2016年5月21日(土)〜7月18日(月)、東京上野の「上野の森美術館」で開催されている『ブータン しあわせに生きるためのヒント』展に行ってきました〜★
この「ブータン展」、日本とブータンの外交関係樹立30周年記念事業で、日本初のブータンをテーマとした大型展覧会です!
”幸せの国”として有名な国、ブータン。
いったい、どんなところが”しあわせ”なのか、興味ありますよね。
展覧会では、色鮮やかなブータンの民族衣裳や装身具、伝統的な祭り「ツェチュ」の仮面、信仰の篤いブータン人の祈りの対象である仏像やタンカ、人々に敬愛されるブータン王室のコレクションなどを展示。
ブータンの暮らしと人々の思想に迫ります。
見るだけでしあわせになれるかも
ブータン展の看板
イラストがかわいい
チケット売り場もブータン風
ブータン展のチケット
上野の森美術館は、ブータン一色に彩られていました★
展覧会のアートディレクターは、人気イラストレーターの「松尾たいこ」さん。
ブータンを訪れて描きおろしたというかわいいイラストを中心に、展覧会ののぼりやポスター、チケット売り場やチケット、会場のパネルも”幸せの国”ブータンの雰囲気満点!
展覧会のキャッチコピーは、「見るだけでしあわせになれるかも」です。
見るだけでしあわせになれるかも
「ブータン」ってどんな国?
そもそも、「ブータン」ってどんな国なの?
ってことで、「ブータン」という国について、少しご紹介。
「ブータン」(Bhutan:འབྲུགཡུལ་་)は、北は中国、東西南はインドに囲まれた南アジアの内陸国です。
国土は日本の九州くらいの大きさで、北部にあるヒマラヤ南麓の7000m以上の高山から南部の標高100m程度の亜熱帯地域まで、気候は多様です。
民族はチベット系が8割、ネパール系が2割で、国教は仏教(ドゥク・カギュ派)、公用語はゾンカ語。人口は約75万人。
政体は、日本と同じで立憲君主制で、王室があります。
現国王の「ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク」国王と、美人の王妃「ジェツン・ペマ・ワンチュク」の華やかな結婚式や来日の様子、第一王子誕生のニュースなどは日本でも話題になりましたよね。
主要産業は農業で、国民の9割が農業に従事しているそうですが、最大の外貨獲得源はヒマラヤの水を利用した水力発電であるとのこと。
また、最近では観光にも力を入れていますが、文化や自然保護の観点から自由旅行は認められておらず、必ず旅行会社を通し、ガイドを同行させる必要があります。
「ブータン」といえば、有名なのが、”幸せの国”というキャッチフレーズ。
第4代の国王「ワンチェク」国王は、1972年に「国民総幸福量」(GNH)を提唱しました。
豊かさの指標をGDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)に置く先進国と一線を画し、「ブータン」は、国民の幸せの度合いを指標として掲げている国なんです。
話によると、2005年の国勢調査では、「幸せ」と回答した人が国民の約97%を占めたのだとか。
さてさて、そんな、ちょっと気になる国「ブータン」について、展覧会の展示を観ながら、その魅力に迫ってみましょう〜!
ブータンの祭ツェチュのお面がズラリ!
