国と国より、人と人。
ワケあり家族が異国の地で巻き起こす、ほんのささやかな奇跡とは?
インドへと渡ったスリランカ人(タミル系)の四人家族
『ツーリストファミリー』は、スリランカでの経済的困窮から抜け出し、より良い生活を求めてインドへと渡ったスリランカ人家族(タミル系)の物語。
彼らはインド南部の都市チェンナイで暮らし始めますが、言葉や文化の違い、身分がバレないようにする苦労、テロ事件を追う警察からの疑いといった現実的な困難に直面します。
その過程で家族が地域の人々と関わり、人間同士の絆が生まれ、“ささやかな奇跡” が起こる。そんな物語です。
難民問題や文化的ギャップ、異国での生活の不安といった深刻なテーマを扱いながらも、物語の筆致はユーモラス且つ温かみ溢れる感じ。
作品は口コミで人気が広がり、低予算映画ながら大ヒットを記録。インド映画界の著名監督 S.S.ラージャマウリやラジニカーントが称賛コメントを寄せるなど、インド国内で高い評価を受け、第23回チェンナイ国際映画祭では作品賞や主演俳優賞など複数の賞を受賞しています。
映画「ツーリストファミリー」のストーリー(あらすじ)

物語の主人公は、夫ダルマダース(シャシクマール)と妻ワサンティ(シムラン)、息子のニドゥ(ミドゥン・ジェイ・シャンカル)とムッリ(カマレーシュ・ジャガン)の、タミル系スリランカ人の四人家族。
ダルマダースら四人家族は、夜の闇の中、ボートに乗ってスリランカから海峡を越えインドへ密入国することに成功しますが、海岸ですぐに警察に呆気なく捕まってしまいます。
深刻な事態と言うべきところですが、次男ムッリのユーモアと機転。そして、警察官のバイラヴァン(ラメーシュ・ティラク)の優しさによって、家族は解放されることとなります。
インド人と身分を偽っての家族の新生活は、ハラハラドキドキの連続。
タミル系である彼らは、同じタミル人であるホストファミリーや住宅街の隣人たちとも言葉が通じるのですが、どうしてもスリランカ方言が出てしまいます。
スリランカのタミル人が話すタミルは、インドで話されているタミル語とは少し異なり、インドのタミル人からすると、どこか畏まったような話し方に聞こえるのだそう。
映画の日本語字幕では、彼らが「話す」と言うのを「語らう」、「わかりません」と言うのを「解せませぬ」と表現していました。
表向きはインドのケララから来たことにしている四人家族は、スリランカ方言を口にする度に「ハッ!」となり、それを聞いた隣人たちは「えっ?」となる。
そんなやりとりが笑いを誘います。
家族のインドでの案内人であるワサンティの兄プラカーシュ(ヨーギ・バーブ)からは、あまり隣人と交流を持たないようにと釘を刺されていましたが、持ち前の人の良さから家族は隣人たちとどんどん親密になっていきます。
しかし、そんな家族に暗い影が忍び寄ります。
彼らが上陸したラーメシュワラムで爆弾テロ騒ぎが起こり、家族にその嫌疑が掛けられてしまったのです。
住宅街の一斉捜索を始める警察。
果たして家族の運命は如何に!
映画「ツーリストファミリー」の感想
政府による国家運営の失敗、経済的困窮と移民、難民、密入国。
本作が長編第一作目だという若手のアビジャン監督は、政治的な意図を持って作品を作ったわけではなく、思いやりと愛を広めるというのが映画のキーコンセプトだと語っています。
国や民族、宗教、職業、世代などといった属性で語られがちな世の中ですが、ふと立ち止まってミクロで見てみると、そこには、人それぞれの事情があり、思いがあり、人それぞれのリアルを知れば、互いへの思いやりと、互いの絆が生まれる筈。
作品からは、そんなメッセージが感じられました。
物語自体はよくある定型的なストーリーかもしれませんが、この映画『ツーリストファミリー』は、ほっこりとしたユーモアと「人」に対する優しさを感じさせる、混迷の時代における一服の清涼剤のような作品。
ラストシーンはしみじみと泣けます!
素晴らしい作品でした。
キャスト
- ダルマダース:シャシクマール
- ワサンティ:シムラン
- ニドゥ:ミドゥン・ジェイ・シャンカル
- ムッリ:カマレーシュ・ジャガン
- プラカーシュ:ヨーギ・バーブ
スタッフ
- 監督:アビシャン・ジービント
- 製作:ナザラト・パーシリヤン、マヘーシュ・ラージ・パーシリヤン、ユバラージ・ガネーサン
- 脚本:ビシャン・ジービント
- 撮影:アラビンド・ビシュワナーダン
- 編集:バラト・ビクラマン
- 音楽:ショーン・ロールダン













