「タイシルク」とは、タイ北東部で古くから作られてきた布のこと。
家内工業製品として細々と受け継がれてきたローカルな工芸品です。
ジム・トンプソンによって復興したタイのシルク
「タイシルク」の一番の特徴は、その「光沢」。
「タイシルク」の特徴について、タイ王国大使館HPでは次のように書かれています。
一口にタイシルクといっても、織り方や色柄は様々ですが、最大の特徴はその「光沢」にあります。タイの蚕は「野蚕」と呼ばれる野生の蚕が中心です。日本の家蚕の糸に比べて、太いシルクの糸を吐くと言われています。それによって、光の反射がより複雑になり、シルク特有のつやがより美しく出るのです。また、シルク糸の美しさのもと「フィブロン」(タンパク質)も太く、独特の光沢を生んでいます。
20世紀の中頃、機械織りによる大量生産布の普及などでタイシルクは衰退の一途を辿っていました。
そんな中、一人のアメリカ人が、このタイシルクを復興させようと立ち上がります。
ジム・トンプソン(James Harrison Wilson Thompson)、1906年アメリカ デラウェア州生まれ。
「タイシルク」と言えば「ジム・トンプソン」がまず思い出されるほど彼の名前は有名です。
ジム・トンプソンは、大戦中、アメリカ軍の諜報機関に所属しバンコクに赴任していました。
終戦後はタイに残ることを決意、以後オリエンタル・ホテルの経営などに携わります。
そんな中、彼は「タイシルク」の魅力に心を奪われ、以後の人生をタイシルクの復興に捧げることとなります。彼は私財を投げ打って「タイシルク」の復興とその売込みに没頭したそうです。
彼の努力により、「タイシルク」は米ファッション業界を中心に注目されることとなり、「ジム・トンプソン」は世界的な人気ブランドとなりました。
ユル・ブリンナー主演のハリウッド映画「王様と私」の衣装として使用されたことも、その人気に拍車を掛けました。
現在では、「ジム・トンプソン」は「タイシルク」の代名詞のブランドとなっています。
最高級のタイシルクブランドとして、タイ国内やアメリカのみならず、シンガポールやマレーシア、ドイツなどにも店舗を持ちオンラインで世界中に販売しているそうです。
しかし、ジムの最後は悲劇的なものでした。
彼は1967年3月26日、マレーシアのキャメロンハイランドで休暇中に謎の失踪を遂げます。
諜報活動絡みの暗殺なのか、身代金目的の誘拐なのか、ジャングルでの遭難なのか・・・。
現在に至るまで、失踪の理由も、その行方も生死も謎のままであるそうです。
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