南アメリカ大陸北西部に位置する国「コロンビア(Colombia)」
その第二の都市「メデジン」は、1980年代から90年代半ばにかけて、麻薬組織メデジン・カルテルが暗躍し、”世界最悪の殺人都市”とも呼ばれるほど、治安の悪い都市でした。
現在は、カルテルも崩壊し、政府の治安改善の努力も功を奏した結果、観光客が訪れるレベルにまで治安は改善しているのですが、依然として殺人事件が頻発する治安の悪い地区も存在しています。
その代表格が「コムナ13(Comuna13)」と呼ばれるエリア。メデジンで最も治安の悪いと言われている地区です。
今回、この「コムナ13」に訪問しました。
治安の悪いという「コムナ13」ですが、近年、スラム住民のインフラ整備の一環として、また、治安改善の施策として、「屋外エスカレーター」が設置されています。
屋外エスカレーターがある所は安全だということで、行ってみることにしたのです。
「コムナ13(Comuna13)」へのアクセス
「コムナ13」の最寄駅、メトロBラインの「San Javier」駅
「コムナ13」は、メトロBラインの終点「サン・ハビエル(San Javier)」駅から徒歩15分ほどの場所にある地域。
治安に心配がある地域ということで、今回はメデジンで出会った日本人旅行者の方と一緒に行きました。
もっと早い時間に行くつもりだったのですが、時刻は既に午後6時近く。夕暮れ時ということで、かなり不安を感じつつの訪問です。
「コムナ13」は結構広いエリア
最初、GoogleMapで「Comuna13」と検索し、ポイントされた地点を目指していたのですが、いつまでたっても屋外エスカレーターらしきものは見当たらず。
犬を散歩させているおばちゃんがいたり、子供たちが遊んでいたりと、あまり危険な香りはしてこないのですが、迷っているということと、次第に薄暗くなってくる風景を見るにつけ、危機感を覚え始めます。
そこで、その辺に居た地元の人に聞いてみることにしました。
「ドンデ・エスタ・コムナ・トレセ?(コムナ13は、どこ?)」
すると、地元のおばちゃん、ここがコムナ13だと言います。
どうやら、GoogleMapでポイントされた地点は、コムナ13の中心だったようで、屋外エスカレーターは全然別のところにある様子。
それではと、
「ドンデ・エスタ・エスカレーター?(エスカレーターは、どこ?)」
と聞いてみると、ここを真っ直ぐ行って、右に曲がって、みたいな道順をおしえてくれました!
教えられた通りに進んで、わからなくなったら、別の人に同じように聞いて、を繰り返しつつ進んでいくと、屋外エスカレーターの案内表示を発見!
後は、表示通りに進んでいくだけ。
教えてくれた地元の人たちに感謝です★
エスカレーターのある場所に向かいます。
女の子たちがはしゃいでいました。
「コムナ13」の町を屋外エスカレーターを目指して歩いていきます。
ちなみに、“コムナ”とは、本来は共同体の意味ですが、メデジンでは、麻薬カルテルや反政府ゲリラに住む家を奪われた国内難民のために政府が提供した居住区のことを言うのだとのこと。
ちなみに、コロンビアは、世界で最も難民が多い5カ国のうちのひとつで、約700万人の難民がいると言われています(他の4カ国は、コンゴ、シリア、ナイジェリア、スーダン)。
コムナ13を題材にした曲
ここ、「コムナ13」は1980年代から90年代前半、麻薬組織間の抗争の舞台となり、1991年の統計では、10万人あたり380件の殺人事件が発生するなど、世界最悪の治安状況だったそうです。
現在では、治安はかなり改善され、2017年は10万人あたり21件まで減少したのだとのこと。
未だ、メデジンの中でも最も治安の悪い地区である「コムナ13」ですが、写真のように女の子たちが普通に歩けるほどには安全になっている様子です。
※ちなみに、東京の10万人あたりの殺人事件件数は0.4件。
エスカレーターへと続く通りは、グラフィティ・アートがたくさん!
エスカレーターへと続く通りは、グラフィティ・アートがたくさん!
案内表示に従って歩いて行くと、塀にカラフルなグラフィティ・アートがたくさん描かれた通りにぶつかりました。
ここが、屋外エスカレーターへと続く通りのようです。
欧米人らしき観光客の姿もちらほらと見掛けました。
階段でのんびりスマホをいじる女性たち
カラフルでポップな壁画とベンチ
モノトーンの壁画も格好いい!
