中央アジアの国「キルギス」
その首都ビシュケクから東に400㎞ほど、イシク・クル湖東端に、キルギス第4の町「カラコル」(Karakol:Каракол)はあります。
イシク・クル州の州都でもあるこの町の人口は約6万7,000人。
標高は1,720mの高原都市で、天山山脈へのトレッキングルートの拠点にもなっています。
この「カラコル」の街の様子と見どころについてご紹介します★
①マダヌール・ホテル
こちらは、宿泊した「マダヌール・ホテル(Madanur Hotel)」
ホテル検索サイト経由で予約して、一泊朝食付きで1,725キルギスソム(2,932円)
町外れにあり、街の中心から徒歩12分ほどかかるのが玉に瑕ですが、部屋は清潔でシャワーの出もそこそこ。スタッフの感じも良く、なかなか良いホテルでした。
こちらは「マダヌール・ホテル」の朝食バイキング。
あまり充実しているとは言い難いラインナップで、食堂にハエが多かったのがマイナスポイント。
ホテルの受付スタッフの女の子。
彼女も、他のスタッフも感じの良い対応をしてくれました。
トレッキングの際には荷物を預かってくれます。
カラコルは、町の北東から南西にメインストリートである「トクトグル通り」が走っていて、宿泊していた「マダヌール・ホテル」は、トクトグル通りの南西の端にあります。
そこから中心街までは、歩いて12分ほど。
のどかな風景が続きます。
カラコルは19世紀にロシア人によって建設された歴史の新しい町。
20世紀初頭に中国(当時の清)のイスラム教徒(ドゥンガン人)が弾圧から逃れて移住してきて、その後もウイグル人やウクライナ人などが移住するなど、多民族都市となっています。
ちなみに、ソビエト時代の1941年から1991年までは、町の名称は「プルジェバリスク(Przheval’sk:Пржевальск)」と呼ばれていたそうです。
「プルジェバリスク」の名前は、この地域で活躍したロシアの探検家・地学者・軍人の「ニコライ・プルジェバリスキー(1839-88)」にちなんで付けられたのだとのこと。
なお、プルジェバリスキーの墓は、カラコルから車で20分ほどの場所にあり、そこには博物館も併設されているのだとのこと。
②ロシア正教教会(聖三位一体教会)
中心街からトクトグル通りを南へ二区画入った辺りに、カラコルの観光名所のひとつ「ロシア正教教会(聖三位一体教会) 」があります。
1870年代に煉瓦で造られ、1880年に地震で倒壊した後、1897年に木造で再建されたのが現在の教会。
教会の内部の装飾も美しいとのことですが、残念ながら訪問時は入り口が閉まっており、中に入ることは出来ませんでした。
カラコルに現在住むロシア人は町の人口の1割ほどに減っているとのことですが、ミサの際には多くの正教徒が訪れ、堂内は荘厳な雰囲気に包まれるとのこと。
③マキシ・バザール
ロシア正教教会から北へ1区画向かった所にあるのが「マキシ・バザール」
カラコルには、街の外れに大きなメインバザールがあるそうですが、中心部にあるこの「マキシ・バザール」は、コンパクトなバザール。
訪問したのが午後遅い時間というせいもあったのか、買い物客はそこそこいたものの、大賑わいという感じではありませんでした。
バザールには、野菜や果物などの青果、穀物や調味料、生活雑貨などが売られていました。
ちなみに、カラコル近郊には中央アジア最大と言われる家畜市場「マル・バザール」が毎週日曜日に開かれるそうですが、残念ながら日程が合わず、見ることは出来ませんでした。
「マキシ・バザール」の一角に、ハンディクラフトショップがありました。
さっそく中に入ってみます。
店内はこちんまりとしており、おばちゃんの店員さんがひとり。
店内には、キルギス名産の羊毛フェルト製品を中心に雑貨がたくさん並べられていました。
上の写真は、キルギスの伝統工芸品、羊毛フェルトでできた絨毯「シルダック」です。
「シルダック」は、遊牧民の移動住居「ユルタ」の中心に敷かれるラグで、部族や家族ごとに独自の模様があるのだとか。
「シルダック」を作る際に素材となるフェルトは、染色した羊毛を重ね、熱した石鹸水を用いてフェルトにしていく「キイズ」という伝統技法が用いられており、この技法はユネスコの無形文化遺産にも登録されているのだそうです。
ちなみに、「シルダック」とは、”縫い合わせる”という語から生まれた名前だそうで、色違いの2枚のフェルトを刺し子縫いによって縫い合わせて作ることが、その名の由来なのだとか。
