ソウルの漢江の南、オフィスビルやショッピングモールなどが建ち並ぶ「江南(カンナム)エリア」。その一角にぽっかりと緑の空間が広がっています。
李氏朝鮮第9代王成宗と継妃である貞顕王后の陵墓「宣陵(ソルルン)」と、第11代王中宗の陵墓「靖陵(チョンヌン)」です。これらの陵墓は、世界遺産にも登録されています。
今回は、「宣陵・靖陵(선릉・정릉)」についてご紹介します。
陵墓一帯は約19万平方メートルにも及ぶ広大な緑地帯。
3つの陵墓があるため、三陵(サムヌン)公園とも呼ばれているそうです。
成宗の陵墓「宣陵(ソルルン)」を歩く
成宗の陵墓「宣陵」
第9代王の成宗の陵墓「宣陵」です。1495年の造営。
「宣陵」は、写真の成宗の陵墓と継妃である貞顕王后の陵墓の2つでワンセットになっています。これは「同原異岡陵」と呼ばれる形式だそうです。
成宗は、李氏朝鮮の法典である「経国大典」を始めとした多数の書物を編纂させるなど、文化政策を拡大させた王として知られています。また、崇儒抑仏政策(儒教を重視し、仏教を軽視する政策)を徹底的に実践したことでも有名です。
成宗の時代は、李氏朝鮮500年の歴史の中で最も安定した時代だったそうです。
「宣陵」の石像群
成宗の陵墓「宣陵」
「宣陵」の石像群
なんか、石像がいっぱい立っているのが見えますね。
武官や文官、馬や羊が王を守っています。
この陵墓がある部分は聖域であり、立ち入りは禁止されています。
左下の写真の左手前に石の台がありますが、あれは「魂遊石」というものだそうで、あの下に地下の石室へとつながる通路が隠されているのだそうです。
貞顕王后の陵墓
貞顕王后の陵墓の石像
「宣陵」のかたわれ。貞顕王后の陵墓です。
階段を登って陵墓を見てみると、 修復中なのか、灰色の覆いを被せられ、見えなくなっていました。
中宗の陵墓「靖陵(チョンヌン)」を歩く
中宗の陵墓「靖陵」
第11代王の中宗の陵墓「靖陵」です。1562年の造営。
「靖陵」は、中宗の陵墓のみが単独である「単陵」と呼ばれる形式です。
中宗は、1506年のクーデター(中宗反正)によって擁立された王です。即位した経緯からして波乱含みでしたが、彼の治世は政局が混乱し、また北方の女真族の侵入や南方の倭寇の反乱など、社会不安が絶えませんでした。
中宗の陵墓「靖陵」
「丁字閣(チョンジャガッ)」
王の陵墓「封墳(ポンブン)」
この朝鮮王陵、ソウルとその近郊に40基もあるそうです。そのほとんどが世界遺産に登録されています。
王陵は、どれも似たような配置になっていて、その空間構成には儒教の考え方が反映されているのだとのこと。
王陵の空間構成は、基本的に3つの空間に分けられます。
「進入空間」と「祭祀空間」と「陵寝空間」です。
「進入空間」は、祭祀の食事の準備などが行われる「賽室(チェシル)」から、「祭祀空間」との境界にある「紅箭門(ホンサル門)」までを指します。「進入空間」は俗世の空間で、管理人が滞在するのもこの空間です。
「進入空間」と「祭祀空間」の境にあるホンサル門は日本の鳥居に似た朱塗りの門です。上部にはたくさんの矢印のような飾りと太極紋が付いています。
ホンサル門は、聖域に入るための境界の役割を果たしています。
ホンサル門をくぐると「祭祀空間」です。「祭祀空間」は、ホンサル門から祭祀が行われる建物である「丁字閣(チョンジャガッ)」までを指します。
ホンサル門から丁字閣までは、石造りの参道がまっすぐ伸びています。
「祭祀空間」は聖と俗が交わる空間です。
「陵寝空間」は、丁字閣から王の陵墓「封墳(ポンブン)」までを指します。「陵寝空間」は聖域であるため、平時は生者の出入りが制限されるそうです。
「宣陵・靖陵」の概要とアクセス方法
「宣陵・靖陵(선릉・정릉)」のパンフレット
「宣陵・靖陵」は、地下鉄2号線「宣陵駅」8番出口から徒歩5分ほど。
ソウル駅や明洞からなら30分くらいで行けます。
周辺はオフィス街で、休憩がてらに散策するビジネスマンの姿もちらほら。カップルのデートコースにもなっているようでしたし、ランナーも走っているようでした。
ほっと一息できるスポットです。
- 【入場時間】
- 夏季(3月~10月)6:00~20:00
- 冬季(11月~2月)6:30~20:00
- ご利用時間は21時まで
- 休館日:毎週月曜日
- 【観覧料】
- 大人(19~64歳):1,000ウォン
- 子供及び青少年(7~18歳):500ウォン
- ※団体(20人以上):20%割引
- 昼食時間券:3,000ウォン(ご本人に限り、12~13時の間、10回まで出入り可能です。)
- 1ヶ月券:10,000ウォン(ご本人に限り、1ヶ月間ご利用できます。)
「靖陵」の石畳
旅行時期:2010年8月
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