ROUTE BOOKS/ROUTE CURRYが企画した、食・スパイス・音楽を入口にインド文化を紹介するイベント「SPICE ROCKET 2026」
本年度は、日本各地のインド料理店4店舗(名古屋の「too much india」、山梨の「SPICE CORNER」、静岡の「インド食堂 だるばる」、千葉の「南インド料理 巡るインド」)が出店。都内からだとなかなか行けないお店の料理をいただける貴重な機会となりました。
今回は、イベントの最終日8/30のランチタイムに訪問。「旅するビリヤニとラーガの調べ」と銘打たれたこの回は、「ROUTE CURRY」の Saranさんによる南北2種のビリヤニを食べながら、U-zhaan(タブラ奏者)と新井孝弘(サントゥール奏者)の両氏による北インド古典音楽を楽しめるという、特別感のある回。料理と音楽、両方とも楽しみにして訪問しました。



Spice Rocket 2026




イベントの会場は、ROUTE BOOKS の店舗の道向かいにある系列スペース「YUKUIDO工房」。12:00開場・食事開始、13:30からライブという構成で、食事+ライブで前売5,800円。
この金額で料理と音楽が楽しめるなんて、かなりお得感あります。
「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」と「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」|北と南、2種のビリヤニ食べ比べ


「YUKUIDO工房」のイベント会場の様子です。会場は満席でした。
お客さんの年齢層は高め。インド料理マニアが集っているというわけでもなく、初めてビリヤニを食べる人も少なくない感じ。


着席したテーブルの上には、バナナリーフが敷かれていました。


さっそく、バナナリーフに水を掛け、手を使って軽く洗います。
ちなみに、この作業をやっていたのは、付近のテーブルでは自分たちだけでした。


ドリンクを注文できるということなので、ビリヤニと言えば、の「コーラ」を注文。
クラシックなボトルのコーラをラッパ飲み。
ちびちび飲んでいると、ほどなくして、自分たちのテーブルに料理をサーブするスタッフがやって来ました。


まず最初にサーブされたのが「サルナ」と、ビリヤニの付け合わせとして定番のヨーグルトサラダ「ライタ」
「サルナ」とは、南インドのタミル・ナードゥ州でよく食べられる、サラッとした軽い口当たりのスパイシーなグレイビー。
トマト、玉ねぎ、唐辛子、生姜、ニンニクをベースにしっかりとした辛味があるのがスタンダードなスタイルで、南インドの層状のフラットブレッドである「パロタ」の付け合わせとして定番です。


サルナとライタのサーブ後、ほどなくして、お待ちかねのビリヤニがやって来ました。
Saranさん直々のサーブ。バナナリーフの上にどっさりと大量に盛ってくれました!


今回提供されたビリヤニは、南インドの「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」と、北インドの「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」の2種。
南と北、2種のビリヤニの食べ比べです。


サーブされた際にびっくりしたのが、2匹の大きなエビが載った「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」の豪華さと、「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」のスパイスの香りの華やかさ。
食欲そそられます!
さっそく、いただきましょう〜♪


まずは、「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」
ビリヤニで有名なタミルナードゥ州中南部の都市「ディンディグル(Dindigul)」のビリヤニ。タミルナードゥ出身の Saranさんのバックグラウンドを感じさせるビリヤニです。
最大の特徴は、バスマティではなく、「シーラガ・サンバ(Seeraga Samba)」という小粒の香り米を使うこと。シーラガ・サンバ米の粒はかなり小さいのですが、肉汁やスパイスを吸収しやすく、米そのものの香りも強めです。
また、ヨーグルトやレモンなどの酸味、唐辛子や黒胡椒、クローブ、シナモンなどのホールスパイスが効いていて、酸味と辛味とスパイス感が味わえるのも特徴的。
このビリヤニがとにかく絶品!
お米はパラパラというよりも若干しっとり感あり。柔らかいチキンはスパイスや酸味が沁みていて美味しい。
そして、何よりお米の食感が軽く、ほど良く効いた酸味・辛味・スパイス感とも相まって、とにかく食が進みます。
大量にあったビリヤニをあっという間に食べ尽くしてしまいました!
もちろん、サラリと辛めの「サルナ」やクリーミー且つマイルドな「ライタ」で味変して食べるのもまた旨し。


