南アメリカ大陸北西部に位置する国「コロンビア(Colombia)」
今回は、メデジンのロープウェイ「メトロカブレ(Metrocable)」をご紹介します。
麻薬王パブロ・エスコバルの死後、メデジンの市政府は治安の改善と貧困層の社会参加、生活水準の向上を図る施策として、都市交通の改革に取り組みました。
その改革の象徴とも呼べるのが「メトロカブレ」です。
メデジンの都市改革の象徴「メトロカブレ」
「メトロカブレ」から眺めたメデジンのスラム
「メトロカブレ」は、2005年に開通したメデジンのロープウェイ。
現在、J,K,L,M,Hの5路線が運行されており、路線の総延長は11.28kmです。
全ての路線は、都市高速鉄道路線であるメトロと接続していて、メトロの走れない山や丘の上とを結び、メトロ路線を補完しています。
メデジンは、標高約1,500mのアンデス高地にあり、周囲を山に囲まれたすり鉢状の形をした盆地に位置しています。
メデジンでは、標高の低い町の中心部に富裕層が、町の外れである山の斜面や丘の上などに貧困層が暮らしており、貧困層が都心にアクセスするには、バスを乗り継いで数時間もかかる状況でした。
貧困層は都心部へのアクセスが難しいことから、都心部での仕事が得られず、ますます貧困が助長され、貧困地域に犯罪が蔓延するという悪循環に陥っていたのです。
そんな状況の改善を図ったのが、2004年にメデジン市長に就任した「セルジオ・ファハルド(Sergio Fajardo)」です。
彼は、治安の改善、貧困層の社会参加、社会分断の解消などを目的として、様々な都市改革を実施。
特に、この「メトロカブレ」の導入は、メデジン都市改革の核と位置付けられ、山の斜面に住む貧困層の都心部へのアクセスを大幅に改善させ(2時間が20分ほどになった)、多くの貧困層が都心部に働きに出られるようになったのだとのこと。
また、「メトロカブレ」沿線には、低所得者地区の教育充実拠点としての図書館公園や広場が整備されたり、アフォーダブル・ハウジング(手頃に取得可能な住宅)などが建設されたりと、低所得者地区の生活水準の向上、治安の改善に大きく貢献しているのだそうです。
メトロカブレ(Línea K)に乗車(Acevedo〜Santo Domingo Savio)
「メトロカブレ」Línea K
さて、いよいよ「メトロカブレ」に乗ってみましょう〜♪
始めに乗ったのは「Kライン(Línea K)」
「Kライン」は、メトロAラインの「Acevedo」駅から、2.1㎞先の丘の上にある「Santo Domingo Savio」まで繋がる路線。途中駅は2駅あります。
乗り場は、メトロの駅と直結していて、メトロと同じICカードでそのまま乗ることが出来ます。料金はたったの2,550COP(88円)。
乗り場には列が出来ていましたが、ゴンドラは次から次へと来るので、すぐに乗車することが出来ます(係員がいて、列を交通整理してくれています)。
ゴンドラは3人掛けシートが向かい合わせになった6人掛け。
一緒に乗った乗客は、家に帰るらしきおばさんや学生風の男性、20代くらいの若い女性など。
みんな、どこにでも居そうな普通の人々です。
山の斜面に並ぶ家並みが見えます。
ゴンドラは「Acevedo」駅を出発し、静かにゆっくりと高度を上げて行きます。
窓からは、オレンジ色の煉瓦造りの建物が斜面に沿って延々と広がっているのが見えます。
静かに進んで行くゴンドラ
メデジンは北部に低所得者層が住んでいます。
ゴンドラの上からは人々の生活の様子が見えます。
ゴンドラからは、人々の生活の様子が垣間見えます。
この辺りは、低所得者層が住む地域。いわゆるスラムと呼ばれる地域です。
途中駅の様子
途中駅に到着しました。
自分たちのゴンドラからは降りる人は居ませんでしたが、他のゴンドラからはちらほら。
