※前回の記事→カラコルムハイウェイ沿いの桃源郷、フンザの「カリマバード」と「アルチット」【パキスタン】
「パキスタン」(Pakistan:پاکستان)北部にある「ギルギット」は北西部山岳地帯の交通の要衝となる町です。
北東へ向かうとフンザやグルミット、南へ向かうとラワール・ピンディーや首都イスラマバード。そして、西へ向かうとチトラールやアフガン国境の町、ペシャワールがあります。
パキスタン北部、ギルギットの町からジープに乗って未舗装の山道を12時間。パンダール湖へと向かいました。
西へと向かう山道の途中には「パンダール湖」という湖があります。
その湖では何と、釣りをすることができるのだそうです。マトンだらけのパキスタン食にうんざりとしていた私は、「魚を食べたい!」という強烈な誘惑に駆られてしまいました。
釣った魚を塩焼きにして食べる。そのことが頭から離れなくなってしまったのです。
ギルギットから西への山道、この道中は旅行者に「シャンドゥール峠越え」と呼ばれています。
シャンドゥール峠への道は未舗装の悪路が続く山岳道路です。パンダールはその行程の中ほど、峠の手前にありました。
ギルギットを朝、ジープで出発しました。荷物で埋め尽くされた荷台に8人が身を寄せ合うようにして座ります。
窮屈だし、砂埃がひどいし、ガタガタ道のため揺れがひどくお尻が痛くなってくるし、そのうち雨まで降り出してくる始末・・・。
悪路を進む6時間はかなりきつかったです。
夕方、私はガイドブックにさえ載っていないような村、ジャンドロートで宿泊しました。
上の写真がジャンドロートです。
ここが私が泊まったホテル?です。
マーダランホテルと言われ、宿泊料30ルピーを支払いましたがどう見てもただの民家でした。
部屋は簡素なものでした。石の土間の上に敷居が敷いてあって、その上にフトンが載っています。キッチンも一緒になっていて、トイレはありませんでした。トイレは外でするのです。
電気はありません。ランプを使います。
夕食はポテトのカレーとオニオン、ローティとチャイが出ました。素朴でおいしかったです。
この村に泊まる外国人は珍しいらしく、大勢の村人が私を見物するためにやって来ました。
その中の一人、アガー・ハーンスクールの先生だという人と話をします。アガー・ハーンとはこの地域の人々が信仰する宗教、イスラム教イスマイリー派の指導者のこと。
先生はアガー・ハーンのことを大仰に称えていました。アガー・ハーンの援助によって、この地域にはいくつもの学校や病院が建てられたのだそうです。
その昔ラージャ(王)が治めていた頃は学校へ行かない者が多かった。だけど、今はアガー・ハーンのおかげで皆学校へ行ける。
先生がそう言うと、宿のオヤジも見物していた村人もしきりに頷いていました。
翌朝8時、私はパンダール行きの乗合ジープに乗り込みます。
このジープは昨日の車よりもさらに厳しく、20人近くが荷台に乗っていました。 座ることも出来ず、立って手すりに掴まりながらの道中です。
断崖絶壁の細い砂利道でガタガタ揺られ、立ちながらジープの荷台に乗るというのは結構な恐怖です。
山道なのでカーブが続きます。その度に車が横転しやしないかと思って冷や冷やしました。
途中の村で1時間の休憩がありました。民家でローティとチャイをいただきます。
チャイは塩入りでした。びっくりしました!
ジープを待っていると同乗の子供たちがちょっかいを出してきます。大人も笑いながら見ています。
子供たちを追っかけまわしたり、ふざけ合ったりしながら休憩時間を過ごしました。
写真はジープの同乗者たちです。誰が親子で誰が兄弟か一目でわかりますね(笑)
湖の畔にある村「パンダール」
5時間ほどでパンダールに到着しました。
私が訪れたのは10月。夏のシーズン中は外国人旅行者で賑わうこのルートも短いシーズンが終わってしまうと閑散としたものです。
空はどんよりと曇り、寒さが身に堪えます。人の姿がほとんど見えないというのも寂しいです。
宿はパンダールの村の中心にあるツーリスト・イン。
夏の間はさぞや快適であろうコンクリ打ちっぱなしの部屋の内装も冬はうすら寒いだけです。
宿のおじちゃんに釣り道具を借りて釣りに行きましたが、少しも釣れず、しかも凍えるように寒いので30分も持たずに引き返してきてしまいました。
だけど、夕食には魚がでましたよ。塩焼きではなく揚げた魚でしたけどね。
翌日は何も無い村をぶらぶらと散歩しました。
だけど、空は曇っているし、寒いし、人もあまり見かけないしで、それ程楽しいものではありませんでした。
写真はロバです。道を歩いていると向こうから可哀想なくらい荷物を満載したロバがやってきました。
いくらなんでもこれはやり過ぎですよね~。
コバルトブルーの湖のほとりに茶色の馬が佇んでいました。
村には商店が3,4軒ほどしかありません。車も一日に10台来るか来ないかです。
山の頂きには雪が掛かっていました。その雪の量は日毎に増えていきます。
あまりに寒いので部屋に戻り、寝袋に包まりながら本を読んで過ごしました。
羊です。
音の無いパンダールの風景、羊の声だけが辺りに響き渡ります。
湖のこっち側にいる羊の群れが「メェェェ!」と鳴くと、向こう側の群れが「メェェェ!」と呼応します。
いつ果てるともなく続く羊たちの鳴き声の掛け合いです。
静止画像のような風景に響き渡る羊の声、シュールな光景でした。
その日の晩、宿にイギリス人の旅行者が来ました。彼は70歳くらいの老人で歩くことも大変そうでした。
彼は1960年代にインドに行ったり、パーレヴィ時代のイランからアフガンへ抜けたりした話をいろいろしてくれました。
翌朝5時にギルギット行きのジープにイギリス人と共に乗り込みました。
イギリス人は一人では荷台に上がれないため、ジープの運ちゃんたちに抱えられて乗っていました。
こんな年でパキスタンを旅するなんてすごいですよね!
ジープは断崖絶壁のガタガタ道を約12時間掛けて走り、ギルギットに辿り着きました。
この後、私は体調を崩しました・・・。
旅行時期:1996年10月