赤土色のキャンバスに白い絵具で描かれた印象的なイメージの絵画。
斬新な造形と緻密に描きこまれた描写はパッと見で記憶に残る感じ。
これ、誰の絵画か知っていますか?
この絵画、実はインド西部、マハーラシュトラ州に住む先住民族「ワルリー族」の絵画なんです?
ワルリー族によって描かれる壁画「ワルリー画」
「ワルリー画」はワルリー族によって描かれる壁画です。
すり潰した米と水を混ぜて作った絵の具と竹の筆を使って赤土の壁に描きます。
その絵はまるで原始時代の岩絵のよう。
三角形や円などの単純な形の組み合わせの斬新さや、驚くほど細かい線描などには、本当にびっくりとさせられます。
絵は全て神話や物語などを題材としていますが、最近は現代の生活をモチーフとした作品も描かれています。
現在はインド政府の先住民族振興策により、ワルリー画は紙にも描かれるようになり、その素晴らしい絵画は世界にも紹介されています。
例えば、ギタ・ウルフ作、インドラプラミット・ロ画、酒井公子訳の絵本「はらぺこライオン」(アートン)にはロ氏の描いたワルリー画が使われています。
大都市ムンバイのあるインド西部マハ-ラシュトラ州。
ここにワルリー族は住んでいます。
彼らはインドの500にも及ぶ先住民族のひとつで、ヒンドゥー世界とは異なった世界観、価値観を持った独自の文化を形成しています。
人口はおよそ40万人。言語はインド・アーリア系のワルリー語。ワルリーは父系制の社会だそうです。
ワルリー族は主に農業で生計を立てています。
彼らの神は万物に宿る精霊。大地の神、森の神、魚の神など、あらゆるものに精霊が宿っていると考えており、自然の物を採取する場合には儀式をして神にお伺いをたてるのだそうです。
これらの「ワルリー画」は、2015年9月に代々木公園で開催された「ナマステインディア2015」の会場に展示されていたものです。
この「ナマステインディア2015」では、作品が展示されていただけでなく、インドから「ワルリー画」の描き手が3名来日し、公開制作も行っていました。
ワルリー画の描き手、ヴィジェイさん
ワルリー画の描き手、デウさん
ワルリー画の描き手、ゴルカナさん
ワルリー画を展示している日本の美術館「ミティラー美術館」
「タルパーダンス」 ジヴャ・ソーマ・マーシェ作(ミティラー美術館販売ポストカードより)
「蛇の王」 ジヴャ・ソーマ・マーシェ作(ミティラー美術館販売ポストカードより)
日本で「ワルリー画」を見ることができるのが、新潟県十日町市にある「ミティラー美術館」
私はここで「ワルリー画」に初めて出会いました。
作品には本当に興奮させられました。
ここは同じインド、ビハール州の絵画「ミティラー画」をメインとした美術館であり、私もそれを目当てに出掛けたのですが、「ワルリー画」の方に釘付けとなってしまいました(もちろん「ミティラー画」↓も素晴らしいです。「ゴンド画」という絵もあります)。
美術館ではワルリー人画家が招かれ、住み込みで制作も行っているのだそうです。
「アリパン」 ゴーダーワリー・ダッタ作(ミティラー美術館販売ポストカードより)
ミティラー美術館
この美術館は十日町のそれもかなりの山奥にあるので行くのは大変でした。
けれども、それでも本物の「ワルリー画」を見たいならぜひとも行く価値があるところです。
建物はかつて小学校として使われていたという古い木造の校舎。十日町の駅からはタクシーで15分ほど掛かります。
ここは日本有数の豪雪地帯で冬は雪に埋まるため、冬以外の訪問がベターです。
美術館では様々な展覧会やコンサートなども行われているようです。ミュージアムショップでは「ミティラー画」や「ワルリー画」の作品やポストカードなども販売しています。
山奥の木造校舎の中で見る素朴で刺激的なインドの民俗画たち。
とても不思議で貴重な時間を過ごせると思うので、興味のある方はぜひ一度行ってみると良いと思います(↓ミティラー美術館の場所)。
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