バガン遺跡は、エーヤワディー(イワラジ)川中流域、その東岸の平野部一帯に広がる仏教遺跡群です。
40㎢のエリアにはおよそ3000といわれる仏塔や寺院が点在しており、カンボジアのアンコールワットやインドネシアのボロブドゥール遺跡とともに、世界三大仏教遺跡と称されています。
この広大な遺跡群を見て回るのに最もふさわしい手段が馬車です。馬車にはレンタサイクルと違って日差しを遮る屋根がありますし、タクシーと違って風情があります。
私は、昨日サンセットを見る時に使ったおじさんの馬車を一日チャーターすることにしました(25000K:2500円)。
日の出から日没まで丸一日のお付き合いです。
名前のわからない寺院で見た日の出
おじさんとは、日の出前にホテルの前で待ち合わせをしました。
「日の出を見たい」と言うと、よく見える寺院があるというので連れて行ってもらうことに。
その寺院はガイドブックにも載っていない小さな寺院(名前はわかりません)でしたが、人も少なく静かに日の出を見ることができました。
写真が、その名前のわからない寺院です。
静かな寺院。地平線から太陽が昇ってきて、平原を徐々に明るく照らし出していきます。
至る所から聴こえてくる鳥の鳴き声と虫の声。なかなか賑やかなのですが、人の声や車や街の機械音などが聴こえないだけで、静謐な感じがしてくるから不思議です。
日の出を見た寺院の姿です。
バガンに点在する仏塔や寺院は、そのほとんどが11世紀から13世紀にかけて建てられたもの。
当時、バガンはビルマ初の統一王朝である「パガン朝」の都として栄えていました。
パガン朝の創始者であるアノーヤター王は、上座部仏教の国教化を進め、バガンは仏教研究の国際的な中心地となり、カンボジアやタイ、スリランカなど諸外国の多くの仏僧や学生が訪れたそうです。
寺院に祀られていた仏像です。
どの仏像の顔も個性的。タイやカンボジアなど、他の国の仏像はたいていどれも似たような顔をしていることが多いのですが、ミャンマーの仏像はそれぞれ特徴のある顔立ちをしています。
どれも、何だか親しみの持てるお顔です。
日の出を見終わった後、一度ホテルへと戻り、朝食を食べました。
その後、再びおじさんの馬車でバガン遺跡巡りを再開致しました。
ティーローミィンロー寺院
こちらは、「ティーローミィンロー寺院」
1215年に建てられた寺院で、パガン王ナンダウンミャーが王位継承者に選ばれたことを記念して建てられた寺院だそうです。
父王が5人の王子の中から後継者を選ぶ際に、傘が倒れた方角に座っていた王子を選んだとされ、その選ばれた王子がナンダウンミャーであるとのこと。
このエピソードから、ナンダウンミャー王は、別名ティーローミィンロー(傘の王)と呼ばれていたのだとか。
かなり大きな寺院で、参道にはたくさんの土産物屋が並んでいました。
ティーローミィンロー寺院の内部には黄金に塗られた仏像が納められています。
それぞれ独特の風貌をしている仏像。参拝する人が絶えません。
巨大なティーローミィンロー寺院のシルエット。
バガンを代表する寺院のひとつです。
スラマニ寺院
こちらは、「スラマニ寺院」
1183年にナラパティスィードゥー王によって建てられました。
ピラミッド型の端正な寺院。内部は2層構造になっていて1階には東西南北を向いた4体の仏像があります。
どこの寺院でも、地元の人が参拝している姿があります。
ここバガンの寺院は遺跡ではなく、生きた寺院です。
仏像の前は座れるようになっている所が結構あります。
寺院の中は日差しを遮って結構涼しいので、地元の人たちも参拝後はこのように休憩していたりしています。
スラマニ寺院は、保存状態の良いフレスコ画があることでも知られています。
仏像や当時の人々、象などが描かれており、当時の生活の様子を知ることができます。
鎮座する仏像、地べたに座り遊ぶ子供、昼寝をする犬。
みなさん長閑に過ごすまったり空間。
スラマニ寺院の前の参道にも土産物屋がたくさん並んでいました。
ツアーの団体客が来ない時は、とても静かです。
スラマニ寺院の入り口には、牛とヤギがたくさんいました。
牛・ヤギ飼いの方が放牧させているようです。
ダマヤンヂー寺院
スラマニ寺院の向かいにあるこの建物は、「ダマヤンヂー寺院」
12世紀中頃に、ナラトゥ王によって建てられた寺院ですが、建設途中にナラトゥ王は暗殺されてしまったため、現在でもこの寺院は未完成の状態だそうです。
本尊の仏像だけは納められていますが、その他の仏像は入るはずだった壁の窪みがあるだけで、空のままです。
さて、たくさんの寺院を巡っているうちに、そろそろお昼時になってきました。
おじさんによると、次に訪れる「アーナンダ寺院」でランチを食べるとのこと。
馬車に乗って、アーナンダ寺院へと向かいます。
アーナンダ寺院
「アーナンダ寺院」です。
「アーナンダ寺院」は1091年、第3代のチャンスィッター王によって建てられた寺院で、バガンで最も大きく美しい寺院だといわれています。
一辺63mの正方形のかたちをしていて、4つの入り口があり、中央に高さ50mの塔が立っています。寺院の壁は白い色ですが、塔は黄金色に塗られています。
寺院の前は土産物屋とか食堂とか、いろいろあって、多くの観光客と地元のひとたちで賑わっていました。
ここでランチです♪
