人形劇の歴史は古く、約4000年前の古代エジプト文明にも人形を使ったパフォーマンスが行われた痕跡が遺されているそうです。
人形劇は、世界各地でそれぞれの独自の精神文化や地域の風習などをベースに生まれ、受け継がれ、発展してきました。
特にアジアは人形劇の宝庫と言われ、数百〜数千年の歴史を持った人形劇が現在でも各地で上演されています。
今回は、そんなアジアの魅力的な人形劇を3つご紹介します★
ベトナムの水上人形劇(ムアゾイヌオック:Múa rối nước)
ベトナム語で「ムアゾイヌオック(Múa rối nước)」と呼ばれる水上人形劇。
ベトナム北部にある首都ハノイ、ホアンキエム湖畔にある「タンロン水上人形劇場」で鑑賞しました♪
舞台は3~5分の短編が10話以上あって、それぞれのテーマに沿って、民話・習慣・伝説・民族的な話が、ベトナム伝統楽器の軽やかな音色とともに繰り広げられます。
まずは、楽器の演奏と歌です。
人形たちの登場です!
軽快でコミカルな動きは、微笑ましい感じで、楽しい気分になります。
この人形劇は、11世紀頃からベトナム北部の紅河デルタ地帯の村々で行われてきたといわれています。こうやって観光客に演じられるようになったのは、1990年代以降であるとのこと。
人形劇は濁った泥水の水面で行われます。水面が地上に見立てられ、人形たちは様々な物語や説話を演じるのです。
人形を操る操者は、簾の裏に隠れています。人形は長い竿の先に取り付けられていて、操者は竿を持ちつつ、糸を使って首や腕などを動かしていきます。
この人形を操る技術の習得には、簡単なもので1年、複雑なものになると5年もの練習が必要とされるそうです。
上演される演目は、ベトナムの民話・伝説・神話、または、農村の生活の様子などがモチーフ。
演目が終わると、最後に人形を操っていた方たちが出てきました。
こんな足の付け根くらいまで水に浸ってるんですね。。
この緑の建物が、「タンロン水上人形劇場」です。ホアンキエム湖の北、ホーグオムプラザの近くにあります。
チケット代は、1等席が100,000ドン、2等席が60,000ドンです。公演は1日に6回あり、比較的当日でも買えそうな感じです。
写真はハノイ市内の土産物屋さん。水上人形劇の人形が売られています。
この人形、素材はいちじくの木の幹で作られているそうです。また、人形の形や衣装はそれぞれの水上人形劇の劇団によって異なっているのだとのこと。
水上人形劇は、このハノイの「タンロン水上人形劇場」だけでなく、ホーチミンにも劇場があって見ることができます(ホーチミンにあるのは、ロンヴァン水上人形劇場)。
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ミャンマーの伝統糸操り人形劇「ヨウッテー・ポエー」(Yoke thé:ရုပ်သေ)
ミャンマーの伝統糸操り人形劇「ヨウッテー・ポエー(Yoke thé:ရုပ်သေ)」を見ました!
15世紀にその原型が生まれたとされる「ヨウッテー・ポエー」は、18世紀のコンパウン王朝の時代、芸能を奨励する王の下で発展し、王侯貴族から庶民にいたるまで人気を博した伝統芸能。
「ヨウッテー」は”糸操り”、「ポエー」は”祭り”を意味します。
「ヨウッテー・ポエー」は、伝統音楽の演奏と歌に合わせて演じられます。
コミカルに踊る馬と人の人形。
動きが驚くほど表現豊かですね!
人形は13本の糸を操ることによって動かされ、その動きは100以上にも及ぶといいます。
人形は彫り師によって作られるそうです。衣装もなかなかに豪華!
動画のように、劇の途中でたまに上の幕が上がって、人形操り師の姿を観客に見せてくれます。
人形を操るのはかなりの技術、相当な練習が必要と思われます。
舞台の袖では、楽団が生演奏をしています。
「パタラ」という竹や鉄でできた打琴楽器、「ドーバッ」や「ビョウ」といった太鼓、「リンクイン」というシンバルや「チェイナウン」というゴングなどを使って素朴な音楽が演奏されます。
楽器の種類や音楽の雰囲気は、インドよりはインドネシアなどに近い感じ。
劇の内容はビルマ語で演じられているのでよくわからないのですが、コミカルで表情豊かな人形の動きは見ていて楽しく、生演奏の音楽の響きもとても心地よかったです。
世界に人形劇は数あれど、ここまで繊細で豊かな動きをする人形劇はなかなかありません。
「ヨウッテー・ポエー」、ミャンマーに来たら必見です!
劇を鑑賞したのは、ニャウンウーの町の西外れにある「ナンダ・レストラン」
旅行者向けのレストランで、美味しいミャンマー料理を食べながら人形劇を楽しむことができます。
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インドネシアの影絵人形芝居「ワヤン・クリッ」(Wayang Kulit)
ジャワ島やバリ島で行われる伝統的な影絵人形芝居「ワヤン・クリッ(Wayang Kulit)」を見ました!
インドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」を主な演目とした人形劇で、その起源は10世紀にまで遡るそうです。
「ワヤン」は影を、「クリッ」は皮を意味しています。
影絵人形は牛の皮で作られているのでこう呼ばれるのです。
今回観たのは、ジョグジャカルタの王宮北広場の北西にある「ソノブドヨ博物館」の「ワヤン・クリッ」です。
「ワヤン・クリッ」は、本来はヒンドゥー教のお祭りの時に行われるものです。
ここ「ソノブドヨ博物館」で行われる「ワヤン・クリッ」は、もちろん観光客向けですが、内容は本格的なものでした。
会場の入り口では、職人が「ワヤン・クリッ」で使われる人形を作っていました。
20時の開演まで時間があったので、しばらくその様子を眺めました。
人形は牛の皮で作られています。
無数の孔が穿たれ、とても繊細な造形です。完成品には、色とりどりの彩色が施されます。
「ワヤン・クリッ」の人形遣いは「ダラン」と呼ばれます。
ダランは、スクリーンの裏からランプを当て、たくさんの人形を操りながら物語を語っていきます。
「ダラン」の背後では、ガムランの演奏が行われます。
会場の規模によって奏者の数は様々だそうですが、ここ「ソノブドヨ博物館」のガムランは、たくさんの奏者が演奏する豪華なものでした。
スクリーンの裏から見た「ダラン」の動きです。
たくさんの人形を取っ替え引っ換え、回転させたり、ひらひらと揺らしたり、全てひとりで行います。
会場の「ソノブドヨ博物館」は、中心に舞台があり、周り360度を客席が取り囲むという構造になっています。観客は、影絵の観られるスクリーンの表側も、「ダラン」が手を動かしガムラン奏者が演奏するスクリーンの裏側も観ることができるのです。
「ワヤン・クリッ」は、2009年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
ジャワ人の心の芸能である「ワヤン・クリッ」
ジョグジャカルタに行ったら、一度は観てみることをおすすめします!
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