パキスタンについて
パキスタンは、東にインド、南西にイラン、西にアフガニスタン、北は中国と国境を接する国。1947年までは英領インドの一部であり、特に、人口の大多数を占める東部はインドと共通の文化を持っています。
宗教はイスラム教徒が多数派で国民の97%。人口は2億2,500万人を超え、世界で5番目に人口が多い国です。
パキスタンの地図
日本の2倍の面積を持つパキスタン。地域によって文化に大きな違いがあります。
大まかに、かつてムガル帝国の支配下にあったインドの影響の強い東側(最大の都市カラチを州都とするシンド州、第二の都市ラホールやイスラマバード首都圏(連邦直轄領)を内包するパンジャーブ州)と、イランや中央アジアの影響の強い西側(イランに面した西部のバローチスタン州、部族社会が色濃く残るカイバル・パクトゥンクワ州、カラコルム山脈を擁する北部山岳地帯ギルギット・バルティスタン州、インドとの国境紛争の舞台となっているアザド・カシミール)に分かれ、国民の7割は東側のシンド州とパンジャーブ州に住んでいます。
当然のことながら、日本に来るパキスタン人はシンド州やパンジャーブ州出身者が多く、日本にあるパキスタン料理店も、両州のお料理(インドの影響の強い料理)を提供するお店が大多数です。
パキスタン料理とは?
パキスタンの料理はどんなものなのか。謎なところが多いので、地域ごとにちょこっと調べてみました(注:内容が間違っているものもあるかも知れません)。
「パンジャーブ料理」:パキスタンのパンジャーブ州はインドのパンジャーブ州と元々は一緒だったので、お料理も共通しているものが多いようです。パンジャーブのお料理の特徴はバターやクリーム、ヨーグルト、パニール(チーズ)など乳製品を多用し、スパイスをたっぷり使った多種多様なお料理があること。特にタンドール窯で作られる料理(タンドリーチキンなど)は、パンジャーブが本場です。
イスラム教徒(ベジタリアンではない)の多いパキスタンのパンジャーブ州。注目すべきはお肉を使ったお料理。「ブナゴーシュト」「ニハリ」「ハリーム」「パヤ」「クンナゴーシュト」など。
「シンド料理」:最大の都市カラチのあるシンド州。カラチの2,200万の人口のうち、6割がインドのイスラム教徒、アフガンからのパシュトゥーン人など、20世紀半ば以降に移民してきた人々なのだそうで、様々な食文化がミックスされているのだとのこと。
シンド料理として知られているのは、レンズ豆やほうれん草などで作られるベジカレー「サイバジ」、ひよこ豆の粉でとろみをつけた野菜カレー「シンディ・カディ」、素材にヨーグルトが使われる「シンディー・ビリヤニ」など。
「バローチ料理」:バローチスタンの「バローチ料理」は、アフガニスタンの影響を受けていて、肉は主に羊肉が多用されます。お料理としては、スパイスでマリネした丸ごとのラムの中にライスを詰め、オーブンで焼いた「カディ・ケバブ」、塩でマリネした丸ごとラムを串に刺して炭火焼きした「サジ」、ラムとインゲン豆、ひよこ豆、ジャガイモを長時間弱火で煮込んで作るクルド人由来の料理「アブゴーシュト」、バローチスタンで食べられる丸いパン「カーク」など。
「パシュトゥーン料理」:カイバル・パクトゥンクワ州の「パシュトゥーン料理」は、アフガニスタンとパキスタンに多く居住するパシュトゥーン人の料理で、米料理やケバブなどが有名で、ラム肉が多く使われるとのこと。お料理としては、羊肉、レーズン、にんじんを混ぜた蒸しご飯「カブリ・プラオ」、羊や牛のミンチ肉に様々なスパイスを加えて焼いたハンバーグ「チャプリ・ケバブ」が有名。中華鍋のような鍋で調理される蒸し煮っぽい料理「カラヒ」や、中央アジアでもよく食べられている「チョルバ」というスープ、「マントゥ」という餃子、串焼き肉の「シーク・カバブ」などもパシュトゥーンの料理のひとつであるとのこと。
「カシミール料理」:カシミール地方では米が主食になっています。肉の消費量が多く、スパイスとして多く使われるのは刺激の少ないカシミーリチリ。お料理としては、骨付きマトンの煮込み「ローガンジョシュ」や肉団子のヨーグルトグレイビー煮「グシュタバ」、ヨーグルト入りの煮込みカレー「ヤクニ」など。
パキスタン料理おすすめメニュー
多種多様なお料理があるパキスタン料理ですが、日本のパキスタン料理店でいただける、パキスタンらしい4品をご紹介します。
カラヒ
「カラヒ」とは、パキスタンやインド北西部のパンジャブ地方で食べられるお料理で、お肉をトマトや生姜、青唐辛子やたくさんのスパイスなどで蒸し煮にしたお料理です。
ちなみに、「カラヒ」の名前の由来は、調理する鍋からきているそう。写真の中華鍋に似た鍋容器、あれが「カラヒ」というそうです。
蒸し煮でソースが干上がるためスパイスの風味が凝縮されている感じがして、とっても美味♪
ニハリ
「ニハリ」は、羊や牛の脚の肉を骨髄と一緒に煮込んだシチュー。
18世紀のムガル帝国末期の時代に生まれたお料理で、現在ではインド北部やパキスタン、バングラデシュのイスラム教徒によく食べられており、特にパキスタンでは国民食とも呼ばれているのだそう。“ニハリ”は、ウルドゥー語で「朝」という意味があり、朝食に食べることが多いのだとか。
スープは少しとろみがあり、柔らかい肉と滲み出たコラーゲン質がたまりません!