さすがに絨毯は高いし値段もかさばるので買えませんでしたが、クッションサイズの敷物をひとつ購入。
黄緑とオレンジ色の個性的なカラーリングがなかなかGoodです★
もうひとつは、フェルト製のミニユルタ。
キルギスらしい、手頃なお土産です。
シルダック敷物とミニユルタ合わせて、600キルギスソム(1,020円)でした。
④ドゥンガン・モスク
カラコルの町の中心、「トクトグル通り」沿いにある「ツム百貨店」から東に1ブロック、北に4ブロックほど歩いた右手に、カラコルの町の見どころのひとつ「ドゥンガン・モスク」があります。
「ドゥンガン・モスク」は、清朝の迫害を逃れてこの地にやって来た中国系イスラム教徒「ドゥンガン人」が1910年に建立したモスク。
正式名称は「イブラヒム・アジュ記念中央モスク」と言うようです。
44本の柱を持つこのモスクは木造で、釘を一本も使わずに造られているのだとのこと。
中国風の屋根をいただいた建物はとてもカラフル。
屋根裏には精緻な彫刻が施されており、見応えがあります。
一見するとモスクには見えない外観ですが、脇にはミナレットがあり、1日5回の礼拝時間には、ミナレットから礼拝の呼び掛け「アザーン」の朗唱が響き渡ります。
なお、キルギスはイスラム教徒が多数を占める国なので、カラコルにはこの「ドゥンガン・モスク」以外にも多数のモスクがあります。
「ドゥンガン・モスク」を見た後、再びメインストリートの「トクトグル通り」へと戻ります。
⑤ツム百貨店
メインストリートの「トクトグル通り」に戻り、街の中心にある「ツム百貨店(ЦУМ)」を覗いてみることにします。
「ツム百貨店」という百貨店は、モスクワにもあり、キルギスの首都ビシュケクにも、ウズベキスタンの首都タシケントやサマルカンド、カザフスタンのアルマトイにもありました。
「ツム」がどういう意味なのかはよくわかりませんが、ソビエト時代に作られた百貨店なのかもしれません。いずれも庶民的な品揃えの百貨店でした。
「ツム百貨店」の内部の様子です。
衣料品、化粧品、文房具、生活雑貨、電子機器、おもちゃ、土産物などの小さな店舗が並んでいますが、フロアー全体が薄暗い感じで、飾り気が無く無機質で、お客の数もまばら、店員さんもやる気のない感じで、どことなく旧ソビエト時代を感じさせる百貨店でした。
百貨店内には、土産物屋が数店舗あったので少し物色してみました。
品揃えはイマイチ。値段も少し高めの印象で、店員さんも全くやる気のない雰囲気だったので、ここでは購入せず。
ある意味、旧ソビエト圏の雰囲気を感じることができた場所だったかもしれません。
こちらは、「ツム百貨店」前の交差点。
写真の手前に「ツム百貨店」があり、前を横切っているのがの「トクトグル通り」
通りの向こう側に「マキシ・バザール」があります。
この交差点から南西へ30mほど歩いたところに、JICAの一村一品プロジェクトの支援を受けたブランドショップ「一村一品ショップ」があります。
⑥一村一品ショップ
こちらが、「一村一品ショップ」
その地域発の商品の開発や販売を通して地域を活性化させる「一村一品運動」(OVOP)のアプローチにより、JICAは2007年にイシククル州の生産者たちの組合「一村一品組合」を設立させました。
設立当初の登録生産者は、46団体、190人。そのほとんどが女性であり、彼女たちが伝統的に行ってきたフェルト手工芸にJICAは着目し、その組織強化や品質向上を目指してきたのだそう。
その「一村一品組合」の生産者たちが作る商品の販売拠点となっているのが、2011年にオープンした、この「一村一品ショップ」です。
また、JICAは、良品計画のブランドMUJIとの協力プロジェクトも開始。2011年からは「一村一品組合」の生産者たちが作った羊毛商品が無印良品にて販売開始され、現在ではイシククルブランドのフェルト製品は無印良品の定番商品となっているのだとのこと。
なお、「一村一品ショップ」は、現在ではビシュケクにも2店舗オープンしており、登録生産者の数は136団体、約1500人にまで増えているのだそうです。
「一村一品ショップ」は、お店の外観も店内もとてもお洒落な雰囲気。
店内には、羊毛フェルトで作られたカラフルなスリッパや帽子、小物入れ。羊毛フェルトでできた絨毯「シルダック」、MUJI×JICAプロジェクトで作られた無印商品向けのフェルト雑貨(動物の人形やポシェットなど)、アリシュ村で作られた「SAORI」という織物製品。