ランチは、ミャンマーの一般的な食事であるカレー(ミャンマーでは「ヒン」(ဟင်း)と呼ばれます)を食べましたー。
「ヒン」は、玉ねぎをベースに、肉や魚、野菜を煮込んだ料理です。多量の油を使い、青唐辛子やスパイスを多用しないのが特徴。
辛さはなく油も全て食べます。見た目は大量の辛くないラー油の上に具材が浮かんでいるようなイメージ。
「ヒン」を注文すると、付け合せの生野菜、スープ、副菜などがいくつか付いてきます。「ヒン」は使う具材は様々で、牛肉、豚肉、チキン、マトン、エビ、魚、魚団子、トマトなどがあります。
ご飯は長粒のパラパラしたお米、インディカ米。ランチは4000K(400円)でした。
食後、「アーナンダ寺院」を見て回ります。
本堂の中央には、高さ9.5mの黄金の仏像が4体、それぞれ四方を向いて立っています。
これらは「過去四仏」です。
「過去四仏」とは、「釈迦」とそれ以前のブッダ、「迦葉(kāśyapa)」「倶那含牟尼(Kanakamuni)」「倶留孫(Krakhuccanda)」のことで、仏教では古くから(釈迦存命の頃から)この四仏を信仰する考え方があったそうです。
この「過去四仏」が納められた空間は、かなり荘厳な雰囲気で、たくさんの参拝客が真剣にお祈りを捧げていました。
さて、次の寺院へと向かいましょう〜♪
馬車のおじさんもゆっくり休んだせいか、手綱捌きも軽やか。
灼熱の陽光が降り注ぐ広大な原野をパカパカと馬車で進んでいきます。
風情あります♪
たまに別の馬車とすれ違ったり、ツアー客のバスやタクシーが通ったり、自転車で回っている欧米人のツワモノもおりました。
タビィニュ寺院
「タビィニュ寺院」です。
1144年、第四代のアラウンスィードゥー王によって建てられた寺院で、バガンの寺院で最も高い寺院だそうです(高さは65m)。
「タビィニュ」とは、”全知者”を意味し、これはブッダを指しているのだとのこと。
寺院の1階には、インパクトのあるお顔をした黄金の仏像が鎮座していました!
ゴドーパリィン寺院
「ゴドーパリィン寺院」は、スラマニ寺院を建てたナラパティスィードゥー王が建設し、途中で亡くなったために息子のティーローミィンロー王によって完成された寺院です。1174〜1211年にかけて建てられました。
塔の高さは55m。バガンで二番目に高い寺院です。
「ゴドーパリィン寺院」に納められた仏像と、パーリ語の碑文です。
ブーパヤー・パヤー
「ブーパヤー・パヤー」は、 7〜8世紀頃にピュー族によって建てられたとされる小さな仏塔です。
エーヤワディー(イワラジ)川の川岸にあり、川の眺めが素晴らしいです。
この仏塔、起源は古いですが、かつての仏塔は1975年の大地震の時に崩壊してしまい、今あるものはその後再建されたものなのだそうです。
仏塔の敷地はテラスになっていて、多くの人たちが広大な川の風景を眺めながら涼んでいました。
気持ちのいい空間です。
縁起物のダルマ「ピッタインダウン」もおりました!
「ブーパヤー・パヤー」の下には船着場があります。
ここでエーヤワディー川のボートトリップを頼むこともできます。
今回は時間がなかったので頼みませんでしたが、ボートで川をゆらゆら進むのも、なかなか気持ち良さそうです。
マハーボディー・パヤー
「マハーボディー・パヤー」は、1215年にナンダウンミャー王の治世に建てられた仏塔です。
その姿は、インドにある仏教の聖地、ブッダガヤのマハーボディー寺院の姿を模しています。
「マハーボディー・パヤー」の前で、「タナカ」を売るお姉さんに声を掛けられました。
「タナカ」とは、タナカという木から作られる天然の化粧品。お姉さんがほっぺたに塗っているのがそれです。
化粧としてだけでなく日焼け止めの意味もあるそうです。
ミャンマーの女性は、子供から若い女の子、おばさんからおばあさんまで、みんなこの「タナカ」をほっぺたに塗っていました!
せっかくだから、ほっぺたにちょこっと塗ってもらい、「タナカ」も1つ購入(1500K:150円)。
お姉さんによると、「似合う〜!」とのこと。
バガンの子供たちです!
馬車のおじさんに連れていかれたお土産屋の前にいました。
Iphonでパチリ!と写真を撮り、それを子供たちに見せると大喜び!
特に右下の子の表情が大受けでした(笑)
夕陽(サンセット・ビュー)
そろそろ日が傾き始め、日没が近づいてきました。
サンセットに間に合うよう、おじさんと急いでビューポイントへと向かいます。
今日のサンセットビューポイントは、スラマニ寺院近くの寺院(ガイドブックには載っていない寺院)です。
到着し、寺院の階段を登ります。
結構傾斜が急で、手すりも何もないため怖いです。
上に登ると、すでに幾人かの外国人観光客と、彼ら目当てのポストカードや布を売る売り子さんたちがおりました。
写真は、布を売る売り子の女の子。彼女と夕陽を眺めながらいろいろお話ししました。
日が沈んでいき、辺りは徐々に暗闇に包まれていきます。
あいにくこの日は、雲が多く、綺麗な夕陽を見ることができませんでした。
さあ、足元が闇でおぼつかなくならないうちに降りましょう。
そろそろお腹も空いてきました。ニャウンウーの街に戻ってディナーです♪
闇の中、パカパカと馬車に揺られながら、バガン遺跡巡りの充実感を味わっていました!
旅行時期:2012年8月
コメント