サン・アントニオ・アグアス・カリエンテス」という4つの町と村で織物を購入しました。
それぞれの町と村で購入した織物をご紹介します。
チチカステナンゴ
こちらは、日曜市で有名な町「チチカステナンゴ(Chichicastenango)」で購入したランチョンマットサイズの織物。
えんじ色をベースにした渋い色合いが素敵です♪
模様の意味は分かりませんが、かなり複雑で手の込んだ図柄です。
この模様は刺繍ではなく、縫取織(地の色の経糸を張って浮織物を織り、模様の箇所にそれぞれ任意の色の緯糸を織り込んで模様を表現する)という技法が使われているのだとのこと。
こちらも、チチカステナンゴのお店で購入しました。
薄紫のテーブルセンターサイズの布。色がとてもキレイです★
薄紫色をベースに赤や青、緑、黄色、オレンジなど様々な模様が散りばめられていて、とてもカラフル♪
グアテマラの国鳥 ”ケツァール” が織られています。
えんじ色と薄紫色の布は、こちらのお店で購入しました。
写真のおばちゃんと値段交渉をして、1枚130ケツァール(1,950円)で購入!
この布は、チチカステナンゴの路上で売り歩いている売り子さんから購入した大きめのテーブルセンターサイズの白い布。
この柄は、結構色んなお店で売られていたので、売れ線なのでしょうか。
白地でシンプルで普段使いしやすい布。
模様として描かれているのは、こちらもグアテマラの国鳥 ”ケツァール” っぽいです。
購入したのは、この路上の売り子おばちゃん。
結構売り込みがしつこくて、何度も断ったものの、根負けして一枚チョイスすることに。
お値段は、結構値切って120ケツァール(1,800円)
「チチカステナンゴ」は、グアテマラのキチェ県にある町。マヤのキチェ族の文化が色濃く残る町として知られています。
チチカステナンゴでは、毎週木曜と日曜に露天市が開かれ、周辺の村から多くの先住民たちが集まり、食料品や衣料品、日用品、民芸品など、あらゆるものが売り買いされます。
外国人観光客の姿もちらほらと見掛けますが、市にやってきている人の9割は先住民の方々。
それも、それぞれの村オリジナルのカラフルな民族衣装を着ているので、とても華やかです。
こちらは、女性用のブラウス「ウィピル」
ウィピルは、それぞれの村で固有の文様や色調があって、ウィピルでどの村の人か分かるそうです。
サン・アントニオ・パロポ
こちらは、アティトラン湖畔にある村「サン・アントニオ・パロポ(San Antonio Palopó)」で購入した青い織物。
この村の女性たちは、写真の布と同じような色合いのウィピルを着ています。
青をベースに紫、緑、赤が織り込まれた渋い色合いが魅力的です。
湖べりで露天で販売していたおばちゃんから購入。
お値段は、半額くらいに値切って、40ケツァール(600円)
このおばちゃんから購入しました。
おばちゃん、布を何枚も広げて猛チャージ掛けてきました!
