アフリカ東海岸、タンザニアの沖合いのインド洋上にある島「ザンジバル(Zanzibar:زنجبار)」
古くからインド洋交易の要衝であったこの島は、アフリカやアラブ、インドなど様々な人々が流入し、独特の文化が形作られてきました。
音楽においても、太鼓のリズムを中心とした東アフリカの伝統音楽と、中立音程を使ったメロディーが特徴のアラブ音楽が融合した、ザンジバル独自の音楽が生み出されています。
今回、そんなザンジバル音楽を現地で鑑賞することができたのでご紹介します♪
ライブコンサートが行われたのは、旧市街「ストーンタウン」にある音楽学校「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー(Dhow Countries Music Academy)」
鑑賞したのは2グループ。アフリカンドラム「ンゴマ(Ngoma)」のグループと、アラブ音楽の影響を感じさせる「Taarab(タアラブ)」のグループの2つです★
「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー(Dhow Countries Music Academy)」
「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー(Dhow Countries Music Academy)」
ライブ・コンサートが行われている「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー(Dhow Countries Music Academy)」です。
2002年に設立されたこのアカデミーは、ザンジバルの伝統的な音楽をはじめ、東アフリカ海岸線地帯、アラビア半島、ペルシャ湾、インドなどの“Dhow Country”と呼ばれる地域の音楽を教えている学校で、演奏家を育てることにとどまらず、Dhow文化を伝える専門家も生み出しているのだそう。
アカデミーでは週3回、水・木・日曜日の夜20時から行われており、伝統楽器やダンスの指導を短時間から気軽に受けることができるのだとのこと。
「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー」の建物は、フォロダニ公園の北東、海沿いのミジンガニ・ロードに面した、旧オールド・カスタマー・ハウスの建物内にあります。
コンサートの看板
コンサートは水・木・日
建物の中に入ると、上に上る階段の前に、コンサートの案内看板が立てられていました。
階段を登り、上階へ向かいます。
上階(確か3階)に上がると、チケット販売の受付があり、ここでチケット購入。
料金は、10,000シリング(483円)でした。受付ではCDなども販売されています。
コンサート会場は、50個ほどの椅子が並べられた小さな会場。
前方にステージがあり、何台かのアフリカンドラムが並べられていました。
ザンジバル・ンゴマのドラミング by Kirundo Group
キルンド・グループ(ザンジバル・ンゴマ)
コンサートには、2日連続で観に行ったのですが、初日(水曜日)に登場したのは、ドラムのリズムを中心としたタンザニア伝統音楽「ンゴマ(Ngoma)」を演奏する「キルンド・グループ(Kirundo Group)」というグループでした♪
メンバーたちがおもむろにステージに着席し、簡単な挨拶の後、さっそく演奏開始!
オープニングは、ゆったりとしたギターのメロディラインで始まりました♪
ステージの中央にいるのは、Mzee Kheriというドラマー。タンザニアの伝統楽器である「ンゴマ(Ngoma)」という太鼓を叩いています。
Mzee Kheriは、ザンジバルの伝説的なドラマーであり、当アカデミーの教師でもある人物で、この「キルンド・グループ」は、彼が中心になって作られたグループなのだとか。
Mzee Kheriの他のメンバーは、Lukoa、Nyemo、Omarという3人。
なお、「ンゴマ(Ngoma)」とは、タンザニア音楽で使われる伝統的な太鼓のことですが、広義では音楽、舞踊、祭りのことも意味しているのだそう。
お次の曲は、タンザニアの親指ピアノ「カリンバ」をメインとした一曲。
カリンバの心地よい金属的な調べと、ヴォーカルの幅広い音域、細かく刻まれたリズムが“アフリカ”を感じさせてくれます。
タンザニアには数百にも及ぶ種類の「ンゴマ」があるそうですが、彼らはそのうちの25の部族のリズムを演奏することができるのだとか。
テンポの早いリズミカルな曲が始まりました♪
曲はそれぞれ使われる楽器もリズムもメロディも違いますが、いずれの曲も中心のMzee Kheriが叩く「ンゴマ」のリズムがベースになっていました。
まさに、アフリカ!って感じの体を直に震わせるようなリズム。精緻で様式的なインド音楽の打楽器とはまた違った魅力があります!
