「カタカリ(kathakaḷi:കഥകളി)」は、ケララ州に伝わる古典舞踊劇。
インド四大古典舞踊のひとつ(他の3つは、バラタナティアム、カタック、マニプリ)とも言われていて、ケララ州を代表する民俗芸能です。
緑色の隈取りがされた顔や、巨大なスカートを履いた衣装はインパクト抜群!
「カタカリ」のダンサーの姿は、ケララ州を紹介する映像やパンフレットに必ず使われ、街の至る所に「カタカリ」をモチーフにした絵やデザインを見ることのできる、ケララ州のシンボル的な存在となっています。
日本の歌舞伎にも似ていると言われる所作や表情によって表現されるパントマイム劇「カタカリ」を、本場コーチンで観てきましたので紹介します。
カタカリ・ダンスの会場「グリニクス・ヴィレッジ」
フォート・コーチンにある「グリニクス・ヴィレッジ(Greenix Village)」
「カタカリ」は、ケララ州を代表する伝統芸能なので、鑑賞できる場所はいくつもあります。
今回訪れたのは、フォート・コーチンにある「グリニクス・ヴィレッジ(Greenix Village)」というところ。
場所は、「フォート・コーチン・バススタンド」から東へ進み、エルナクラム行きのジェッティー乗り場の手前のちょっと右手にあります。
「グリニクス・ヴィレッジ」の入り口
レギュラー・ショウは5:00PM to 7:30PM
「グリニクス・ヴィレッジ」では、「カタカリ」だけでなく、ケララの他の伝統舞踊である「モヒニアッタム」や「ティヤム」、インド古武術の「カラリパヤットゥ」などのパフォーマンスも行われていて、それらをまとめて観れるプログラムも用意されています。
今回、午前中に訪問してチケットを購入。
まとめて観れる「カルチュラル・アート・パフォーマンス」(18:00~19:30)750ルピー(1,350円)をチョイスしました。席は予約時に決められます。
また、17:00からは、「カタカリ」の見所のひとつ、メーキャップも見ることができます。
コーチンには、他にもたくさんの「カタカリ」を鑑賞できる場所があります。
↓は以前訪問したエルナクラムのシアターの様子。
「カタカリ」とは?
ところで、この「カタカリ」、いったいどんな舞踊なのでしょうか。
ちょこっと説明します。
「カタカリ(kathakaḷi:കഥകളി)」は、1000年以上の歴史を持ち世界最古の演劇として知られる「クリヤッタム」をベースに、「カラリパヤットゥ」というケララで古くから行われてきた伝統武術の要素がミックスされ、16~17世紀頃に誕生したと考えられています。
ちなみに、カタカリの「カタ」は物語、「カリ」は舞踊の意味です。
物語の内容は、ヒンドゥーの叙事詩「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」や土地の民話などからとられたものが多く、演者は女性役もすべて男性が演じます。
演者は、顔に派手な隈取りを施し、豪華な衣装を身に纏うのが特徴。
セリフは基本的になく、物語や登場人物の心情などは、踊りと目の動きや顔の表情、指先の動きなどで表現されます。
1時間以上もかかるという「カタカリ」のメーキャップ
メーキャップの様子
さて、開演の30分ほど前、「グリニクス・ヴィレッジ」に再訪しました。
メーキャップを見るためです。
この、メーキャップが、「カタカリ」の見どころのひとつなのです★
「グリニクス・ヴィレッジ」には、すでに多くの観光客の姿がありました。
観光客は、そのほとんどが欧米人。メーキャップは開演の1時間前から始まっており、メイクもかなり進んでいる感じでした。
上の写真では、メイクをしている様子を若者が真剣に見ていますね。
このメイクを一人前にできるようになるためにも数年の修行が必要なようです。
また、このメイク、びっくりするのは、顔に隈取りをするだけでなく、表情を豊かにさせるために、目にスパイスを入れて充血させるんです!
かなりのこだわりようです!!
メイクの模様を観光客たちがパシャパシャと撮影
顔のメイクが完了したところで、ダンサーは舞台の袖に引っ込みました。
この後、衣装の着付けがあるのですが、これもなかなか大変。
あのボワンとしたスカートは、お米やスパイスなどを入れる大きなビニール袋を、腰回りに広がるように何重にもひだのように巻きつけて作り、その上から衣装を着るのだとか。
着付けの様子も見たかったのですが、前回観た時もそうだったのですが、どこのシアターでもステージでは見せていないようです。
女形の演者によるパントマイムの型の紹介
女形の演者によるパントマイムの型の紹介
メイクしている演者が舞台裏で着付けをしている間、女形の演者によるパントマイムの型の紹介が行われます。
これが、結構面白いです!