サン・アントニオ・パロポの青いウィピルを着た女性たちです。
「サン・アントニオ・パロポ」は、パナハッチェルから南東に10㎞ほどの所にある村。標高は1,772m。
村の人口は約12,000人ほどで、住民のほとんどがマヤの先住民族「カクチケル族」です。
「サン・アントニオ・パロポ」は、青い色をしたウィピルが美しいことで有名です。
こちらは、村の坂の途中にあった織物屋さんの店内。
織り機が置かれていて、青い布地が織りかけ途中。
青と紫のグラデーションが美しいです。
サンタ・カタリーナ・パロポ
こちらは、「サンタ・カタリーナ・パロポ(Santa Catarina Palopó)」で購入した織物ベルト。
サンタ・カタリーナ・パロポは、サン・アントニオ・パロポから車で15分ほどの場所にある村で、サン・アントニオ・パロポとはまた違った色合いの青いウィピルで有名です。
様々な青色と緑、紫、赤の色合い。バラエティに富んだ幾何学模様が美しいベルト。
サンタ・カタリーナ・パロポの女性たちは、この色合いのウィピルを着ています。
こちら(左上の3着)が、サンタ・カタリーナ・パロポの青いウィピル。
深みのあるとても美しい色合いのウィピルです。
ちなみに、この青いウィピル、村の人々が着るようになったのは、比較的最近のことであるとのこと。
ウィピル自体は昔から着られていたそうですが、欧米からの観光客に青いウィピルが売れるとわかった村の人々が次第に青のウィピルを作るようになり、現在のように青ウィピルを着る人が多くなったのだとか。
ベルトを購入したのはこのお店。
お店のおばちゃんは、現地のカクチケル語しか喋れず交渉は難航しましたが、半額くらいに値切って購入できました。
お値段は、50ケツァール(750円)
「サンタ・カタリーナ・パロポ」は、パナハッチェルから南東に5㎞ほどの所にある村。標高は1,662m。
村の人口は約5,000人ほどで、「サン・アントニオ・パロポ」と同様、住民のほとんどがマヤの先住民族「カクチケル族」です。
サン・アントニオ・アグアス・カリエンテス
このカラフルな織物は、グアテマラの古都、アンティグア近郊にある「サン・アントニオ・アグアス・カリエンテス(San Antonio Aguas Calientes)」で購入した織物です。
サン・アントニオ・アグアス・カリエンテスは、織物が美しいことで知られている町です。
サン・アントニオ・アグアス・カリエンテスの織物は、表裏どちらから見ても同じ模様が表れる両面縫取織という高度な技法で織られています。
模様は花や鳥などを始めとした動植物柄が多く、色合いは赤青黄緑と鮮やかな原色を使ったレインボーカラーが特徴です。
花や鳥たちに囲まれて、森の中で佇む恋人が描かれています。
色合いはカラフルそのもの★
こちらの布は、30㎝×15㎝くらいの端切れですが、それでもお値段は、425ケツァール(6,375円)
ウィピル(ブラウス)やテーブルセンターサイズの布となると、5万円ほどもするのだそう。
カラフル布は、街の中心にある民芸品市場で購入しました。
たくあんあるお店、どのお店も両面縫取織の織物はあるのですが、お店ごとにデザインや色、出来栄えが違い、お値段もお店によって様々。
上の写真が購入したお店とお店のおばちゃん。
数あるお店の中でも一番出来栄えが良いと思われるお店です。
技術に自信があるのか、このおばちゃんはいくら交渉しても全く値引きしてくれませんでした。
民芸品市場の通路には後帯機が置かれていて、おばちゃん達が織物を織っていました。
この後帯機は、テラール・デ・シントゥーラ(Telar de Cintura)という腰で支える昔ながらの後帯機。柱などに引っ掛け、一方を自分の腰で固定して織るそうです。
上の写真が「テラール・デ・シントゥーラ(Telar de Cintura)」という後帯機。
織られているのは、伝統的な結婚式用の敷物です。
この織物は、テーブルセンターや壁掛けとして使われるもので、花嫁が1ヶ月かけて織るのだとのこと。
向かい合っている二匹の鳥はグアテマラの国鳥でもあるケツァール。つがいのケツァールの間に、結婚指輪や火山などをモチーフにした図柄が描かれています。
民芸品市場の小さな織物博物館がありました。
雑然とした感じの展示室に、見事な柄のウィピルがたくさん展示されています。
お値段はかなり高そうですが、さすがに素晴らしい色合いとデザインです!
村ごとに異なった色合いと模様を持つグアテマラの織物。
グアテマラ北西部高原地帯の人々は現在でも日常的に、マヤの時代から受け継がれた伝統的な織物を身に纏っています。
古代マヤ文明は17世紀末に滅亡し、現在では失われた文明となってしまいましたが、その豊穣な文化は、織物という形で現在でも生き続けているのです。
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