ペルーの首都リマには、インカやプレ・インカの貴重な遺物を展示した博物館がいくつもあります。
リマ滞在中、それらの博物館をはしごして回りました。
今回は、リマの博物館をご紹介します。
古代アンデス文明とは?
モチェの土器(国立博物館)
古代アンデス文明は、紀元前2000年頃からその輪郭を現し始めたといわれています。
「コスタ」と呼ばれる海岸砂漠地帯、4,000メートルを越すアンデスの山岳地帯「シエラ」、アマゾン川流域のジャングル地帯「セルバ」。変化に富むそれぞれの地域で文明が生まれ、様々な作物が作られ、そして、交易が行われました。
旧大陸と隔絶されたこの地域では、16世紀にスペイン人がやって来るまで他の文明との接触がほとんどありませんでした。
そのため、旧大陸とは全く異なる、独自の文化が形成されていったのです。
古代アンデス文明は、大まかに区分すると、北部、中部、南部の3つの地域に分けられます。
北部には「モチェ」や「シカン」「チムー」、中部には「リマ」や「チャンカイ」、南部には「パラカス」「ナスカ」「ティワナク」などの文化がそれぞれ盛衰していきました。
そして、15世紀の後半、それらの部族や国家を統一し、一大帝国を築き上げたのが「インカ」です。
「天野博物館」
国立博物館の土器
ミラ・フローレスの閑静な住宅街のただ中に「天野博物館」はあります。
ここはチャンカイ文化の研究者、天野芳太郎氏の収集品を展示した博物館です。
日本人の研究員が日本語で館内を案内してくれる博物館ということで、我々日本人にとってはとてもありがたい博物館です。
この時、私たちを案内してくれた研究員は、展示されている品々をひとつひとつ丁寧に説明してくれました。
館内には、様々な形をした土器が文化ごとに分けられて並べられています。
形も彩色もそれぞれ異なったプレ・インカの土器、それに対してインカの土器は規格化されたシンプルな形状をしています。
インカはその支配を確立させた時、全土の土器の形を統一させたのです。
数ある土器の中でも、特に面白かったのが、「モチェ」の土器。
土器が人の顔の形を模して造られており、それぞれの顔がアンデス人にない特徴を備えています。 中国人のように扁平な顔、黒人のように丸みを帯びた顔、白人のように彫りの深い顔。
アンデス地域は、旧大陸との接触はなかったはずです。どうやってそれらの人々の容姿を知ることが出来たのでしょうか。何とも不思議です。
館内に置かれている箪笥の引き出しの中には、チャンカイ文化の美しい織物が丁寧にしまわれています。
この織物もとても不思議なものでした。
よく見ると、織物を構成する糸が信じられないくらい細い!
研究員の話では、この織物はものすごく高度な技術で造られているそうで、現代の技術を以ってしても、同様の製品を作ることは不可能なのだとのこと。
以前、日本の大手のメーカーがチャンカイの織物の複製を作ろうと試みたことがあったそうですが、失敗したという話です。
また、これらの見事な織物は、決して王侯貴族だけのものではなく、一般庶民も使っていたのだそう。
チャンカイ人にとって、これらの織物はどこにでもある普通のものだったのです!
次から次へと現れる不思議な展示品、研究員の知的好奇心をくすぐるような説明。
面白い! 本当に興奮させられます。
「国立人類学考古学歴史博物館」
文字を表したという紐の結び目「キープ」【国立博物館】
プエブロ・リブレ地区。緑の美しい中庭と白い回廊を持った「国立人類学考古学歴史博物館」は、ペルー最大の収集量を誇るといわれる博物館です。
時代ごとに区分された土器や石像、黄金製品。鮮やかに彩色されたパラカスの織物やナスカのリアルなミイラ。
膨大な収集品は、それぞれどれも興味深いものばかり。
けれども、詳細に説明していると思われる、スペイン語の解説文を読むことが出来ないというのが何とも歯痒い博物館でした。
「ラファエル・ラルコ・エレラ博物館」
国立博物館の土器
次に向かったのが「ラファエル・ラルコ・エレラ博物館」
ここにはモチェを始めチムー、ナスカなどの土器や黄金製品が建物一杯に展示されています。
特にびっくりとさせられたのが土器の展示。 食器棚のような陳列ケースに、夥しい数の土器が並べられています。
様々な彩色の施されたもの、人間の顔や動物の姿をかたどったもの、大きいもの、小さいもの、リアルなもの、ディフォルメされたもの。
あまりのバリエーションの多さに圧倒させられてしまいます。
「国立博物館」
国立博物館から見たリマの風景
コンクリートの打ちっぱなしの巨大な建物、「国立博物館」は幹線道路の交差点の角にあるペルーを代表する博物館です。
リマの博物館巡りの締めとして、ここを訪れました。
文化ごとに分けられた展示室はとても見やすくわかりやすいもの。他の博物館と同じように、ここにも大量の土器や織物、黄金製品が所狭しと展示されていました。
ここで最も面白かったのは、マチュピチュやオリヤンタイタンボなど遺跡の模型です。
精巧に作られたそのミニチュアを見下ろすと、遺跡の全体像がよくわかります。
切り立った斜面にへばりつくような美しい石組みや、綺麗に再現されたエメラルド色に輝くワイナピチュの山。
それらを見ていると否が応でも期待感が高まってきます。
憧れの地、マチュピチュ。それはもう、すぐそこにあるのです!
旅行時期:2003年6月
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