17年の時を超えてスクリーンに蘇る、目も眩むほどに美しい圧巻の<映像詩>的アート体験
4Kデジタルリマスターで蘇った美術品のような映画
2006年に公開され、圧倒的な映像美により、カルト的な人気を博していた作品「落下の王国」
その4Kデジタルリマスター版が日本公開されたので観てきました。
この作品、とにかく映像美がすごいです。
CGに頼らず、インドやモロッコ、ナミビアなど世界24カ国以上でロケ撮影を行ったという映像は、色彩や構図がまるで一枚の絵のような美しさ。
監督のターセムはCM出身とのことで、CM撮影のため世界中を周っており、その際に撮り溜めた映像が作品に使われているのだとか。
特に、監督の出身国であるインドの風景が数多く使われてるのがインドフリークとしては嬉しいところ。
この記事では、作品の魅力と共に、ロケ地として使われたインドの名刹についてご紹介します。
「落下の王国」の物語(あらすじ)と魅力
※記事はネタバレ含みます。
映画の舞台は1915年頃のロサンゼルス。
スタントマンのロイ(リー・ペイス)は撮影中の事故で大けがを負い、病院に入院しています。そこで出会ったのが、腕を骨折した少女アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)。
ロイは彼女に「壮大な冒険物語」を語り始めます。
その物語とは、黒山賊、奴隷、インドの爆弾魔、ダーウィン、元奴隷の黒人戦士といった5人の戦士が、悪の総督オディウスに復讐を誓い、戦いを挑むという冒険譚。
しかし、この冒険譚は単なるおとぎ話ではありません。
ロイの心の絶望や希望が、アレクサンドリアの想像力を通して映像化されていくのです。
作品の一番の魅力は、ターセム監督が創り出した独創的な世界観。
ロイの語りによってアレクサンドリアの想像の中に生まれる世界は、故・石岡瑛子氏による奇抜な衣装とも相まって、とても幻想的。
しかしながら、CGではない、世界中から切り取った現実の風景が使われていることにより、幻想的でありながらも妙なリアルさを感じさせます。
空想世界の中の登場人物はアレクサンドリアの生きる現実世界を反映しています。
主人公の黒山賊がロイだったり、悪役の総督オディウスは病院の医師だったり。終盤にはアレクサンドリア自身も空想世界のキャラのひとりとして登場します。
ロイは絶望の淵に立たされているため、語られる物語はどんどん悲惨で過酷な内容へと展開していきます。
現実世界においても自殺を図ろうとするロイ。彼は物語の中で自身の投影でもある黒山賊の処刑を図ります。
アレクサンドリアは涙を流し、物語を「変えて」と懇願し、ついには、彼女は物語の中に入り込み、登場人物を救おうとするのです。
作品の幻想的な世界観と映像美と共に良かったのが、アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーの演技。子供らしい自然な演技が魅力的です。
当時5歳だったカティンカに対しては自然な反応を引き出す撮影方法が取られたそうで、彼女の表情が物語をリアルにしています。
作品に登場するインドの名刹・風景
映画「落下の王国」には、ナミビアの「ナミブ砂漠」、プラハの「カレル橋」、イスタンブールの「アヤ・ソフィア」、バリ島の「テガララン」のライステラス、中国の「万里の長城」、ボリビアの「ウユニ塩湖」、ローマの「コロッセオ」、エジプトの「ギザのピラミッド」、カンボジアの「アンコールワット」など、世界中の名刹や風景が登場しますが、ロケ地のメインはインド。
ここでは、作品に登場するインドのロケ地と作品の使用シーンについてご紹介します。
ラージャスターン州
ジャンタル・マンタル(Jaipur)
概要:18世紀初頭に建設された、約20の固定式天文観測装置からなる観測施設。石造の巨大機器を“裸眼観測”のために設計した点が特徴で、世界遺産。
使用シーン:ロイが語る“夢世界”の冒頭〜中盤で、英雄たちが広大な不思議な石造構造の中に立つシークエンスとして登場します。巨大な日時計や曲面壁が迷路のように見える映像が使われ、「迷宮」「異世界の入口」的な空間演出に機能しています。
ジャイプールのシティ・パレス(Chandra Mahal/City Palace)
概要:ジャイプール旧市街中心部の王宮複合。宮殿建築(チャンドラ・マハル等)と中庭・回廊が連なる。
使用シーン:夢物語パートの序盤で、装飾的な門や回廊が背景として映ります。特にインド人キャラクターが“仲間として集う”場面で、鮮やかな石造彫刻やモザイクが印象的に使われています。
チャンド・バオリ(Chand Baori/Abhaneri)
概要:逆ピラミッド状に深く落ち込む巨大階段井戸。8〜9層相当の深さ、ジグザグの階段パターンが特徴。
使用シーン:巨大な階段井戸が“迷い込んだ巨大構造”として登場。3,500段ある階段の幾何学的パターンが、英雄たちが“深淵に迫る”様子を象徴する場面で映像化されます。
メヘランガール砦(Mehrangarh Fort/Jodhpur)
概要:ジョードプル(ブルーシティ)を見下ろす丘上の大要塞。石造の城壁・中庭・宮殿群をもつ。
使用シーン:夢物語の中で、悪の総督オディウスの支配する要塞として、また壮大な城塞空間として登場。砦の高所や城壁を背景に、英雄たちが対峙・進軍するショットが使われています。
“ブルーシティ”(Jodhpurの青い街並み)
概要:ジョードプル旧市街の青く塗られた家々の景観として知られる地域。