首都ボゴタ旧市街のストリート「Carrera2」と同じように、通りの塀には、様々なグラフィティ・アートが描かれています。
コムナ13の界隈
坂を登ってエスカレーター乗り場へ
アートには、それぞれメッセージが込められているそう
ペンギンとチンパンジーの絵
カラフルな象が描かれていました。
様々なモチーフで描かれた色とりどりのグラフィティ・アート。
意味を読み解くことはできませんでしたが、アートにはそれぞれメッセージが込められているのだそう。
見ていて楽しいです★
グラフィティ・アートを眺めながら、坂道を登っていきます。
屋外エスカレーターの入り口はもうすぐです!
公園の三色すべり台とカラフルアート
公園の向こうにスラムが広がっています。
子供たちが遊んでいます。
サッカーをする子供たち
屋外エスカレーターへと向かう坂道の途中には、グラフィティ・アートがたくさん描かれた公園がありました。
遊具があり、グラウンドがあり、子供たちがサッカーをして遊んでいます。
こういう光景を見ると、この場所は、この時間帯は、それほど危険はないのかなと感じられてひと安心。
エスカレーターに乗ってスラムの上へ
「コムナ13」の屋外エスカレーター
こちらが、コムナ13のインフラ改善、治安改善策として造られた「屋外エスカレーター」
ようやく辿り着きました!
「屋外エスカレーター」は、2011年にメデジン市によって、総工費670万ドル(5億2,000万円)を掛けて建設されました。
6つのエスカレーターが麓からスラムの頂上まで連なっており、全長は384m。30階建てのビルの高さに相当します。
エスカレーターが出来る前は、数百段の階段を30分以上かけて登らなければなりませんでしたが、エスカレーターのおかげで所要時間は6分に短縮。
住民のアクセスが劇的に改善されました。
開通当初は屋根のないオープンエアでしたが、現在は屋根も設置され、雨の日でも快適。
稼働時間は、午前4時から午後11時まで。もちろん、利用は無料です。
エスカレーターの途中にもアートが描かれています。
そろそろ辺りが暗くなってきました。
さっそく、エスカレーターに乗り、上まで上がっていきます。
6台のエスカレーターを乗り継ぐ感じで、上まで進んでいきます。
エスカレーター沿いには旅行者向けのお店がちらほら
カラフルなエンジェルのアート
エスカレーターの壁沿いや、エスカレーターを乗り継ぐ踊り場には、グラフィティ・アートが描かれていて訪れる人の目を楽しませてくれます。
このエスカレーターは、観光客の誘致にも成功しているようで、踊り場には観光客向けと思われるお店がいくつか出店していました。
エスカレーターの頂上に到着!
眼下に広がるコムナ13のスラム
エスカレーターを乗り継いで、コムナ13の頂上に到着!
頂上からは、コムナ13のスラムのパノラマが見渡せました★
辺りは既にだいぶ薄暗くなってきています。
メルヘンチックなアート
エスカレーターの頂上の住民たち
エスカレーターの頂上の様子です。
頂上にもグラフィティ・アートが描かれていて、アートが至る所に描かれた雑貨屋があったり、店の軒先で地元の人たちが駄弁っていたり。
日が暮れ、スラムに灯りが灯り始めます。
屋根の付いた屋外エスカレーターが見えます。
頂上からコムナ13のスラムのパノラマを眺め見ます。
日が暮れ、徐々に薄暗さが増していき、家々に灯りが灯り始めてきています。
スラムの上から夜景を堪能する★
次第に闇に包まれてゆく「コムナ13」
頂上から眺める、コムナ13の夕暮れのパノラマ。
メデジンで一番治安の悪いと言われるこの地域ですが、そんな背景を知りながらこの風景を眺めると、いろいろ想像力が膨らんでしまいます。
スラムの上にもアートが描かれていました。
階段も色とりどり
至る所にアートが描かれています。
コムナ13、頂上の界隈
エスカレーターの頂上にも、たくさんのグラフィティ・アートが描かれていて、いずれも見応えあり!
屋外エスカレーターの頂上には遊歩道が整備されていました。
見晴らしの良い雑貨屋さん
クチバシがすごい、鳥のアート
遊歩道なども整備されていて、今回は夜だったので、エスカレーターからあまり遠くへは行きませんでしたが、昼間なら辺りを少し散歩してみたい気がしました。
街中に明かりが灯った時間帯。既に時刻は危険水域です。
コムナ13の上から見た夜景
すり鉢状のスラムを埋め尽くす街明かり
風景は夜の闇に包まれ、辺りは真っ暗になりました。
スラムの斜面に光り輝く灯りが、まさに星空のようです。
美しい夜景。夜まで待った甲斐がありました!