Mzee Kheriの叩く「ンゴマ」、見事なグルーブ感です。
会場にいた観衆たちは皆、自然と体を揺すぶっておりました♪
そして、コンサートは佳境。
シンプルに繰り返されるリズムに合わせ、ミュージシャンたちがおもむろに踊り始めました!
体を揺さぶるその動きと手拍子に引き込まれ、観衆たちも次々と立ち上がり、彼らと同じように体を揺すぶって手を叩き始めます。
もちろん、自分も!
「ンゴマ」のグルーヴィーなリズムに乗せて、ミュージシャンや会場にいた観客たちと一緒に手を叩きながら体を揺すぶります。
体の芯から熱くなるような一体感。最高です!
タンザニア伝統のリズム「ンゴマ」を心底堪能いたしました〜♪
ザンジバル音楽「Taarab(タアラブ)」
トラディショナル・タアラブ・オーケストラ
二日目(木曜日)に鑑賞したのは、アラブ音楽をベースに、地元東アフリカの音楽、インドの音楽などが融合し、スワヒリ語の歌詞で歌われるザンジバル独自の音楽「タアラブ(Taarab)」です。
演奏するミュージシャンは9名。プログラムにクレジットが特になかったので、当アカデミーの先生と生徒さんである様子。
客席は、前日の「ンゴマ」の時より埋まっていて、ツアーの団体さんが前方の客席を予約しているようでした。
「タアラブ」の回の時は、早めに会場に行った方が良さそうです。
さっそく始まった「タアラブ」の演奏。
ウードやカーヌーン、ハルモニウムなどのアラブ風でエキゾチックな調べが耳に心地いい★
スワヒリ語で歌われる女性歌手の歌声もGoodです!
「タアラブ」の起源は19世紀末。当時ザンジバルを支配していたザンジバル・スルターン国の「バルガッシュ・ビン・サイード」は、エジプトのカイロから音楽家を招聘し、ザンジバル独自の楽団の育成を始めたのが始まりです。
1905年にはザンジバル初の楽団「ナディ・アフワン・アル・サファー」が誕生。
楽団の音楽は、エジプトのアラブ音楽をベースに、スワヒリ語の歌詞と東アフリカのビートが融合したザンジバル独自の音楽であったとのこと。
誕生当初、宮廷音楽であった「タアラブ」ですが、20世紀初頭に、農村部出身の女性歌手「シティ・ビンティ・サアド」の活躍によって大衆音楽化し、東アフリカ沿岸のスワヒリ文化圏の人々に広く親しまれるようになりました。
アフリカンの女性シンガーの柔らかで丸みのある歌声がなかなか魅力的。アラブの音楽とはまた違った印象を感じさせます♪
「タアラブ」という言葉は、アラビア語の動詞“tariba”から派生した言葉で、“心が動く”という意味であり、「タアラブ」の歌詞の内容は愛や人間関係が多いのだとのこと。
こちらは男性シンガーによる歌声。
女性シンガーとはまた違った、コブシを効かせた渋く味のある歌声。
聞き惚れてしまいます♪
「タアラブ」で使われる楽器は、アラブのリュートである「ウード」、台形の箱の上に72本の弦が張り巡らされた撥弦楽器「カーヌーン」、アラブのフルート「ネイ」、ハルモニウム、アラブ風の太鼓「ダルブッカ」、バイオリン、ダブルベースなど。
アラブ古典音楽とよく似た構成です。
アラブ音楽、アフリカ音楽、そして、インド音楽の影響も感じさせるザンジバルの音楽「タアラブ」
古くからインド洋交易で繁栄してきたザンジバル島を象徴するような音楽です。
様々な音楽文化の混じり合ったエキゾチックな音色は、素晴らしいのひと言!
堪能させていただきました〜♪
コンサート会場から夜の街並みを眺める
「タアラブ」や「ンゴマ」を始めとしたザンジバルの伝統音楽を鑑賞できる「ダウ・カントリーズ・ミュージック・アカデミー(Dhow Countries Music Academy)」
ザンジバル独特の伝統音楽を心ゆくまで堪能することができます♪
ザンジバルを訪問する機会があったら、ぜひ、行ってみることをオススメします。
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