使用シーン:メヘランガール砦シーンと連動して、背景の街並みとして登場。青く塗られた建物群が、映画全体の色彩設計の一部として幻想的な世界観を強めています。
ウメイド・バワン宮殿(Umaid Bhawan Palace/Jodhpur)
概要:1928〜1943年建設の巨大宮殿建築(現在は一部がホテル/一部が博物館)。
使用シーン:映画の中盤で宮殿ロビー・大広間のような空間として映る場面があります。夢物語の“王侯的空間”という印象を支えるセットとして用いられています。
ジャイサルメール城(Jaisalmer Fort/Jaisalmer)
概要:砂漠地帯の“黄金の城”。ユネスコ世界遺産「ラージャスターンの丘陵要塞群(Hill Forts of Rajasthan)」の構成要素の一つ(2013年)。
使用シーン:砂漠の城塞として、長距離の旅や“異境感”を演出する場面で登場。城壁を背にした遠景が、物語のスケール感を拡大します。
タージ・レイク・パレス(Taj Lake Palace/Udaipur・ピチョラー湖)
概要:湖上の宮殿(現在はホテルとして知られる)。
使用シーン:物語中盤で、湖に浮かぶ宮殿として登場。静謐で神話的な雰囲気のある“夢のような”シーンの背景となっています。
उत्तर प्रदेश(ウッタル・プラデーシュ州)
タージ・マハル(Agra)
概要:皇帝シャー・ジャハーンが妃ムムターズ・マハルのために造営した白大理石の霊廟が「タージ・マハル」。世界遺産。
使用シーン:夢物語のクライマックス付近で象徴的に登場する印象的ショットとして使われます。白大理石の大霊廟が、愛・死・運命など映画の大きなテーマを象徴するカットとして挿入されます。
ファテープル・シークリー:ブラウンド・ダルワーザ(Buland Darwaza)
概要:アクバル帝が16世紀後半に築いた都城(世界遺産)。その複合施設内の巨大門が「ブラウンド・ダルワーザ」。
使用シーン:夢の世界で“巨大な門・帝国の入口”として登場。英雄たちが進む象徴的なポイントとして時間コード付きロケ地リストにも記載されています。
スィカンドラー(Sikandra/Agra)
概要:ムガル帝国第3代皇帝アクバルの廟が「スィカンドラー」。赤砂岩と大理石を組み合わせた壮麗な建築で、広大なチャハールバーグ(四分庭園)に囲まれる。巨大な門楼と幾何学的装飾が特徴で、ムガル建築の発展過程を示す重要史跡。
使用シーン:夢物語パートにおいて、“帝国的門構え”や“王墓的空間”として背景に用いられています。ムガル建築特有のアーチと対称性が、英雄譚の荘厳さを高める視覚要素として機能しています。
デリー(Delhi)
レッド・フォート(Red Fort Complex)

概要:ムガル帝国の新都シャージャハーナーバードの宮城として築かれた赤砂岩の城塞(世界遺産)。
使用シーン:夢物語パートの“赤い城壁・宮城”としての背景に。英雄たちが進軍する城塞景観として印象的に映像化されています。
フマユーン廟(Humayun’s Tomb)
概要:ムガル帝国第2代皇帝フマユーンの墓廟。赤砂岩と白大理石を組み合わせた壮大なドーム建築で、後のタージ・マハルの原型とされる。世界遺産。
使用シーン:ムガル建築の荘厳さを背景に、英雄たちが対峙する場面や物語の運命的・神秘的側面を強調する象徴的ショットとして登場します(映画内で具体的な行動が描かれるセリフ付きシーンは限定的ですが、ロケ地一覧に含まれています)。
ラダック(Ladakh:高地風景)
パンゴン・ツォ(Pangong Tso)
概要:標高約4,225m級の高地湖。全長約134kmで国境をまたぐ(インド側・中国側に分かれる)。
使用シーン:旅のモンタージュ的シーンで、広大な高地湖の風景が使われます。映画の登場人物たちが“物語を横断する旅”として描写される中の一環として挿入されます。
マグネティック・ヒル(Magnetic Hill)
概要:“上り坂に見えるのに物体が上っていくように見える”視覚錯覚で知られる地点(いわゆる重力丘)。
使用シーン:同じく旅の風景カットとして登場。パンゴン・ツォと連続して“荒涼とした異世界的な地形”として背景に使われます。
ラマユル周辺の“ムーンスケープ”(Lamayuru Moonscape)
概要:ラマユル寺院周辺に広がる、月面のように見える地形(観光名所として“Moonscape”と呼ばれる)。
使用シーン:夢物語の風景シークエンスとして使われる“月面のような異次元の地形”の場面に登場し、世界を旅する象徴的なカット群の一部として映像化されます。
アンダマン諸島(Andaman Islands)
アンダマン諸島(Andaman & Nicobar Islands)
概要:ベンガル湾の島嶼群(インド連邦直轄領)。熱帯の海と島景観が特徴。
使用シーン:象が海を泳ぐシーンなど、夢物語パートの“異国・異世界感を強調する動物/自然の場面”として登場します。
参考:en.wikipedia.org :thefall-locations.blogspot.com:blog.turkishairlines.com
キャスト
- ロイ・ウォーカー/黒山賊:リー・ペイス
- アレクサンドリア:カティンカ・アンタルー
スタッフ
- 監督・脚本:ターセム
- プロデューサー・脚本:ニコ・ソウルタナキス
- 共同脚本:ダン・ギルロイ
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