ラダック地方(Ladakh:ལ་དྭགས་)は、インド北西部、ジャンムー・カシミール州のヒマラヤ山脈に囲まれた高地にあります。
ここはチベット文化の西の端。インド領であるラダックは、中国のチベット本土よりも、その伝統文化が色濃く保持されているといわれている場所です。
今回は、ヘミス・ゴンパとスタクナ・ゴンパです!
ヘミス・ゴンパ(Hemis Gompa)
へミス・ゴンパ
レーの南東約45キロにある「カギュ派」最高位のゴンパが、この「へミス・ゴンパ」です。
17世紀、ラダック王国最盛期の王「センゲ・ナムギェル王」によって招かれた「タクツァン・レーパ」によって創建されたゴンパで、500人ほどの僧が修行を行っているのだそうです。
「ツォカン」のお堂の釈迦牟尼
「ツォカン」のお堂にある黄金の釈迦牟尼です。皆さん、読経をされていました!
この「へミス・ゴンパ」では、あまり多くのお堂を見せてはもらえませんでした。小坊主たちもいそいそとしており、「鍵を開けて欲しいんだけど」と頼んでも生返事をしたきりで、どこかへと行ってしまいます。
訪れた時間が午後遅くだということもあり、観光客の相手をしている暇はなかったのかもしれません。
仕方なく、私は、この「ツォカン」を見学することだけで満足することにしました。
この「へミス・ゴンパ」では毎年6~7月にラダック最大の祭り「ツェチェ祭」が行われます。
祭りのメインは盛大な仮面舞踏。その神秘的な様子を観に世界中から観光客が押し寄せ、ゴンパの中庭は人で埋め尽くされるのだそうです。
けれども、9月のゴンパは閑散としたもの。
「ツォカン」のお堂にいた小坊主
写真は、私にちょっかいを出し続けた愛嬌のある小坊主です。
彼らにとって訪れる観光客の存在は、変化の少ない日常における、一種のスパイスのようなものなのかもしれません。
彼、嬉しそうでした!
このゴンパには小坊主が多く修行しているようです。
「へミス・ゴンパ」の極彩色の扉
「へミス・ゴンパ」は、街道沿いから外れた岩山に囲まれた場所にあるため、アクセスが困難です。
レーから一日2便のミニバスが走っているのですが、私は別のゴンパから歩きとヒッチハイクでここに辿り着きました。
帰りの交通手段もなかったのですが、ちょうどリッチなインド人の観光客がジープをチャーターして見学に来ていたため、ついでに乗せてもらってレーに帰りました。
もし、彼らがいなかったらお寺に泊まることになったと思います。
スタクナ・ゴンパ(Stakna Gompa)
スタクナ・ゴンパ
「スタクナ・ゴンパ」はティクセ・ゴンパから南東へ5キロ、街道からインダス川を渡った向こうの岩山の上にあります。
「スタクナ・ゴンパ」はカギュ派のゴンパ。17世紀初頭の創建で現在300名の僧が所属しているのだそうです。
スタクナ・ゴンパへの吊り橋
明るい灰色に光り輝くインダス川。そこに架かる吊り橋を渡り「スタクナ・ゴンパ」へと向かいます。
吊り橋には五色のタルチョがバタバタとはためいておりました。
対岸の荒野の中に、ぽっかりと島のように建つ岩山の上に白い小さなゴンパが見えます。
あれが「スタクナ・ゴンパ」です。私は岩山を登り、ゴンパの中に入っていきました。
「スタクナ・ゴンパ」
スタクナ・ゴンパを案内してくれた僧たち
「スタクナ・ゴンパ」は「ティクセ・ゴンパ」とは異なり、ほとんど観光客が訪れることはないようです。
中に入るとすぐに口髭を生やしたおじさんの僧が現れました。小柄で痩せぎすの、まじめそうなそのおじさんは、親切にも、お堂をひとつひとつ案内してくれました。
写真は、私の持っていたガイドブックを興味深そうに読む僧たち。
たくさんの仏像やら、ダライ・ラマの写真やら、いろいろなものが飾られています。
仏画と黄金色の仏塔
私はおじさんに付き従い、白い外観の「スタクナ・ゴンパ」内部のお堂に入っていきました。
すると、周囲はいきなり豪華絢爛とした極彩色の世界に埋め尽くされます!
四方の壁と天上に隙間なく埋め尽くされた仏画、キラキラと輝く黄金の仏像、緻密に描かれた曼荼羅やタンカ・・・。
眩いばかりの色彩の狂瀾です!
ラダックのゴンパはどれもそうですが、外観のモノトーンぶりと内部の煌びやかさとのコントラストが強烈。
延々と続く単調な色彩の外の荒野から、お堂に一歩足を踏み入れたときのインパクトは、凄まじいものがあります。
スタクナ・ゴンパから見た上ラダックの荒野
荒野とポプラの木々と、緩やかに流れるインダス川
「スタクナ・ゴンパ」から見える上ラダックの風景です。
高度3,500メートルの静寂。 強い日差しと冷たい風が生命を脅かす、不毛の岩山と岩漠に囲まれた鉱物世界です。
人や動物、植物といった生命は、そんな苛酷で無機的な大自然の中、身を寄せ合うようにして生きているのです。
旅行時期:2003年9月