インド4大古典舞踊のひとつ「カタカリ」
ケララ州最大の都市「コーチン」のエルナクラム駅近く、 天幕の張られた屋外の小屋「See India Foundation」で、私は「カタカリ」を見ました。
インド4大古典舞踊のひとつ、カタカリ(Kathakali കഥകളി)
メーキャップする役者
私が建物に入って行った時、舞台では役者がメーキャップをしている最中でした。
「カタカリ」は日本の歌舞伎に似ています。派手な隈取を顔に施し、動くのが大変そうなほど重々しく豪華な衣装を身に纏います。そして、演者は全て男性です。
入念なメーキャップ
メーキャップは繊細で入念なものでした。
ココナツの染料で目を吊り上げ、口を大きく見せます。頬っぺたに派手な飾りをつけ、顔も大きく見せます。目にはスパイスを入れ、その充血により表情を豊かにしようとしています。
黒、緑、白、赤、黄・・・。様々な染料で丁寧に塗られていく顔。
話によるとこの化粧は約6時間もかかるのだそうです。
既に化粧はだいぶ出来上がってはいましたが、完成するまでには、それからさらに1時間ほどもかかりました。
このメーキャップも「カタカリ」を鑑賞するということの一つに含まれてはいるのですが、この屋外の会場、なにしろ蚊が多い・・・。
私は開演までの1時間、しつこく付き纏う蚊を追い払い続けることになるのでした。
仕上げの隈取り
メーキャップが終わると演者は一旦、舞台の袖に退きました。そして、代わりに司会者らしき人が現れ「カタカリ」とは何ぞやということを長々しく語り始めました。
「カタカリ」は16世紀にケララで生まれた舞踊劇です。
カタは物語、カリは舞踊を意味すると言います。
「カタカリ」もやはり「バーラタナティアム」と同様に宗教的な色彩が濃く、その演目は「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」などの古代叙事詩を題材にしたものが多いそうです。
こういったひと通りの説明を終えると、司会者は踊り手の一人を舞台に呼びました。
「カタカリ」の踊り手は手指や体の動き、表情によって感情を表現し物語を演じるといいます。どうやらその踊り手は、それぞれの感情表現を実演して見せてくれるようです。
カタカリのパントマイム
司会者が、「怒り」と言います。それに呼応した踊り手が「怒り」の表情を表します。
吊り上がった目尻。大きく見開かれ、赤く充血した白目。
うーん、「怒り」です。
更に司会者が、「笑い」「喜び」「悲しみ」「恐れ」などと言います。
次々に表情を変える踊り手・・・。
様式化されたそれぞれの感情表現はわかりやすく、そして、意外とコミカルでした。
踊り手は感情表現以外のパントマイムも見せてくれました。
「蛇」や「魚」などの動物の動き、「蓮の花の開花」や「蓮の花に蜂が蜜を吸いに来る場面」などといった複雑な情景も表情や体の動きなどで表現していきます。
かなり長い前置きで、たくさん蚊に刺されていた私は、いい加減早くして欲しいとも思いましたが、なかなか興味深いレクチャーではありました。
カタカリの踊り手登場!
いよいよ始まったカタカリの踊り。巨大な太鼓と小さなシンバルに合わせて踊り手が登場してきます。
ド派手な衣装です!!
ドンドコ叩く太鼓に合わせ、ゆらゆらゆっくりと踊りますが、時々急にメリハリをつけた素早い手や顔の動きをします。
「カタカリ」男女の掛け合い
途中で、女役の踊り手が出てきました。男役に比べるとちょっと地味です。
彼らは、恋愛やら戦いやらといった古代叙事詩の物語を静かに演じ続けます。その踊りの動作の中には、先ほどレクチャーされた手指や表情によるパントマイムが駆使されているのです。
演技は1時間ちょっと続きました。
様式美に溢れた、重厚で力強い、そして、ときにコミカルでユーモラスなその舞踊・・・。
それは大胆で優雅な「バーラタナティアム」とは、また違った魅力がありました。
そして終了後、「カタカリ」に見入っていた私は、蚊にたくさん刺されていることに気がつきました。
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