善なる道は安易い、悪しき道は常に険しい
まずは、イントロダクション「伝統的な祭りツェチュ」の展示から。
各展示の入り口には、松尾たいこさんのイラストをバックに、ブータンに残る言い伝え、諺などが書かれています。
イントロダクションの展示コーナーの言葉は、
善なる道は安易い、悪しき道は常に険しい
イントロダクション「伝統的な祭りツェチュ」の展示
色鮮やかなタペストリー
大胆な孔雀の図柄
イントロダクション「伝統的な祭りツェチュ」の展示コーナーです。
このコーナーでは、ブータンのお祭り「ツェチュ」に使われる仮面が展示され、お祭りの様子のビデオ映像が紹介されています。
「ツェチュ」は、太陰暦で月の10日目を祝う宗教的なお祭り。ブータンの寺院や僧院の中で行われます。「ツェチュ」とは、「10日」と言う意味だそうです。
また、「ツェチュ」は、ヒマラヤ一帯にチベット仏教を伝えた「グル・リンポチェ(パドマサンバヴァ)」の生誕を祝うという意味もあります。
グル・ツェンギェー・チャムの面
アツァラの面
「ツェチュ」では、「チャム」と呼ばれる仮面舞踏が行われます。
「チャム」では、色とりどりの鮮やかな衣装をまとい、様々な仮面を被った踊り手たちが舞踏を行います。
その舞踏には、すべて宗教的な意味があり、一挙手一投足まで決められているのだそうです。
グル・ツェンギェー・チャムの面
仏教の普及を阻止しようとする力を鎮圧したグル・リンポチェを讃える踊り。「グル・リンポチェ八変化の踊り」とも呼ばれる。布教を妨害する土地神を退散させ、様々な状況に合わせて時には穏和に、時には威嚇しながらヒマラヤ全域に仏教を広めたグル・リンポチェの8つの姿を表す。
ブータン展のパネル展示より
アツァラの面
古代インドの熟達したヨガ行者の様相を元に作られたキャラクターで、チャムに欠かせない存在。踊り手が舞う中、アツァラは観衆に混ざりおどけたり悪戯をしたりするが、その行動を通して、生と死を繰り返し終わることのない苦に満ちた輪廻の世界を理解するよう人々に促す。(後略)
ブータン展のパネル展示より
ギン・チャムの面
ツォリン・チャムの面
バルド・チャムの面
「チャム」は、仏法を誰にでもわかりやすく理解できるようにと、高僧たちが創り出した舞踏なのだとのこと。
普通の人々が仏教の経典を理解するのはなかなか難しいですよね。
人々は、「チャム」の踊りを通じて仏教の教えを学んでいくのです。
こういうところ、ヨーロッパのキリスト教会にあるステンドグラスと同じですね。
キリスト教会にあるステンドグラスは、文字を読めない人々のために、聖書の物語を絵にしたものなんです。
「チャム」には、21の種類があり、それぞれに異なるテーマがあるそうですが、どの踊りも、他人や生き物に愛や慈悲をもって接するという仏教の基本的な教えを視覚的に伝えるものであるのだとのこと。
映像でも「チャム」を紹介
展示コーナーでは、映像でも「チャム」の様子が紹介されていました。
ブータンの人々は、この踊りを見ることで、恩恵が受けられ、罪が洗い流されると考えているのだそうです。
ブータンのお祭り「ツェチュ」で行われる華やかでユニークな舞踏「チャム」
一度、見てみたいものです。
「チャム」の動画
素朴でシンプルな、ブータンの生活の品々
ゆっくり歩けば、ロバでもラサまでいける
次のコーナーは、第1章「ブータン的生活様式」(生活)のコーナー。
掲げられていた言葉は、
ゆっくり歩けば、ロバでもラサまでいける
首飾り「ジェル」
弁当箱とか水筒とか、日用品
女性用のアクセサリー
このコーナーでは、ブータンの人々の生活用具やアクセサリーなどが展示されていました。
素朴で実用的な日用品、工芸品としても見事な造形のものがたくさん。
刀も幾つか展示されていました。ブータンの刀は真っ直ぐの形をしているのが特徴的。
女性が身につける首飾りや胸飾りなどのアクセサリーは、トルコ石や珊瑚、金銀が使われていて、なかなか豪華です★
たとえ空を飛ぶ天の鳥であっても、食べるものは地上から得なければならない
たとえ空を飛ぶ天の鳥であっても、食べるものは地上から得なければならない
イラストにブータン料理の絵が描かれています。
ブータン料理の展示紹介はありませんでしたが、お料理もブータンは独特。
ブータン料理は辛いです!
