埼京線十条駅南口から徒歩1分。改札を出て右手に少し歩いた左手の雑居ビルの3階に、クルド家庭料理のお店『メソポタミア』はあります。
「クルド料理」とは、中東北部のクルディスタン(トルコ東部、イラク北部、イラン西部、シリア北部)に住む民族「クルド人」のお料理のこと。
このお店『メソポタミア』は、日本で唯一の「クルド料理」をメイン看板としたお店なのだそうです。
美しいクルドの織物が飾られたクルド感満点の店内
『メソポタミア』の外観
こちらが『メソポタミア』の外観です。
お店は南口駅前の通り沿いにあります。店頭に目立つ看板が掲げられているのですぐわかります。
さっそく、階段を登ってお店の入り口のある3階へ。
『メソポタミア』の店内
エキゾチックな雰囲気の店内にはクルドや中東関係の書籍や小物がずらり
こちらが『メソポタミア』の店内です。
店内は2部屋に分かれていて、座席数はテーブル席のみで合計27席。おひとり様向けの席もあります。
日曜のランチタイムに訪問しましたが、お客は、おひとり様女性、スーツの男性サラリーマン(1人)、年配女性3人組、カップルなどが来店。いずれも日本の方でした。
休日ランチタイムは予約は無しでも入れそうです。
美しいクルドの織物、クルドの新年祭「ネウロズ」の写真
クルドの風景や旧跡の写真
水タバコもありました。
収穫の様子が描かれた見事な織物
こちらのモチーフはメソポタミア神話でしょうか?
新年祭「ネウロズ」が描かれた織物
お店の内装は手作り感のある感じ。青く塗られた壁には、美しいクルドの織物や、クルドの風景や旧跡の写真などが至るところに飾られています。
天井からは中東風のランプが吊り下げられ、棚にはクルドや中東関係の書籍や小物が並んでいました。水タバコもありました!
エキゾチックな雰囲気満点です★
ちなみに、店頭の看板に「クルド家庭料理 手芸カフェ」とありますが、お店のHPによると、在日クルド人のファーティマさんが家庭料理を提供するとともに、伝統的な手芸作品を販売。希望者には作り方を教えているのだとのこと。
クルド人とは?クルディスタンとは?クルド料理とは?
ところで、クルド人ってどんな人たちなの?クルディスタンとは?クルド料理ってどんな料理?と疑問だと思うので、ちょこっと調べてみました。
クルディスタンの地図
クルド人とは?
クルド人とは、中東北部のクルディスタン(トルコ東部、イラク北部、イラン西部、シリア北部)に住むイラン系の山岳民族で、人口は約4,600万人。
クルド人を主体とした国家は存在しておらず、クルド人は主にトルコ・イラク・イラン・シリアに跨って暮らしているため、「国を持たない最大の民族」とも呼ばれています。
紀元前3000年頃からその存在は知られていましたが、歴史上、ローマやアラブ、イラン、トルコ、イギリスやフランスなど、様々な国に支配され続け、民族独自の国家が存在した期間はそう多くはありません。
信仰する宗教はイスラム教が多数派ですが、その宗派は様々。ユダヤ教やキリスト教、ゾロアスター教、ヤズディ教などのクルド人もおり、宗教や信条には自由がある民族なのだそう。主な生業は牧畜。多くが遊牧民として暮らしていましたが、近年では定住生活をする人も増えているのだとのこと。
クルド人問題
自らの国を持たないクルド人は、どこの国においても少数民族であり、歴史的に差別や迫害を受け続けてきました。
特に、クルド人口が最も多いトルコ(約1500万人が居住)では、近年までクルド語の使用や民族教育が禁止されるなど、クルド人を迫害する政策が行われてきました。現在でも公共の場でのクルド語使用は禁じられているのだそう。
また、クルド人が反政府運動を行ったこともあり、トルコ政府による都市への攻撃や文化遺産の破壊などが行われ、治安の悪化したトルコ南東部から多くのクルド人が国内外に脱出し、難民となることを余儀なくされているのだそうです。
日本のクルド人難民
日本に居住する在日クルド人の数はおよそ2000人。その多くが1990年代にトルコ政府の迫害を恐れて来日した人たちで、埼玉県蕨市や川口市に1300人ほどが暮らしているそうです。
迫害や戦乱から逃れて来日した在日クルド人ですが、日本政府は「国内に民族問題は存在しない」というトルコ政府の側に立っており、在日クルド人を難民として認めていません。
そのため、彼らは日本国内で就労することが出来ず、観光ビザが切れた後は、不法滞在となり、迫害の続く故国に強制送還される危険性を常に抱えて暮らしているのだそう。
先日、この問題を扱った映画「マイスモールランド」が公開され、在日クルド人の現状にスポットライトが当てられたのは記憶に新しいところです。
クルド料理とは?