演者が、「笑い」「喜び」「悲しみ」「恐れ」「怒り」などの感情表現を表情と目の動き、手や体の所作で表現していきます。
それぞれの感情表現に合わせて、太鼓叩きが音の大きさやリズムを変化させ伴奏していきます。
これは鳥の動き、そして、蜂が舞う動きでしょうか。
演者は、感情表現以外にも、鳥や蛇、魚の動きや、蜂や蝶などが舞う動きなどを表現していきます。
そうこうしているうちに、男形演者の着付けが完了したようです。
派手な衣装の男形演者の登場!
派手な衣装の男形演者の登場!
派手な衣装の男形演者がステージに登場しました!
演目はたぶん「ラーマーヤナ」か「マハーバーラタ」の一節。
かつては、夜通し行われたそうですが、現在では観光客用に物語の一部分のみを演じています。
女形演者の思わせぶりな表情と仕草が印象的
足首には鈴が付いていてシャンシャン鳴ります。
男形演者の動きは、様式的な所作がメインな感じ
演目は「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」がメイン
男形演者は、衣装は派手でインパクトがあるのですが、その所作は様式的な動きがメインな感じで、動き自体は女形演者の方が面白いです。
美女が王子にその美貌を使って取り入っている様子でしょうか。
女形演者の思わせぶりな表情と仕草が印象的です。
終了後にポーズして撮影させてくれます。
演技は30分ほどで終了し、終了後は撮影をさせてくれました。
ダンサーの前に観光客たちが群がります!
これは何の舞踊でしょうか?
これは、モヒニアッタム?
「カタカリ」が終わった後、カタカリ鑑賞のみのお客さんは退場し、次のプログラムが開始されます。
道化師的な衣装を着た男性の舞踊と、「モヒニアッタム」なのでしょうか。女性の舞踊がありましたが、こちらはあまりレベルが高いものと思えず、印象には残りませんでした。
ケララの伝統古武術「カラリパヤットゥ」の演武
棒を使った演武
最後に行われたのが、ケララ州の伝統古武術「カラリパヤットゥ(Kalaripayattu)」の演武です。
「カラリパヤットゥ」とは、19種類の蹴り技などの打撃技や、関節技、投げ技などの素手による格闘術。剣や盾、棒や鎖分銅など18種類の「アンガム・ウァイタニイ」と呼ばれる武器を使った武器術からなる古武術。
発祥は、古代のケララ一帯で発達したドラヴィダ武術と北から入って着たアーリア武術が合わさって作られたと考えられています。現在の形式は12世紀頃生まれたものであるとのこと。
「カラリパヤットゥ」は、格闘技の源流との呼び名も高く、達磨大師が中国に伝えたインド武術(後の少林拳)はこの「カラリパヤットゥ」であると考えられ、ムエタイやフランスのサバットにも影響を与えたと考えられています。
近代カラリパヤットゥの祖は、「C.V.ナラヤナン・ナイール」という人物。
イギリスによって禁止されていた「カラリパヤットゥ」を復興し、「CVNスタイル」と呼ばれる近代カラリパヤットゥを整備し、多くの弟子を育成したのだとのこと。
目にも留まらぬ棒さばき
こちらは槍を使った演武
短い棒を使った演武
ちなみに、この「カラリパヤットゥ」、「カタカリ」とも密接な関係があって、カタカリの最初の役者は「カラリパヤットゥ」の習得者であり、基本の型にも「カラリパヤットゥ」の影響が見られるのだとのこと。
また、「カラリパヤットゥ」は「ヨガ」や「アーユルヴェーダ」とも深い関係があるとのこと。
「カラリパヤットゥ」には、象やヘビ、孔雀やライオン、馬や猫などの「ヨガ」のようなポーズがあり、それらのポーズは、それぞれ、「アーユルヴェーダ」で言う「ドーシャ」と呼ばれる体を支配する3つの要素「ヴァーダ」「ピッタ」「カパ」と深く結びついているのだそうです。
素手による固め技
槍を二本使った演武
「カラリパヤットゥ」の演武、なかなか見ごたえありました!
棒や槍を使った演武は、目にも留まらぬ武器捌きで、格闘術もなかなか興味深かったです。
だけど、「カラリパヤットゥ」と言えば、足を高く蹴り上げる蹴り技が有名(80年代に日本でもアリナミンのCMで紹介されていました)。
蹴り技が見られなかったのが、ちょっと残念です。
ケララ州に伝わる古典舞踊劇「カタカリ」と、ケララ州の伝統古武術「カラリパヤットゥ」をまとめて観れる「グリニクス・ヴィレッジ(Greenix Village)」
立地やアクセスも良く、数ある「カタカリ」のシアターの中でもおすすめの場所のうちのひとつです。
◉ Greenix Village
- 住所:C.C. 2/481, Calvathy Rd, Calvathy, Aspinwall Junction, Kunnumupuram, Fort Kochi, Kochi, Kerala 682001
- 電話:+91 484 221 7000
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