「ボロブドゥール(Borobudur)」は、インドネシア・ジャワ島中部のジョグジャカルタ近郊にある世界最大級の仏教遺跡。大乗仏教の遺跡です。
インドネシア観光の目玉のひとつで、世界遺産にも登録されている必見の遺跡です。
「ボロブドゥール寺院遺跡」についてご紹介します。
世界最大級の仏教遺跡「ボロブドゥール」【世界遺産】を歩き回り!
「ボロブドゥール」は、ジャワ中部、ジョグジャカルタからバスで1時間半のところにある仏教遺跡です。
「ボロブドゥール」の建立は8世紀末。ジャワ中部を支配していたシャイレーンドラ王朝の王、ダルマトゥンガの治世に建造されたそうです。
東南アジアに伝わった仏教は、上座部仏教が中心ですが、シャイレーンドラ王朝は大乗仏教を奉じていたため、この「ボロブドゥール」も大乗仏教の遺跡となっています。
曼荼羅みたいなボロブドゥールの全体像
世界遺産マーク
「ボロブドゥール」へは、ジョグジャカルタの街でトランスジョグジャ(3,000ルピア)に乗ってジャンボール下車、ボロブドゥール行きのバス(20,000ルピア)に乗り換えます。
ジャンボールからボロブドゥールまでは約1時間半。遺跡入り口までは歩いて10分ほどです。
遺跡入り口ではガイドを頼むこともできます。
私は、日本語を話せるガイド、ウディン君に案内をお願いしました(75,000ルピア)。
「ボロブドゥール」は、自然の丘に盛り土をし、その上に高さ23㎝の安山岩のブロックを200万個積み重ねてつくられています。
最下部に方形の基壇が1層、その上に方形壇が5層、上部に円形壇が3層の9層の構造になっていて、これは仏教における「三界」を表わしていると考えられています。
最下部の基壇の一辺は123m、最上部までの高さは34.5mにも及ぶそうです。
ガイドのウディン君が、流暢な日本語でガイドを始めます。
「ボロブドゥール」の「ボロ」は寺院、「ブドゥール」は丘を意味する。
2010年にムラピ火山が噴火した時、42キロも離れたこのボロブドゥールにまで火山岩が落ちてきた。
などなど。
ふんふん、なるほど、と説明を聞いていきます。
基壇部分の「欲界」を歩く
「ボロブドゥール」は、その建築物全体が、仏教における「三界」を表わしていると考えられています。
最下部の基壇は「欲界」、その上の5層の方形壇は「色界」、最上部の3層の円形壇は「無色界」です。
まずは、基壇の「欲界」(私たち人間の住む世界)から歩いていきます。
「欲界」とは、Wikipediaによると、
「淫欲と食欲の2つの欲望にとらわれた有情の住む処。六欲天から人間界を含み、無間地獄までの世界」
であるとのこと。
つまりここは、欲望と罪悪に溢れた私たち人間の住む世界なのです。
ここには、煩悩に支配された人間の姿が160面のレリーフとして描かれています。
「分別善悪応報経」をもとに描かれた因果応報の教えです。
ウディン君によると、 左のレリーフは、男の欲望(博打を打つ、酒を飲む、女を買う、麻薬、盗む)、右のレリーフは、女の欲望(噂話、悪口、井戸端会議) なのだそうです。
悪口を言うと顔も悪くなる。因果応報だ。とウディン君が言います。
煩悩で生きる「欲界」から、その上部にある悟りを求める「色界」を仰ぎ見ます。
さあ、煩悩を振り払い、悟りへと向かう道へと進みましょう!