クルド料理は、隣接するトルコやイラン、イラク、シリア、アルメニアなどの料理と共通点が多く、茄子やトマト、ピーマンなどの野菜、ぶどうやザクロ、いちじく、クルミなどの果物、ヨーグルトやチーズなどの乳製品が使われ、肉は羊肉や鶏肉などが主に用いられます。
お料理としては、中東でおなじみの羊肉や鶏肉の「ケバブ」、ナスやピーマン、トマトの煮込みをペースト状にした「ムサカ」、ひき肉団子のブルグル(麦)包み揚げ「クティリク」、ジャガイモと肉のシチュー「ヤニ」、ナンにひき肉を載せたクルド風ピザ「ラハマージュン」、茄子にひき肉を詰めたお料理や、ピラフを葡萄の葉で包んだお料理など、トルコ料理でも見掛けるようなお料理が多く、トルコ料理として知られているお料理のうちの多くが元々はクルドで生まれたものであるのだとのこと。ちなみに、トルコの美食の町として有名なガジアンテップもクルド人が多く暮らす町です。
銀色のコップに入れられたお水
さてさて、銀色のコップに入れられたお水で喉を潤しつつ、メニューを見てお料理を選びましょうか〜♪
『メソポタミア』のメニュー
メソポタミアセットのメニュー
メソポタミアセットのメニュー
ケバブメニュー
ケバブメニュー
単品メニュー
単品(ベジタリアンにおすすめ)メニュー
スープ・シチューメニュー
メソポタミア・スイーツ
コーヒーメニュー
ソフトドリンクメニュー
こちらが、『メソポタミア』のメニューです。
メニューは種類が多くて迷いましたが、今回は↓のお料理をチョイスしました。
- メソポタミアセット(ラハマージュン・羊飼いのサラダ・ヨーグルトスープ付き)1,250円
ケバブやクティリク、ポテトヤニも魅力的でしたが、次回訪れた時のお楽しみということで。
お水を飲みつつ、メニューに書かれたクルド人に関する紹介などを読みながら、お料理を待ちます。
クルド風のピザ「ラハマージュン」とピスタチオの甘いペイストリー「バクラワ」をいただく!
「メソポタミア・セット」1,250円
ほどなくして、お料理が運ばれてきました!
「メソポタミア・セット」(ラハマージュン・羊飼いのサラダ・ヨーグルトスープ付き)です★
シンプルなビジュアルですが、いかにも美味しそう!さっそくいただきましょうか〜♪
「ラハマージュン」(ナンに牛ひき肉のトッピング)
こちらは「ラハマージュン」(ナンに牛ひき肉のトッピング)
「ラハマージュン」(ラフマジュン)は、薄く平なパンの上に牛か羊のひき肉と、微塵切りの玉ねぎやトマトなどの野菜、パセリや唐辛子、パプリカ、クミンなどのスパイスやハーブを載せ、オーブンで焼いたクルド風のピザです。
オスマン帝国時代に生まれ、トルコ東部で広まっていましたが、現在ではトルコ全土で食べられるようになっているのだとか。アルメニア、シリア、イラク、レバノンでも普及しているのだそう。
外カリカリで中もっちりの生地と、香ばしくスパイスの効いたひき肉メインの具材のマッチングがGood!いくらでも食べられそうな美味しさ★
「羊飼いのサラダ」
こちらは「羊飼いのサラダ」
細かくカットされたキュウリ、トマト、レタス、紫キャベツ、玉ねぎなどの野菜をスパイスやハーブ、レモン、オリーブオイルなどで和えたシンプルなサラダ。
中東のサラダらしい、シンプルでさっぱりとしたサラダ。「ラハマージュン」の上に載せて食べても美味しいです♪
「ヨーグルトスープ」
こちらは「ヨーグルトスープ」
あっさりさっぱりとしたヨーグルトスープ。中に入ったキュウリやブルグル(小麦の挽き割り)などの具材とバジルなどのハーブが新鮮な美味しさ♪
「ラハマージュン」との相性抜群です。
食後はコーヒーとデザート
食後は、コーヒーとデザートを注文。
中東はスイーツが美味しい!注文したのは↓です。
- 「バクラワ」(ピスタチオの甘いペイストリー)2個500円
- クルドコーヒー 450円
クルドコーヒーは、細かな細工が施された伝統のデミタスカップで出てきました♪
「バクラワ」(ピスタチオの甘いペイストリー)500円
「バクラワ」(ピスタチオの甘いペイストリー)です。
「バクラワ」とは、薄いパイ生地にクルミやピスタチオ等のナッツを砕いたものを挟んで焼き上げ、シロップに浸したお菓子です。
シロップの沁み込んだパイ生地のしっとりさっくりの食感。ピスタチオ感がたっぷりなのが最高でした★
「クルドコーヒー」450円
「クルドコーヒー」は、メニューの説明によると、コーヒー豆にピスタチオ、カルダモン、シナモン、チョコレート、バニラなどを加えたコーヒーで、北メソポタミアで愛されているのだとのこと。
濃厚で深みのある味が甘いバクラワのお供に最適♪
十条にあるクルド家庭料理のお店『メソポタミア』
在日クルド人のシェフが作る美味しいクルド家庭料理をいただくことができるお店。
いただいた「メソポタミア・セット」は、「ラハマージュン」も「羊飼いのサラダ」「ヨーグルトスープ」も美味♪もちろん、デザートの「バクラワ」も絶品でした★
故郷でも、日本でも厳しい現実にさらされているクルドの人々。ぜひ、応援していきたいお店のひとつです。
◉『メソポタミア』の地図・アクセス
- 住所:東京都北区上十条1-11-8 3F
- アクセス:JR埼京線十条駅(南口) 徒歩1分
- 営業時間:11:00~16:30 17:00~23:00
- 定休日:月曜日