ハリーム
「ハリーム」は、小麦、大麦、レンズ豆、牛肉(もしくは羊肉)をスパイスと一緒に7〜8時間煮込んで作るお料理です。パキスタンやバングラデシュ、インドのイスラム教徒の間でよく食べられているお料理で、朝食として食べられることが多いのだそう。
スープというよりはペースト状な感じ。牛肉や豆などが形がなくなるまで煮込まれていて、とにかく粘り気と牛肉の繊維質の感じが他にはない味わいです。
パヤ
「パヤ」とは、牛や羊、ヤギなどの足首や蹄の肉をその骨ごと様々なスパイスやハーブを使って煮込んだお料理。主に冬に食べられる料理であるとのこと。
「ニハリ」に似たお料理ですが、スパイスを多用するニハリと比べて、パヤは使われるスパイスが少なめでシンプルなのだとか。
ニハリに比べてマイルドな味わい。その分、マトンの臭みは強めです。
日本ではまだメジャーじゃないけど、インド料理とはまた違った魅力のある「パキスタン料理」。東京近辺(それ以外も)にあるおすすめのお店を10店舗ご紹介します★
『マルハバ』@池袋
池袋北口から徒歩6分ほどの場所にあるパキスタンレストラン『マルハバ』
このお店、20年以上前からあって、本格パキスタン料理店としては都内でもかなりの老舗の部類。イスラム教メインのパキスタンのお店ということで、お料理はハラルフード100%、アルコール類は宗教上の理由から一切置いていないそうです。
柔らかいチキンとスパイスが凝縮されたソースが最高に美味しい「チキンカラヒ」、スパイス感たっぷりのライスの中にマトンがゴロリと入った「マトンビリヤニ」。どちらも美味でした★
『ラヒ・パンジャービー・キッチン』@西荻窪
西荻窪にあるパキスタン料理のお店『ラヒ・パンジャービー・キッチン』
お店の名前にもある通り、『ラヒ・パンジャービー・キッチン』はパンジャーブ地方のお料理を提供するお店。
スパイスがっつりの「スパイシーな鳥皮」や「ラムチョップ」。チャナ豆とホールスパイスがゴロゴロ入った「チャナ(ひよこ豆)とチキンのカレー」。溶け込むまで煮込まれたビーフと濃厚な豆が食べ応え満点の「ハリーム」
パンジャーブのお味を満喫できるお店です★
『ハビビハラルレストラン』@西大島
江東区西大島にあるパキスタン料理店『ハビビハラルレストラン』
南アジア系の人が多く住む江東区で“パキスタンの味”を標榜する、パキスタン人をメインターゲットとしたお店です。
注文したのは、羊肉を使ったハンバーグ「チャプリカバーブ」と、骨付きマトンを煮込んだシチュー「ニハリ」。
コリアンダーシードががっつり効いた「チャプリカバーブ」、骨つきマトンの髄から滲み出たコラーゲンがたっぷりの「ニハリ」も抜群の美味しさでした★
『カラチの空』@八潮
埼玉県南東部にある八潮市。この町にはパキスタン人が多く在住し、パキスタンコミュニティが形作られています。その通称“ヤシオスタン”にあるパキスタン料理店が『カラチの空』です。
パキスタン風情満点の店内には在住パキスタン人がたくさん!さすが、ヤシオスタン!
