ダブリンの北方約55キロ、ボイン川の中流域から下流域にかけて広がる一帯に「ブルー・ナ・ボーニャ(ボインの宮殿)」という先史時代の遺跡群があります。
ここは「ボイン渓谷の遺跡群」として世界遺産にも登録されています。
ボイン渓谷の遺跡群を巡る
「ボイン渓谷の遺跡群」(Google Earth)
ニューグレンジ遺跡(Google Earth)
「ノウス」(Google Earth)
「ブルー・ナ・ボーニャ」の面積は、およそ780ha。
エリア内には40の羨道墳がありますが、その中で最も重要な遺跡が、「ニューグレンジ」「ノウス」「ドウス」と呼ばれる墳墓です。
遺跡はガイドツアーによる訪問しか許されておらず、ツアーでは、「ニューグレンジ」と「ノウス」を訪れます。
草原の丘に佇む「ニューグレンジ」
草原の丘に巨大な古墳があります。
あれが「ニューグレンジ」、ボイン渓谷にある最大の羨道墳です。
ニューグレンジはケルト時代以前、紀元前3200年頃(新石器時代後期)に建設されたといわれています。
これはエジプトのピラミッドよりも昔です。
「ニューグレンジ」の入り口
古墳の直径は約100メートル
遺跡の周りには12の立石が取り囲んでいます
古墳の直径は約100メートル。運ばれた石はおよそ20万トン。
下部は白い石壁で覆われています。
これは修復されたものです。
遺跡の周りには12の立石が取り囲んでいます(もともとは32個あったそうです)。
「ニューグレンジ」遺跡
中に入ると埋葬室までは真っ直ぐな通路で結ばれています。
これは、「パッセージ・グレイヴ」と呼ばれる構造だそうで、ガイドさんの話では冬至前後の数日間、太陽光線が入口の小さな窓から奥の埋葬室まで届くように設計されているのだそうです。
これは、死者を埋葬するということにおいて、太陽が信仰の対象になっていたということを表しています。
古代アイルランドでは、死者は火葬され、遺骨と灰が「ドルメン」と呼ばれる巨石の下に埋葬されていたそうです。
「ノウス」の遺跡
こんもりとした「ノウス」
「ノウス」の礎石
「ノウス」です。
ガイドさんの話では、「ニューグレンジ」と「ドウス」は冬至の太陽に対応しているのに対し、「ノウス」は春分の太陽に対応しているのだそうです。
渦巻き文様とストーンサークル
巨石に描かれた渦巻き文様をはじめとしたいろいろな文様
見事な渦巻き文様
渦巻き文様がたくさん
石には必ず渦巻き文様があります。
こちらにも渦巻き文様
遺跡の入り口の巨石や、通路の壁面、天井には見事な渦巻き文様が描かれています。
この渦巻き文様が何を表すのかもわかっていないそうですが、太陽や雷や火など信仰の対象になっていたものを象ったものであるとか、いろいろな解読がなされているそうです。
渦巻き文様の起源については、蛇のとぐろ、または、水の渦巻きであるというのが有力な説であるようです。
いったい何を意味しているのでしょう。
ストーンサークル
石造りの建物(たぶん、これは後世のもの)
アイルランドには、イギリスのストーンヘンジに似た「ストーンサークル」や、石の支柱の上に水平な巨石を載せた「ドルメン」など、先史時代の巨石建造物がいくつも残っています。
ただし、これらの遺跡群を造った民族は文字を持たなかったため、詳しいことはまだほとんどわかっていないそうです。
この文明は、「ギリシャ・ローマ」「キリスト教」「ゲルマン文化」などと並ぶ、ヨーロッパの源流の1つであることは間違いないのでしょう。
それにしても、この「ニューグレンジ」のある風景、とってもシュールな風景でした!
遥か古代の人々はもしかしたら我々が想像もつかないような高度な技術を持っていたのかもしれません。
石と緑が織り成す抽象的な遺跡群、ロマンを掻き立てられます。
ボイン渓谷の眺め
旅行時期:2003年4月
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