また、果実を使ったジュースやジャム、蜂蜜などの食品。タスマ村で作られた「シャカル」という薬草を燃やした灰を煮立てて作られる石鹸など、様々な商品が並びます。
すべて、オールハンドメイド。キルギスの地元の女性たちが作った製品です。
今回、「一村一品ショップ」で購入したのは、この3点。
フェルト製のスリッパと白い蜂蜜、蜂の巣を使った石鹸です。
お値段は、3つ合計で1,300キルギスソム(2,210円)
特に、白い蜂蜜はかなり美味しかったのでオススメです。
白い蜂蜜は、普通の水あめ状の蜂蜜と違って、結晶化していてピーナッツクリームやマーガリンのような感じ。
なめらかでクリーミィーで、お味もしつこくなくさっぱりとした甘さなのが特徴です。
もっとたくさん買っておけばよかったと思えるほど、美味しい蜂蜜でした。
⑦ザリーナ
ディナーは、「トクトグル通り」沿いにあるレストラン「ザリーナ(Зарина)」でいただきました。
キルギス料理から西洋料理までメニューの種類が豊富な、カラコルでも大きめのレストランです。
このお店には、滞在中2回訪問しました。
店内は木目調の山小屋風でそこそこの広さ。
団体客の利用も多いようで、訪問した時、ちょうど西洋人の年配客のグループがおりました。
地元のキルギス人らしきカップルや家族連れ、仕事仲間らしき男性の2人組など、客層は幅広い様子。
入り口には、「一村一品ショップ」のフェルト製品や蜂蜜、石鹸なども売られていました。
お飲み物はビールを注文しました。
キルギスは意外にも美味しいビールが安く飲める国で、イスラム教徒が多数派の国にもかかわらずビールを愛飲する人は多い様子。
商店には小ぶりの瓶ビールが100円ほどで売られています。
ビールは、地元キルギス産のものやウズベキスタン、中国、ロシアのビールなど種類も豊富。
特にロシアのバルティカビールは人気のようなので注文してみることにしました。
バルティカビールには、アルコール度数の違いにより、No.0〜9と20の10種類のビールがあるそうですが、女性の店員さんがNo.9を勧めてきたので、それを注文することに。
バルティカNo.9のアルコール度数は8%。炭酸は強くなく泡持ちも長くはないものの、爽やかさと辛さ、甘さが同居した複雑なお味のビール。
独特な味わいですが、かなり美味しい好みの味のビールでした。
さあ、お料理です!
こちらは、ピクルスと煮込んだ牛肉とポテトフライ「アズゥ(Азу)」
ピクルスの酸味と牛肉の旨み、ボリュームのあるポテトに爽やかな玉ねぎ。
うん、これは美味しいです★
ロシア風のトマトベースのミネストローネ「サリヤンカ(Солянка)」
トマトベースのスープの中に野菜や牛肉がどっさりと入った具沢山スープ。
卵や香菜なんかも入ってバラエティーに富んだお味です。
体がポカポカと温まる美味しいスープです。
こちらは、「アシュランフー(Ашлянфу)」
カラコルの名物料理で、中国系イスラム教徒「ドゥンガン人」の料理であるとのこと。
酸味と辛味のあるスープの中に、うどんのような小麦粉の麺とジャガイモのでんぷんで出来たところてんのような麺の2種が入っている冷麺で、これが本当に美味しい★
羊肉中心の脂っこい料理の多いキルギスの食事の中で、この「アシュランフー」のさっぱり感は格別です!
こちらは鶏肉のバーベキュー。
キルギス料理ではないような感じでしたが、ニンニクが効いていてなかなか美味でした。
キルギスはウズベキスタンと同じで、お茶にはグリーンとブラックの2種類あります。
ウズベキスタン同様、キルギスでもグリーンティーの方が主流のようです。
日本のほうじ茶のようにあっさりしていて、ゴクゴクと飲むことができ、お料理にも合います。
料金は、
「アズゥ」と「サヤリンカ」とビールで、471キルギスソム(800円)
「アシュランフー」と鶏肉のバーベキューとビール、お茶、それとお土産の石鹸1つで、860キルギスソム(1,462円)
でした。
さて、夕食を済ませ、ホテルへと戻ります。
夕方のカラコル。街の向こうには天山山脈の白い峰々が薄っすらとオレンジがかって見えています。
「マダヌール・ホテル」の向こうに沈んでいく夕陽。
カラコルの夏の1日が今日も終わりました。
日が沈むと、街は中心街を除いて真っ暗になり、とても静かになります。