聖パトリック大聖堂からリフィー川へと歩いて突き当りを左折、川沿いを西へ少し進んだ所にヨーロッパでも最も古いと言われるパブがあります。
店の名前は「ザ・ブレイズン・ヘッド」(The Brazen Head)、青銅の生首という意味です。
なんと1198年創業というのだから驚きです。
ヨーロッパで最も古いパブ「ザ・ブレイズン・ヘッド」(The Brazen Head)
「ザ・ブレイズン・ヘッド」のカウンター
「ザ・ブレイズン・ヘッド」の店内の壁には、文字通り青銅の生首が浮き彫りになって飾られています!
日本に「居酒屋、生首」なんて店があったら、かなりびっくりするだろうなと思います。
近くの食堂で軽い夕食を済ませた後、夜9時頃、「ザ・ブレイズン・ヘッド」の中に入っていきました。
ギネス・イズ・グッド・フォー・ユー
さほど広くない店内は混み合っていました。
タバコの煙と人々のざわめき、パブらしい猥雑とした空気が心を躍らせます。
とりあえずカウンター席に腰掛け、ギネスをワンパイント注文しました。
さっそくお兄ちゃんがギネスをボリュームのあるグラスに注いでくれます。
深みを帯びた黒褐色に輝く液体と、その上に乗っかるきめの細かいクリーム状の泡の層のコントラストが鮮やかです。
ダン!とお兄ちゃんがグラスを勢いよくテーブルの上に置きました!
ぐびぐびと一気に喉の奥にギネスを流し込みます。
極上の瞬間です!
濃厚なギネスを味わいながら、人々が話すアイリッシュ英語を音楽のように聴きます。
すると、奥の通路からギターやドラムが奏でる本物の音楽が聴こえてきました。
私はギネスのグラスを掴み、通路の奥へと歩いていきました。
音楽、歌、踊り。アイリッシュパブでライブ演奏を堪能
ブレイズンヘッドでの演奏
通路の奥はライブスペースとなっていました。
狭い室内の一角にギターやベース、ドラムの五人組のおやじバンドがいます。
それを大勢の人々がギネスやアイリッシュウイスキーを片手に取り囲んでいました。
演奏が始まりました!
カントリー風、ビートルズ風。そして、曲はアイリッシュ・トラディショナルへと変わりました。
ノリのいいリズムに釣られ人々が踊りだします。
ウイスキーをちびちびと飲みながら手拍子を叩くおじさん、満面の笑みを湛えながら軽快に腰を揺らす若い女性。
男性も女性も、子供も老人も、みんな飛び跳ねながら踊っていました!
テンプルバー界隈
ダブリンにはパブが至る所にあります。
夜、テンプルバー界隈を歩いていると、明かりの付いたそこかしこの店の奥から音楽が漏れ聴こえてきます。
曇り空の多い肌寒いダブリン。強風の吹きすさぶ荒涼としたアイルランドの島。長い間イギリスにより支配されてきた鬱憤。
そんなものを吹き飛ばすかのように、彼らは飲み踊るのです。
日中の陰鬱さはどこへやら。夜のダブリンは日本の金曜日以上の盛り上がりを見せていました。
その様子を眺めながら私は思っていました。
過酷な運命に苛まれた人々は、概して美しい音楽を作り、陽気に騒ぐものなのかもしれないな、と。
例えばアメリカに連れてこられた黒人が見事なジャズやブルースを作ったり、南米のインディオたちが爆発するようなカーニバルに熱狂したりするように・・・。
ダブリンのパブでの酒と音楽の熱狂。そこには、アイルランドという国の苦難の歴史と、アイルランド人の民族性が表れているような気がしました。
旅行時期:2003年4月
「ザ・ブレイズン・ヘッド」(The Brazen Head)の情報
- 住所:20 Lower Bridge St, Usher’s Quay, Dublin, D08 WC64
- 営業時間:12:00~21:30
- 定休日:無休
- HP:https://brazenhead.com/
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