家の壁面に描かれたグラフィティアート
すり鉢状に広がるメデジンの街並み
ゴンドラは駅を出発し、再び高度を上げていきます。
眼下に見えるパノラマはどんどん広がっていき、出発地点の「Acevedo」界隈の家並みはどんどん小さくなっていきます。
メデジンのロープウェー「メトロカブレ」から眺めるスラムの風景
メトロカブレの登場により、都心へのアクセスが容易に。
メトロカブレの登場により、山の斜面や山の上に住む低所得者層の都心へのアクセスが容易になりました。
それまでは、バスを乗り継いで行かなくてはならず、現在の5倍以上の時間が掛かっていたそうです。
聞こえてくるのは子供の声と犬の鳴き声
お昼時のまったりとしたメデジンのスラム
継ぎ接ぎの建物が多いです。
乗車したゴンドラは6人とも他人同士だったので、みんな無言。ゴンドラはエンジン音などもないので、車内は静寂に包まれていました。
そんな静寂の中、ゴンドラの下のスラムの街並みからは様々な音が聴こえてきます。
特に目立って聴こえてくるのは、ちょうど学校帰りだと思われる子供たちの黄色いはしゃぎ声。それと、犬の鳴き声もたくさん聴こえてきました。
人々の暮らしの音って、本来この2つがメインなのかもしれないですね。
終点の「Santo Domingo Savio」に到着
学校帰りの子供たちが遊んでいます。
「Santo Domingo Savio」駅前の風景
ゴンドラは、15分ほどで終点の「Santo Domingo Savio」に到着。
特に用事はないですが、駅を降りて少し歩いてみることにしました。
事前の情報だと、治安が悪い場所だから、駅を降りて歩くことはしない方が良いということでしたが、主婦や子供たちも歩いており、ガラの悪そうな人の姿もなく、全然普通の街並みでした。
グラフィティアートが至る所に
食堂の前でおねだりする犬たち
スラムとは言うものの普通の街です。
駅前は雑然とした食堂街になっていて、地元の人たちが簡素な食堂でチキンの定食なんかをいただいていました。
スラムとは言うものの普通の街です。
子供たちもたくさんいて、全然問題ない雰囲気でしたが、事前情報のこともあり、そんなに駅から遠くには行かず、再びメトロカブレに乗って来た道を折り返すことにします。
メトロの「Acevedo」駅
「Acevedo」駅から見た眺め
ゴンドラに乗り、再びレンガ色の街並みが斜面を覆うスラムを眼下に見下ろしながら、メトロの乗換駅である「Acevedo」まで下っていきます。
メトロカブレ(Línea J)に乗車(San Javier〜La Aurora)
「メトロカブレ」Línea J
次に乗ったメトロカブレは「Jライン(Línea J)」
「Jライン」は、メトロBラインの「San Javier」駅から、2.7㎞先の丘の上にある「La Aurora」まで繋がる路線。途中駅は2駅あります。
始めに乗った「Kライン」とは違って、「Jライン」はアップダウンがありました。
「La Aurora」駅
「La Aurora」駅前の風景
「San Javier」から20分ほどで、終点の「La Aurora」に到着。
こちらは、先ほどのKラインの終点「Santo Domingo Savio」とは違って、新し目の団地が林立する区画整理された区域でした。
昼間は長閑な様子
「Santo Domingo Savio」に比べると人の姿は疎らでしたが、子供や家族連れも歩いており、長閑な雰囲気。
こちらも、駅前周辺については、昼間は問題なさそうです。
けれども、駅前に目付きの悪い2人組がいて、こちらをギロっと睨んできたので、夜間はちょっとヤバいのかもしれません。
「La Aurora」から見た風景
あの団地はアフォーダブル・ハウジングでしょうか?