お料理に「トウガラシ(エマ)」を調味料ではなく野菜として食べることが特徴で、あらゆる料理にトウガラシが入っているため、「世界一辛い料理」とも呼ばれています。
主食は赤米が中心で、チーズやバターなどの乳製品もよく使われます。
代表的なお料理は、トウガラシとチーズの煮込み料理「エマダツィ」
ブータン料理は都内でも食べることができます↓
カラフルで繊細な「織り」が見事!ブータンの布と衣装
お次は、「ブータン的生活様式」(衣装)のコーナー。
このコーナーでは、ブータンの高度な織物文化と、ブータンの人々が日常的に着ている衣装が展示されていました。
入り口の言葉は、
口のただれは舌が癒す。家族のけんかは、家でおさまる
ブータンの織物地図です。
九州ほどの狭い国土ながら、地域によって様々な織物の柄があることがわかります。
ブータンは民族衣装が現役の国。
ブータンでは、公の場での民族衣装の着用が義務付けられているのだそうです。
「公の場」は結構厳格で、自宅以外の場所と捉えられているのだとのこと。
そのため、ブータンに行くと、大多数の人が民族衣装を着ている様子を見ることができるそうです。
展示コーナーでは、様々な文様の繊細でカラフルな布が飾られていました。
ブータンの布は織りが主流で、代表的なのは「片面縫取織」という裏側に模様が見えない技法で織られた「キシュタラ」、野生絹(ブラ)の地の織りの上に経糸で模様を表した「経浮織」の「メンチマタ」や「ルンセルマ」という織物です。
女性が着る民族衣装は「キラ」
3枚の布をつなぎ合わせた大きな布を体に巻き、肩の部分を留め具で固定して着用するそうです。
「キラ」に用いられる布にはたくさんの種類があります。
展示コーナーでは、赤、青、黄、緑、白、黒など色とりどりの糸を使い、縞模様や格子模様、幾何学模様や動植物をモチーフにした模様など、様々な柄の織り布が飾られていました。
どれも、ため息が出てしまうほど見事です★
男性が着る民族衣装は「ゴ」
「ゴ」は、日本の丹前にも似た着物です。
丈がくるぶしくらいまである着物を膝上丈くらいまでたくし上げ、帯できつく締めて着用します。
正装の時は、「ゴ」の上に「カムニ」というスカーフを纏います。
「カムニ」の色は、身分によって決められているそうで、一般市民は白、大臣クラスは濃いオレンジ、国王はサフラン色であるとのこと。
こちらが、ブータン衣装の着こなし。
真ん中が、男性の衣装「ゴ」、両側が、女性の衣装「キラ」です。
よく見ると、靴もカラフルでお洒落です。
衣装コーナーにあったイラスト。
「キラ」を着た女性3人組です★
掲げられた言葉は、
しあわせとは、自分の持っているものを喜ぶことです
こちらは、マフラー「ヤタ」
寒冷なブムタン地方で使われる毛織物です。
シンプルだけどカラフルな幾何学模様が魅力的。
とても暖かそうです。
ブータン王室とそのロイヤルコレクション
色とりどりの織物と衣装が並ぶ1階の展示コーナーを抜け、2階へ。
2階には、第2章「ブータン仏教と信仰」、第3章「愛されるブータン王室」のコーナーがありました。
第2章「ブータン仏教と信仰」のコーナーでは、仏像や仏画(タンカ)を多数展示。
第3章「愛されるブータン王室」のコーナーでは、王族の衣装や装飾品など、ブータン王室の貴重なコレクションが展示されていました。
ちなみに、2階の展示コーナーは撮影禁止になっています。
2階の展示コーナーの入り口に掲げられていた言葉はこんな言葉。
熊が峠を越えてから刀を抜く。お坊さんが帰ってから香をたく
ブータンと言えば「ブータン王室」
ブータンの王室は、1907年12月17日、「ウゲン・ワンチュク」が初代世襲制国王に選出されたのが始まり。
結構歴史の新しい王朝なんです。
ちなみに、王朝が生まれる前は、「ジェ・ケンポ」が宗教界の長を、「デジ」が政治・行政の長を務めるという「チョエン制度」が約300年の間続いていたのだとか。
1907年の王朝成立後、長らく絶対王政が続いていましたが、2008年に立憲君主制に移行しています。
現在の国王は、第5代の「ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク」国王。
イケメンな国王として、日本でも話題になりました★
奥さんの「ジェツン・ペマ・ワンチュク」王妃もとっても美人です。
ふたりの馴れ初めは、王妃が7歳の頃に、当時17歳の王子(現国王)から「大人になって独身であったら結婚しよう」とプロポーズされたというのだから、なんともロマンチック。
2016年4月16日には、第1子となる男の子が誕生したのだとのこと。
ブータン国王と王妃は、国民とも気軽に会話される気さくな人柄だそうで、ブータンの人々にとっても愛されています。
展示ブースで上映されていたブータンの人々のインタビューVTRでも、皆さん、「国王がいることが幸せ」とか、「王子が生まれたことが幸せ」などと語っていました。
展示コーナーの最後には、大きなマニ車が置かれていました。
「マニ車」とは、チベット仏教で用いられる仏具で、側面にマントラが刻まれていて、内部にはロール状の経文が納められています。
「マニ車」を時計回りに回転させると、回転させた数だけお経を唱えるのと同じ功徳があるのだとか。
とりあえず、一回転回してみましたー!