注文したのは「チキンビリヤーニ」「ニーハリ」「ハリーム」。
「チキンビリヤーニ」は、ジューシーなチキンとお肉のお味が染み込んだお米、複雑なスパイスの味と香り。これぞ、ビリヤニという感じ。
スパイスが効いていて濃厚で深みのあるお味の「ニーハリ」は抜群の美味しさ!レモンの酸味が濃厚なスープにとっても合います♪牛肉の繊維がガッツリ入った粘り気の強い「ハリーム」はマイルドかつ濃厚で少し甘味があります。
お店の雰囲気も、現地仕様のお料理も、パキスタンを満喫できるお店です★
『ザイカ』@糀谷
京急空港線糀谷駅から徒歩1分、糀谷駅前を走る環八通り沿いにパキスタン家庭料理・ハラル料理のお店『ザイカ』はあります。
お店では、ニハリやカラヒなどのパキスタンのカレーを始め、ビリヤニ、ケバブも提供。本場の味を味わえるお店として、在住パキスタン人の評価も高いお店です。
注文した「チキンカラヒ」は、味はかなり濃い感じですが、鶏肉の旨味やトマトの酸味、生姜やスパイスの辛味や風味が凝縮されていて、美味しい♪
「ニハリ」は、スープは少しとろみがあり、濃厚で深みのあるお味。山羊肉も食べ応えがありながら柔らかく、臭みもスパイスで抑えられていて食べやすいです。
お料理のボリュームもあり、お値段もリーズナブル!パキスタン本場のお味を気軽に楽しむことができました★
『ナワブ・ダイニングカフェ』@西新宿
日本橋から移転し、西新宿に再オープンした『ナワブ・ダイニングカフェ』
本格的なパキスタン料理がいただけるお店として、パキスタン大使館御用達ともなっている有名店です。
注文したのは、「ニハリ(NIHARI)」と「アンダ・チャナ(ANDA CHANA)」
「ニハリ」は骨からするりと削ぎ取れるお肉はとろとろの柔らかさで、お肉の旨味がお口の中にとろけ出るような感じ。「アンダ・チャナ」も飽きの来ないスタンダードな美味しさ。まあるく大きくて焼き色が美しいタンドゥーリ・ロティも美味しい★
老舗のパキスタン料理名店のお味は、さすがに美味でした♪
『ハンディ(HANDI)レストラン』@野田
千葉県北西部は、中古車を仕入れ、海外に輸出するビジネスを行うパキスタン人が多く住んでおり、特に野田市は、中古車のオークション会場があるそうで、多くのパキスタン人中古車業者が集まってくるのだとか。
そんな、パキスタン人中古車業者御用達のお店が『ハンディ(HANDI)レストラン』です。
注文したのは、日替わりのパキスタンカレー(4〜5種)から選べる「スペシャルカレー」。カレーは、「ニハリ」と「ゴア・チキン・カレー」「ダール・マッシュ」をチョイスしました。
とろみと旨味がある骨付きマトンの髄が沁み込んだ「ニハリ」も、ポピーシードやカレーリーフの風味とトマトの酸味が特徴の「ゴア・チキン」も、豆そのものの食感と旨味がダイレクトに味わえる「ダール・マッシュ」も、どれも美味しい♪
なかなか他では見られないメニューが揃い、日替わりでバラエティに富んだパキスタンカレーをいただけるのがこのお店のすごいところです。
『アルカラム』@八潮
パキスタン人が集まる町“ヤシオスタン”にあるパキスタン料理店『アルカラム』
『カラチの空』と並ぶ、日本人向けアレンジをしない、本場パキスタン仕様のお料理をいただくことができるお店です。
注文した「マトン・アチャーリ」ですが、食べてみてびっくり!
どんな「アチャール」が入っているのかはわからないものの、アチャールのビビッドながら深みのある酸味がマトンのグレイビーに染み込んでいて、何とも複雑なお味。
独特の香ばしさと旨味のあるカロンジや、シャープな爽やかさの針生姜も、グレイビー全体にパンチを効かせています。骨付きマトンも、アチャールの酸味によって臭みは抑えられながらも適度なマトン感あり。
これは美味しい!
【閉店】『DERA D-43』@鶴見
鶴見駅から徒歩1分の場所にあるパキスタン料理のお店『DERA D-43』
お洒落でシックな雰囲気の神奈川では貴重な本格的なパキスタン料理をいただけるお店です。
注文したのは「ビーフハリーム」と「マトンパヤ」と「ダールカレー」
旨味たっぷりで濃厚な「ビーフハリーム」、骨付きマトンから滲み出たコラーゲンなマトン肉の食感と獣感がGoodな「マトンパヤ」、2種のお豆の旨味と青唐辛子の辛味が美味な「ダールカレー」。そして、3種のカレーと共にいただいた中央アジア風のさっくりとした食感の「ナン」が絶品でした♪
『カシミール』@富山・射水
富山県射水市。通称”イミズスタン”にあるパキスタン料理店『カシミール』
いただいた「ニハリ」は、ドカッと入った骨付きのマトンのスネ肉は、ほどよく柔らかく、コラーゲン質の食感もGood! 味付けはかなり濃いめで、様々なスパイスの風味がビシッと感じられる複雑で深みのあるお味。
「チキンカラヒ」は、蒸し煮でソースが干上がるためスパイスの風味が凝縮されていて、かなり濃いめのお味ですが、とっても美味♪ 「ニハリ」同様、様々なスパイスが使われていて複雑なお味ですが、ニハリよりも少し爽やかさが感じられる風味。
どちらも絶品! 堪らない美味しさです♪
パキスタン料理以外のおすすめまとめ