「La Aurora」から眺める風景は、なかなかの絶景でした★
山々に囲まれた盆地を埋め尽くすレンガ色の街並み。
覆い被さるように垂れ込めた灰色の雨雲が、犯罪が多発すると言われるスラムの風景を不気味に彩っています。
病院の屋上から
メデジンのパノラマ
レンガ色のメデジンの街並み
駅のすぐ右手には、大きめの病院があり、その屋上からメデジンのパノラマを見渡すことができます。
高層マンションも全てレンガ色のトーンで統一されているという、何だか不思議な景観です。
メデジンの絶景のパノラマを思う存分味わった後、再び、メトロカブレに乗り、出発駅の「San Javier」へと下っていきます。
再び、メトロカブレに乗り、出発駅の「San Javier」へ
メトロカブレから学校と子供たちの遊ぶ様子が見えました。
何やら大勢の人たちが集まっています。
Jラインのゴンドラから見下ろしたスラムの風景です。
ゴンドラの下には、学校と子供たちの遊ぶ様子が見えたり、何やら大勢の人たちが集まっていたり・・・。
洗濯物を干しているおばさんがいたり、音楽を流しているのが聴こえてきたり。
屋根の上に可愛らしい絵が描かれていました。
洗濯物を干しているおばさんがいたり、音楽を流しているのが聴こえてきたり。
屋根の上に可愛らしい絵が描かれていたり、おじさんが家の修理をするカンカンという音が聴こえてきたり・・・。
見ていて飽きません!
バスはスラムの中にも縦横無尽に走っています。
急斜面のスラムは上下の移動が大変。「メトロカブレ」はその解決策を提示しました。
スラムの中の道路にバスが走っているのが見えました。急斜面の麓から山の上まで延々と連なる階段も見えます。
メトロカブレが開通するまで、このスラムの住民のバスを乗り継いだり、延々と連なる階段を歩いたりと、かなり不便だったのだとのこと。
メトロカブレの開通は、彼らの生活を一変させたのです。
メトロBラインの「San Javier」駅
メトロBラインの車内
ゴンドラは、メトロBラインの「San Javier」駅に到着。
「La Aurora」の住民たちは、メトロカブレで「San Javier」まで降りてきて、ここでメトロに乗り換え、都心部へと向かいます。
便利で快適なメトロカブレ&メトロに乗り、たったの2,550COP(88円)で都心へとアクセス!
夜のメトロカブレ(San Javier〜La Aurora)
夜の「San Javier」の街
メデジンの絶景のパノラマをゴンドラに乗りながら眺めることができる「メトロカブレ」
もちろん、夜景も見事だということで有名です。
夜8時頃、「Jライン」に再び乗って、ゴンドラの上からの夜景を眺めてみることにしました。
夜のメデジンのロープウェー「メトロカブレ」の風景①
ゴンドラは、「San Javier」駅を出発し、ぐんぐんと高度を上げていきます。
窓の外に広がる光の海。家や街灯のオレンジ色の灯りが星のように輝いていて、とても綺麗です★
夜のメデジンのロープウェー「メトロカブレ」の風景②
夜のメトロカブレの乗客も、昼間と変わらず、おばちゃんとか学生とか、若い女性とか、全然普通な感じの人たちばかり。
ゴンドラの乗客だけ見てると、行き先の「La Aurora」が治安が悪い地域であるとは、全然思えない感じです。
夜のメデジンのロープウェー「メトロカブレ」の風景③
ゴンドラの車内、20代くらいの女の子がスマホで誰かと話をしていました。
YOU TUBEを見ている青年がいたり、音楽を聴いている男性がいたり、窓の外の夜景をぼんやりと眺めているおばさんがいたり。
日本と変わらない、都会の日常風景です。
夜景を眺めながら「La Aurora」へ
美しくも恐ろしげなメデジンの夜のスラムの夜景
終点の「La Aurora」に到着するも、改札の外には出ず、再びゴンドラに乗って麓の「San Javier」へと戻ります。
メトロカブレから見た夜のメデジンの風景は、かなり見応えあり!
治安の心配な夜でも安全に夜景を楽しめるのでオススメです♪
メデジンのロープウェイ「メトロカブレ(Metrocable)」
ゴンドラの眼下に見える、山々に囲まれた盆地を埋め尽くすレンガ色の街並みは、メデジンを象徴するような風景。必見です!
スラムの生活の様子や、メデジンの都市改革の一端を垣間見ることができる「メトロカブレ」は、メデジンの中でも一番見応えのある、そして、必ず訪れるべき見どころだと思います。
メデジンに訪問したら、他の観光名所を差し置いてでも、「メトロカブレ」に乗ってみることをオススメします★
メデジン観光MAP
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