アルジェリアのライ歌手「シェブ・マミ(Cheb Mami:شاب مامي)」
と言われても、聞いたことがないという人が多いと思います。
だけど、洋楽好きの方なら、1999年発表のスティングの傑作「デザート・ローズ(Desert Rose)」にフィーチャーされていた、あの女性のような美しい声のヴォーカリスト、と言えば、「ああ~」と思いだされる方もいるかもしれません。
このアルバム「Layali」は、「シェブ・マミ」の通算10枚目のアルバム。
2006年のリリースで、現在のところ彼の最新作です。
“世界で最も美しい声の持ち主”「シェブ・マミ」
Cheb Mami (& Zaho) – Halili
上の動画は、アルバムのハイライトトラックである「Halili」
アルジェリアのR&Bシンガーである「Zaho」がフィーチャーされたトラック。
ポップなメロディーと、マミとZahoの美しい声が魅力的です。
Cheb Mami Ajlissou Fil Makha
こちらも、アルバム「Layali」に収録されたトラック「Ajlissou Fil Makha」
アラビックな雰囲気満点のエキゾチックなナンバー。
STING & CHEB MAMI – DESERT ROSE
こちらは、スティングのヒット曲「デザート・ローズ」
冒頭のマミの歌声が素晴らしいです。
スティング曰く、“世界で最も美しい声の持ち主”だそうです。
「シェブ・マミ」とアルジェリアの音楽「ライ」
「シェブ・マミ」は、1966年、北アフリカの国アルジェリアの南西部の町サイダで生まれました。
幼い頃から歌を歌い始めた彼は、1982年、16歳の時に地元のラジオ局のコンテストで注目を集め、以後国内で人気歌手となっていきます。
1985年にはフランスのパリで活動を始めます。
その後、2年の兵役を務めたあと、1989年にワールドツアーを敢行。
その間に、彼の音楽は自らのルーツであるアルジェリアのライ音楽と、フラメンコ、トルコ・ギリシャ・ラテン音楽、HipHopやR&Bなど、様々な音楽を融合し独自の音楽を作り出していきます。
そして、彼の音楽は、それらの音楽界にも影響を与え始めるようになりました。
1999年には、レバノン系フランス語ラッパーであるK’Maroとのデュエット曲「Parisien du Nord」がヒット!
人種差別に反対するこの曲は多くの移民たちに受け入れられたと思われます。
そして、同年、スティングとの共作である「デザート・ローズ」により、彼の存在は世界中に知れ渡ることとなりました。
「シェブ・マミ」のルーツであるアルジェリア音楽「ライ」(raï:راي)とは、アルジェリア西部、オラン地方起源のポップ音楽のこと。
元々は、砂漠の遊牧民である「ベドウィン」(بدوي)が歌っていた歌が起源と言われており、1920年代の頃、都市部に住み着いた彼らにより、まず港町の「オラン」の酒場から広まっていったのだそうです。
そして、1940-50年代になると、ヨーロッパの影響のあった「オラン」において、アコーディオンやサックスの音が取り入れられ、1980年代にはシンセサイザーを主伴奏楽器とする「ポップ・ライ」が生み出されました。
1988年には「ライの王」と呼ばれた「シェブ・ハレド」のアルバムが世界的にヒット。
特にフランスでは、マグレブ(北アフリカ)移民が増加し、世代が2世代、3世代と渡りフランス社会に浸透してきたということもあって、「ライ」という音楽はフランスではかなり定着してきているようです。
「ライ」の歌詞は、恋愛の悩みや苦しみを内容とするものが多く、日本の演歌にも似ています。
けれども、現代の「ポップ・ライ」においては、若者の日常が主な内容となっているようです。
ちなみに、この「シェブ・マミ」、2006年発表のこのアルバム「Layali」までは、精力的にアルバムを発表し続けていて、このアルバムもかなりのヒットとなったみたいなのですが、その後のリリースは全くなし。
どうしたのかと思ったら、シェブ・マミ、2009年に妊娠した恋人を中絶させようと暴行し、傷害を負わせたという罪で禁錮5年の実刑判決を受けていました?
5年の刑期を終えてすでに出所したと思われますが、まだ新作アルバムのリリースはないようです。
ちなみに、暴行された元恋人は、その後、無事にマミの子を出産したのだとのこと。
♪アラブ・中東音楽
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