続いて、「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」
生クリーム、ナッツ、ドライフルーツ、サフラン、スパイスなどを使い、濃厚さと仄かな甘味を持たせるムガライスタイルのビリヤニで、香り・油脂・甘味・米・海老の旨味が重なった、ムガルの宮廷文化を感じさせるリッチなビリヤニです。
でかいエビが2匹載ったビジュアルからしてインパクト抜群なビリヤニですが、これまた「ディンディグル」に負けず劣らず絶品!
プリプリのエビの食感と味の美味しさもさることながら、エビの出汁が沁み込んだパラパラのバスマティ米がとにかく旨い。
こちらも、あっという間に完食!


もちろん、両方のビリヤニをお代わりしました。
お代わりが欲しいと伝えると、Saranさんは最初に盛ったのと同じくらいの量をドサっと。当然のことのようにエビも再び2匹!
一瞬、食べ切れるか不安になりましたが、食べ始めると、手食で食べる手の動きが止まらなくなり、再びあっという間に食べ切れてしまうのが不思議なところ。
二食目も一気に完食。腹パンになったものの、食後の重さも無いのがGood!
酸味・辛味・スパイス感の南の「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」と、香り・華やかさ・リッチさの北の「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」
南と北のビリヤニを食べ比べることなんて、そうそうあるものではありません。
貴重な機会となりました。


こちらは、デザートの「フルーツ・パヤサム」
フルーツはブルーベリーのみで、ナッツが入っていた気がしますが、バミセリなどは無いシンプルなパヤサム。
冷たくほど良い甘さで、スパイシーでホットなビリヤニの後のデザートとしてぴったり。
食後の良いお口直しとなりました♪
ラーガの調べ|U-zhaan(タブラ奏者)&新井孝弘(サントゥール奏者)特別公演


食後は、この日のもうひとつのお楽しみ。
U-zhaan(タブラ奏者)と新井孝弘(サントゥール奏者)の両氏による北インド古典音楽のライブ演奏です。


13:30分頃、U-zhaanと新井孝弘の両氏が階上から颯爽と登場!
ステージに腰掛け、楽器のチューニングを始めます。
今回一番楽しみにしていたのは「サントゥール」の演奏を聴くこと。
CDや動画では何度も聴いたことがあるものの、生演奏を聴くのは初めてです。
「サントゥール(Santoor)」とは?
「サントゥール(Santoor)」は、台形の木製共鳴箱に多数の金属弦を張り、2本の細い木製の撥で叩いて演奏する打弦楽器。
イランに起源を持つと考えられる楽器で、もともとインドのカシミールではスーフィー的音楽伝統(スーフィヤーナ・ムーシーキー:Sufiyana Musiqi)の重要な楽器でしたが、20世紀後半になって、北インド古典音楽(ヒンドゥスターニー音楽)の主要な独奏楽器の一つとなりました。
このことに多大な貢献をしたのが、カシミール出身の「シヴ・クマール・シャルマ(Pandit Shivkumar Sharma)」(1938–2022)という人物。ヒンドゥスターニー音楽を代表するサントゥール奏者で、パドマ・シュリー勲章を受賞しているインドの人間国宝のひとりです。
シヴ・クマールの父 Uma Dutt Sharma は、シュリーナガル赴任中にスーフィヤーナ・ムーシーキーの音楽家たちと接触し、サントゥールに北インド古典音楽を演奏できる可能性を見いだしました。そして息子のシヴ・クマールにこの楽器を習わせます。
しかし、ここで問題が発生!
ヒンドゥスターニー音楽では、音程を滑らかにつなぐ表現「ミーンド(meend)」が極めて重要です。
シタールやサロードなら、弦を引っ張ったり指を滑らせたりできますが、サントゥールは、弦を撥で叩く → 音が出る → 音が減衰する という楽器であり、ピアノと同じで、基本的には音程が「点」になってしまいます。これはラーガを演奏するには大きな弱点でした。
そこで、シヴ・クマール・シャルマは、サントゥールの楽器の構造そのものを改造。撥を使って音と音の間を滑らかにつなぎ、音を持続させる独自の奏法も開発し、これによって、「カシミールの伝統楽器」だったサントゥールが、「ラーガを本格的に演奏できる独奏楽器」へと変貌しました。これは20世紀インド音楽史上、かなり大きな出来事とされています。
今回演奏を行うサントゥール奏者「新井孝弘」さんは、そんなシヴ・クマール・シャルマに直接師事した人物のひとり。2009年からは高齢のシャルマ氏のツアーマネジャーとして全公演に付き添っていたのだそう。
30個以上の駒(ブリッジ)に張られた100本近くの弦を左右の手に持った細い木製の撥で叩いて演奏するサントゥール。
弦を叩くとその周囲の弦や共鳴箱に音が共振し、煌びやかな倍音が漂います。
さらに、叩き方の強弱や速度、左右の叩き分けによってリズムが作られます。
サントゥールは、旋律楽器でありながら演奏者自身がリズムを生み出せる楽器なのです。


