「インド」(India:भारत)
4500年を超える歴史を持ち、12億人の人口を抱える大国「インド」。
スパイスを使った『料理』、輪廻や解脱の考えがある『哲学』や『宗教』、周期と即興で作られる『音楽』、歌と踊りがメインの『映画』、サリーやターバンなどの『ファッション』、どれも「インド」的!
独特で多様な世界「インド」の旅をご紹介します。
今回は、ハウラー行きの渡し舟です!
「コルカタ」ダルハウジー発ハウラー行きの舟の上。そこは、キャンディー売りと物乞いと靴磨き2人の働き場所です。
インド、コルカタ(Kolkata:কলকা)。
ダルハウジー発ハウラー行きの舟の上には、キャンディー売りと物乞い、そして、靴磨きが2人いました。
乗客たちが舟に乗り込むと、彼らはさっそく仕事を始めます。
商売道具を片手に、人々の間を歩き回るキャンディー売りと靴磨き。
足の悪い物乞いも、ずりずりと床を這いずりながら泣きそうな面持ちで人々に小銭を乞うています。
しかし・・・
今回は仕事にならなかったようです。
乗客たちはは誰も見向きもしません。
結局、彼らはひと通り船の中を巡った後、諦めたように仕事を切り上げました。
銀髪で太っちょの靴磨きが、どっかりと柱の脇に腰を降ろします。
「ふう~っ」と溜息を吐きました。
そこへ細身の天然パーマのキャンディー売りがやって来て隣に座りました。
そして、太っちょ靴磨きと何やら言葉を交わし始めます。
「今日はさっぱりだ。こんなんじゃ仕事にならないよ」
「こんな日もあるさ。気楽に行こうぜ・・・」
などとでも話しているのでしょうか。
私が掴まっている手すりの脇には、口髭を生やしたもう一人の靴磨きが膝を抱えるようにして座っています。
泥色の川と遠くに見えるハウラー橋の巨大なアーチ。
彼はそれを目を細めながらじっと眺め続けていました。
まったりとした船内。
生暖かい川の空気は眠気を誘います。
そのうち太っちょの靴磨きがうとうととし始めます。
こくり、こっくりと、頭を揺らす太っちょ・・・。
その様子を、物乞いが目ざとく見つけました!
物乞いは足を引きずりながら、そ~っと、そそ〜っと、太っちょに近づきます。
そして、太っちょの肩を「ガシッ」と掴むと・・・、
おもむろに前後に揺すぶったのです!
びっくりして目を覚ます太っちょ。
目をまん丸にして、あたりをキョロキョロと見回しています。
それを見ていたキャンディー売りと口髭の靴磨きは大笑い!
不愉快な顔を見せる太っちょ。
けれども、すぐに気を取り直し、
「このやろう!」
と、半笑いしながら物乞いの頭を軽く小突きました。
ボロ船はゆっくりと川を斜めに横断していきます。
短い航路。
ハウラーの船着場には、ほんの15分ほどで到着しました。
ぞろぞろと人々が降りていきます。
私もサリーを纏った女性や口髭を生やした男性たちに混じって船を降ります。
私たちが降り切るや否や、ダルハウジー行きの人々の群れがドッと船に乗り込んできます。
ボロ船は再び対岸へと向かいます。
ボロ船は泥色の流れの往復を延々と繰り返すのです。
桟橋から岸辺へと向かう途中、ふと、私は船の方を振り返ってみました。
ダルハウジー行きの客でごった返す舟の中に・・・、
いた!あの4人が!
2人の靴磨きとキャンディー売りと物乞いが、さっそく人々の間を歩き回っているのが見えました!
旅行時期:2003年9月