ウディン君の先導の下、「色界」への階段を登っていきます。
中層部、方形壇部分の「色界」を歩く
さて、ウディン君と共に登ってきた「色界」部分。
「色界」とは、Wikipediaによると、
「欲界の2つの欲望は超越したが、物質的条件(色)にとらわれた有情が住む世界。」
であるとのこと。
悟りへと向かう過程であり、「空」へと至る途上の部分です。
この5層4回廊からなる「色界」部分には、釈迦や仏教の物語が1460面に及ぶ浮き彫りレリーフとなって描かれています。
浮き彫りレリーフは、時計回りに続いていて、その総延長は約5キロ。
レリーフに描かれた登場人物は一万人にも及ぶそうです。
ウディン君によると、この「色界」部分の方形壇には、100の排水口、504体の仏像があるそうです。
仏像は、方形壇の各面によって異なった印相を結んでいます。
Wikipediaによると、
東側・・・阿閦如来で指地の印
南側・・・宝生如来で満願の印
西側・・・阿弥陀如来で弥陀定印
北側・・・不空成就如来で無畏の印
第5層は東西南北ともに毘盧遮那仏で法身説法印
であるとのこと。
ウディン君は、手の平をくるくると返しながら印相の説明をしてくれました。
「色界」部分の4つの回廊には、仏教の様々な物語が描かれています。
第1回廊には、上段に初転法輪までのブッダの生涯が、下段に釈迦の前世の物語である「ジャータカ」などが描かれています。
第2回廊から第3回廊にかけては、善財童子が巡礼の旅をする仏教経典「華厳経入法界品」などが描かれています。
第4回廊には、普賢菩薩の大慈悲心を讃歎する様子が描かれています。
さて、ウディン君の長々とした説明もそろそろ最終章です。
説明をうまく聞き流しつつもわかったつもりになる私。
さあ、「無色界」へと向かいましょう!
悟りの境地へ。物質を超越した無の世界へ・・・。
円壇部分「無色界」に林立するストゥーパ
ついに辿り着いた「無色界」 ここにはレリーフはありません。
ストゥーパが規則的に並ぶ幾何学的な空間となっています。
「無色界」とは、Wikipediaによると、
「欲望も物質的条件も超越し、ただ精神作用にのみ住む世界であり、「禅定」に住している世界。」
であるとのこと。
悟りの末に到達した「無」の世界なのです。
円壇部は3層になっていて、釣鐘型のストゥーパが72基規則的に並んでいます。
それぞれのストゥーパの内部には等身大の仏像が安置されています。
ストゥーパの窓は外部2層と内部1層では形が異なっています。
外部2層の窓は菱形。これは俗界の人々の不安定な心を表わしているそうです。
内部1層の窓は正方形。これは悟りを開いた者の安定した心を表わしているのだとのこと。
内部1層のさらに中心には、大ストゥーパがあります。大ストゥーパには窓がなく、これは無の世界、大乗仏教の真髄である「空」の思想を表わしていると考えられています。
ウディン君によると、 ストゥーパの最上部の塔は八角形になっており、「八正道」を。 その下の台は四角形で「四苦」を表わしているのだとのこと。
四苦の下に仏像が安置され、切り窓のある茶碗を逆さにしたような部分があり、その下は蓮、さらにその下の台座は袈裟を表わしているのだそうです。
さて、「無色界」から我々人間の住む「欲界」へと降りましょう。
そろそろお腹も空いてきました。
「ボロブドゥール」はそれ自体が仏教的宇宙観を表わす巨大な曼荼羅だと考えられています。須弥山を模しているとも言われているそうです。
こうして外から眺めると、本当に曼荼羅なんだということが実感できますね。
上の写真は、ガイドをしてくれたウディン君。
日本語で丁寧に説明してくれました。
また、ガイド後の雑談では、インドネシアのポップスのお勧めや人気歌手を教えてくれたり、インドネシアの若者事情、恋愛や結婚、就職などから、インドネシア人の気質。 インドネシアの多様な民族性、世代間格差、貧富の格差や政治など社会事情についても教えてくれました。
とてもよいボロブドゥール訪問になったと思います。
素晴らしいガイドをありがとう、ウディン君!
ボロブドゥールは、毎日6:00~18:00(入場は17:00まで)
料金は、US$15、学生はUS$8
旅行時期:2011年8月
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