何枚も写真を撮ってしまいます。
エスカレーターにも明かりが灯っています。
それにしても、見事な夜景です★
ボゴタの夜景もなかなかでしたが、この街の歴史とストーリーを感じさせるコムナ13の夜景。
なかなか感じ入るものがありました。
ちなみに、このエスカレーターの頂上や、エスカレーター途中の踊り場には、自動小銃を持ったポリスがいます。
そのため、エスカレーターの周囲に限って言えば、治安的には問題ありません。
ただし、エスカレーターを離れてスラムの中に迷い込んだら、何が起こるかはわからないのだとのこと。
再びエスカレーターに乗って下界へ
エスカレーターに乗って再び下界へ
ひと通りコムナ13の頂上からの夜景パノラマを堪能した後、再びエスカレーターに乗って下界へ。
サルバドール・ダリの壁画
アートの描かれた雑貨屋でひと休みする青年
エスカレーター沿いのアートな感じのお店
エスカレーター沿いには、観光客向けと思われる売店もいくつかありましたが、旅行者にはこのエスカレーター、まだまだあまり認知されていない様子。
治安があまり良くないというのは事実なようなので、訪問はあまり推奨されませんが、コムナ13を訪れるツアーなども催行されているそうで、個人で行くのが不安な人は利用してみるのもいいかもしれません。
ツアーでは、スラムのの歴史や現状、グラフィティ・アートの意味なども説明してくれるらしいです(たぶん、英語かスペイン語)。
エスカレーターを降り、メトロの駅へと向かいます。
子供連れも、女性も普通に歩いていました。
エスカレーターを降り、通りを歩いてメトロの駅へと向かいます。
既に夜の8時近くになっていましたが、子供連れも女性も普通に歩いていて、治安は大丈夫な雰囲気。
グラフィティ・アートを見ながら駅へ
夜の闇の中で見るアートは雰囲気抜群!
メデジンのスラム街「コムナ13」の屋外エスカレーターと、周辺に描かれたグラフィティ・アート。そして、美しいスラム頂上からの夜景。
他ではなかなか味わえない、貴重なひと時を過ごすことができました★
行きから帰りまで、危険な雰囲気は全く感じられませんでしたが、ひとりで訪問していたら、不安感は数倍上がっていたと思います。同行してくれた日本人旅行者の方に感謝です。
なお、今回、「コムナ13」のエスカレーターに夜に訪問しましたが、エスカレーターまでの道中も安全とは言い切れないので推奨はしません。
エスカレーターを夜に訪問したというネットの情報も皆無でした。
サン・ハビエル(San Javier)でカフェ&ディナー
サン・ハビエルのカフェ
コーヒーを飲んでホッとひと息
夜道を足早に歩いて、メトロの「サン・ハビエル(San Javier)」駅前の繁華街に戻ってきました。
とりあえず、ひと休みということで、地元民御用達っぽいカフェでコーヒーを一杯。
コーヒーは、800COP(27円)。お味はまあまあ。
店内には、カードゲームをやっているおじさん集団がおりました。
駅前通りにある定食屋「Los Arrieros」
夕食は、駅前通りにある定食屋「Los Arrieros」で。
どこにでもありそうなコロンビア定食のお店です。
「Los Arrieros」の店内
「Los Arrieros」のメニュー
メニューを見てもイマイチ料理の内容がイメージできなかったので、ビーフのアサド(焼肉)を注文。
コロンビアのビール「Pilsen」
お飲み物は、コロンビアのビール「Pilsen」
味の印象は特別なものはないですが、ライトで飲みやすいビール。お肉やポテトと良く合います♪
アサドプレート(10,500COP)
こちらが、注文したアサドプレート。
牛肉の炭火焼とフライドポテト、コールスロー的なサラダ、コロンビアの主食であるパン「アレパ」のセットで、典型的なコロンビア定食な感じです。
料金は、10,500COP(360円)です。
お味は、普通に美味しい♪
ビールをぐびぐび飲みながらあっという間に平らげてしまいました!
サン・ハビエル駅前のソーセージ屋台
サン・ハビエル駅前の風景
夕食をいただいた後は、サン・ハビエル駅から「メトロカブレ」の「Jライン」に乗って、ゴンドラの上からの夜景を楽しみました。
翌日は、メデジンを一望できる丘「ヌティバラの丘」に登り、メデジンのお洒落エリア「ポブラド」でメデジン名物「モンドンゴ」を賞味。カフェでコロンビアコーヒーを味わい、夜の飛行機で最後の目的地「カルタヘナ」へと向かいます。
メデジン観光MAP
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