ちなみに、ここでは、民族衣装「キラ」や「ゴ」を着て記念撮影を撮ることもできます★
展覧会を彩る「松尾たいこ」さんのかわいいイラスト
『ブータン しあわせに生きるためのヒント』展の開催にあたり、「上野の森美術館」の1階にある「喫茶 森」もブータン仕様になっていました。
喫茶の入り口には、ブータンのお祭り「ツェチュ」に使われる仮面がいくつか。
壁には、松尾たいこさんのイラストがズラリと!
「ツェチュ」の仮面、仏教の僧、「キラ」や「ゴ」を着た人々、タクツァン僧院、「エマダツィ」や「モモ」などのお料理、国蝶の「ブータンシボリアゲハ」などなど。
カラフルでかわいいイラストがいっぱい★
バラエティーに富んだオフィシャルグッズの数々!
こちらは、ブータン展のお土産コーナー。
このお土産コーナー、かなりオリジナルグッズが充実していました!
特に、松尾たいこさんのイラストを使ったコラボ商品がたくさん。
ルピシアの紅茶缶コラボや、文明堂コラボのブータンイラストのカステラ、榮太棲飴のコラボ缶、玉和堂のお香のコラボなど、色んなメーカーとコラボしています。
他にも、マスキングテープやランチョンマット、マグネットやマグカップ、トレイなど、ブータンイラストの描かれたグッズが盛りだくさん!
「世界一幸せな手ぬぐい」とか「世界一幸せなノート」など、幸せグッズもあります。
選ぶの大変です!
そんな中で、チョイスしたのがこちら。
松尾たいこさんのブータンイラスト入りの、マスキングテープと榮太樓飴。それと、ブータンのお香を購入しました!
ブータン人の”しあわせ”とは?
ブータンの文化とその暮らしぶりを丸ごと知ることができた『ブータン しあわせに生きるためのヒント』展。
「ツェチュ」の仮面や美しい織物など見応えがあり、松尾たいこさんのイラストやブータンの言葉もなかなか魅力的で、なかなか充実した展覧会でした。
ところで・・・、
「ブータン」、結局、どんなところが”しあわせ”なのか?
展示の最後に、「ブータンしあわせシアター」という、VTRの上映コーナーがありました。
このVTRの紹介によると、ブータンには、実は「しあわせ」を意味する言葉はないのだとのこと。
一番近い言葉としてあるのが、「セムガェ」という言葉。
この「セムガェ」、「心地よい」という意味だそうです。
VTRでは、ブータンのいろいろな人に、「どんな時に”セムガェ”を感じるか」という質問がなされ、人々がその質問に答える様子が紹介されていました。
印象的だったのは、家族や知人、王室など、自分ではない周りの人の良い出来事にしあわせを感じる人が多かったということ。
他人のしあわせを自分のしあわせと感じられたら、しあわせに感じる場面は倍増しますよね。
国として、「しあわせ」を推進していることも、ブータン人が信仰している仏教の教えも、その考え方にひと役買っているのだと思いますが、ブータンが”幸せの国”と呼ばれる理由、なんとなくわかった気がしました。
ブータンの「しあわせ」を感じることができる展覧会『ブータン しあわせに生きるためのヒント』展。
なかなか満足できる展覧会です。
ほっこりとした気持ちになれます★
『ブータン しあわせに生きるためのヒント』展概要
- 会期:2016年5月21日(土)~7月18日(月・祝)
- 開館時間:10:00~17:00(※最終入場は閉館の30分前まで)会期中無休
- 会場:上野の森美術館
- 料金:(当日券)一般(1,400円)、大学・高校生(1,000円)、小学・中学生(600円)
コメント