ぐるぐるぐるぐるぐる・・・
回転するスカートをはいた人々の集団。
これは、トルコのイスラム神秘主義教団「メヴレヴィー教団」が行う旋回舞踊「セマー」です。
イスタンブールの新市街、イスティクラル通りからガラタ塔へと向かう途中にあるガラタ・メヴラーナ博物館。
ここでわたしは、旋回舞踊(セマー)を見ました。
スカートをはいた信者が旋回するイスラム神秘主義(スーフィズム)の踊り。
この「セマー」、生まれたのは13世紀のこと。
ジャラール・ウッディーン・ルーミーによって開基された「メヴレヴィー教団」は、神との一体を図るという目的でこの「セマー」と呼ばれる旋回舞踊を生み出しました。
見てください!
このぐるぐると回る回転具合!
回転は宇宙を表します。月は地球を回り、地球は太陽を回っています。
ぐるぐると回転するという宇宙の法則を体現することによって、神に近づこうとしているのです。
「セマー」は、まず、祈りの朗唱から始まります。
続いてクデュム(打楽器)やネイ(笛)を使った伝統音楽の演奏が始まり、しばらくすると指揮者と、円錐形の帽子を被り長いスカートをはいた踊り手たちが登場します。
この踊り手たちは「セマーゼン」と呼ばれます。
セマーゼンは指揮者の前に一列に並び、礼をすると次々と回転を始めます。
回転する時のポーズは、右腕を天に、左腕を地に向けた格好。このポーズは、アッラーからの恵みを人々に振りまくことを意味しているのだそうです。
この回転、結構スピード早いです。よく目が回らないものだと感心します。
目を回さず、安定した姿勢で回転し続けるには、かなりの訓練が必要かと思われます。
セマーゼンたちは、登場する時は黒いローブを羽織っており、踊る際にそれを脱いで白装束になります。
白装束は”死”を意味しているそうです。ちなみに長い帽子は墓碑の意味があるのだとのこと。
黒いローブを脱ぐことで、形あるものから精神的に解放され、回転を通して神の世界へと向かっていくのだそうです。
伝統的な音楽をBGMに、回転し続けるセマーゼンたち。
回転し続けるうちに、彼らはトランス状態に入っていきます。
その様子を眺めているわたしたち観衆もなかば恍惚としたトランス状態に・・・
この「セマー」を行っていたメヴレヴィー教団、15世紀にはオスマン帝国の庇護のもと、隆盛を極めたそうです。
ところが、1923年のトルコ革命時に、ケマル・アタテュルクによる脱イスラム政策の一環で、教団は解散させられ、「セマー」も行われなくなりました。
けれども、その後「セマー」はその文化的価値が見直されて復活。ユネスコの無形文化遺産にも登録され、教団の発祥地であるコンヤや、ここイスタンブールの「ガラタ・メヴラーナ博物館」で、現在でもその姿を見ることが出来るのです。
トルコ以外のスーフィズムの旋回舞踊
イスラム神秘主義(スーフィズム)は、トルコ以外のイスラム世界でも多くの教団が現存し、信仰活動を行っています。もちろん、旋回舞踊も各地に存在。そして、旋回舞踊はエンターテインメント化もしていました。
こちらは、シリアの旋回舞踊。メヴレヴィー教団の旋回舞踊と似ていますね。
たぶん、内戦の影響で今は行われていないと思われます。
エジプトの「タンヌーラ」と呼ばれる旋回舞踊です。
スーフィーの旋回舞踊から発展した民族芸能で、お祭りや結婚式などで踊られるのだそうです。
エンターテインメント化された旋回舞踊です。
電飾の旋回舞踊です。
こちらのダンサーは、サイード・アブデルハディというプロの「タンヌーラ」ダンサーです。
なんとこの方、日本の原宿でタンヌーラを講師として教えているのだとか。
びっくりしましたー。
こちらは、ドバイの砂漠のキャンプで行われた旋回舞踊。ダンサーはエジプシャンです。
神秘主義の踊りが大道芸に発展しています。
いろんなアイテムを懐から取り出したり、電飾になったりと、かなり工夫してます!
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