さて、チューニングが終わり、演奏が始まりました。
北インド古典音楽では、あらかじめ完全に書かれた「曲」をそのまま演奏するのではなく、ラーガという旋律体系の中で即興的に音楽を作ります。
まず、サントゥールだけの静かなアーラープ(Alap)が始まります。
そして、少しずつ音域を広げ、「このラーガはこういう世界です」と提示していきます。
この段階では、サントゥールの残響がとても美しく聞こえます。
やがて脈動が生まれ、速度が上がり、ジョール(Jor)、さらに高速のジャーラー(Jhala)へと展開していきます。
そして、タブラが加わると、ラーガ(旋律) × ターラ(周期的リズム)の世界になります。
サントゥールが旋律を即興で展開し、タブラがターラを提示する。そして両者が徐々に複雑なリズムのやり取りを始めていくのです。
サントゥールは旋律楽器ですが、「叩く楽器」でもあります。
一方タブラも打楽器。そのため演奏が速くなってくると、両者がほとんど会話しているような感じになります。
TAKAHIRO ARAI & U-ZHAAN – LIVE AT INRYOJI TEMPLE, OKAYAMA – 2023.03.25
演奏は休憩を挟んで2曲。どちらも30分ほどの長さの曲です。
国宝のサントゥール奏者「シヴ・クマール・シャルマ」に師事した新井孝弘と、タブラの神様「ザキール・フサイン」に師事したU-zhaanの両氏が紡ぎ出す音はまさに圧倒的。新井氏の繊細かつ正確な打弦さばき、U-zhaan氏の変幻自在の音色とビート。
あらためて、北インド古典音楽は素晴らしいなと感じさせられました。




アンコールでは、欧陽菲菲の「ラヴ・イズ・オーヴァー」をサントゥール&タブラで演奏。サントゥールの音色で奏でられる「ラヴ・イズ・オーヴァー」がなかなかGood!
曲の合間に話すU-zhaanの小話も面白かったです。


ROUTE BOOKS/ROUTE CURRYが企画したイベント「SPICE ROCKET 2026」。
その最終日に行われた「旅するビリヤニとラーガの調べ」は、北と南、2種類のビリヤニを食べながら、北インド古典音楽の生演奏を楽しめる豪華な回。
ROUTE CURRY提供の「ディンディグル・チキン・ビリヤニ」と「ムガール・シュリンプ・ビリヤニ」は、どちらも絶品!
タブラ奏者のU-zhaan、サントゥール奏者の新井孝弘の両氏による演奏もまさに圧巻! 北インド古典音楽の素晴らしさを改めて感じさせられました。
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