ガンジスの河口に広がるデルタの国「バングラデシュ」(Bangladesh:বাংলাদেশ)
バングラデシュとはベンガル人の国の意味。カルカッタ(コルカタ)のあるインドの西ベンガル州と民族や文化は同じです。
人とリキシャでごった返すダッカの町と、川の国「バングラデシュ」の船旅をご紹介します。
今回は首都「ダッカ」の喧騒です!
リキシャでごった返すダッカの街並み
ビーマンバングラデシュ航空の小さな機体は着陸態勢に入っていました。窓の外の暗闇には不安を掻き立てるようなオレンジ色の灯りがぽつんぽつんと見えます。
時刻は既に夜の10時過ぎ。町はもう眠りについてしまっているのでしょうか。
バンコクから約1時間、私はバングラデシュの首都「ダッカ」のジア国際空港に到着しました。
バングラデシュの首都「ダッカ」とは?
バングラデシュは川の国。ガンジス川の河口デルタにあるこの国は、国じゅうに川が網の目のように張り巡らされています。山はほとんどなく、一番高い山でも1,230mしかありません。
人口は約1億5千万人。日本よりも多いです!面積は日本の半分以下なので、かなりの人口密度。
国民のほとんどがベンガル人でベンガル語を話し、宗教はイスラムが83%、ヒンドゥーが16%。
バングラデシュは世界の最貧国のひとつとしても知られています。ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行総裁「ムハマド・ユヌス」氏や、アジア最初のノーベル文学賞受賞者「タゴール」もベンガルの人です。
ダッカの町は、どこへ行ってもリキシャと人だらけ!
写真は、ダッカの街のメインストリートである「ノースサウス通り」
通りは、地面の色が見えなくなるくらいたくさんの乗り物で埋め尽くされていました。
鉄板を繋ぎ合わせただけのようなボロバス、もくもくと排気ガスを吐き出している「ベビータクシー」、二頭立ての馬車などもいます。その中でも数が多いのが「サイクルリキシャ」です。
ダッカの町は、サイクルリキシャのベルの音がいつも鳴り響いています。
混雑した道路は無秩序で、車線はあってないようなものです。車やリキシャたちは我先へと空いたスペースを見つけ突っ込んでいきます。歩行者はその合間を縫うように通り抜けていかなければなりません。
私もリキシャの車輪に足を踏まれないよう注意しながら歩きました。
サイクルリキシャに乗る
途中、いくぶん車の流れが良くなったところでリキシャをつかまえました。
私は、リキシャのお兄ちゃんにダッカ最大の港「ショドル・ガット」に行きたい旨を伝え、交渉の末、結局、10TK(27円)ということで話はまとまりました。
私がリキシャの座席に乗るのを確認すると、お兄ちゃんは、細い体に力を漲らせてキーコ、キーコとペダルを漕ぎ始めました。
ダッカでの運転は戦争のようです。混み合った道路にはリキシャとリキシャのぶつかり合うガチャガチャという音が聞こえ、人々がいたるところで罵り合っているのが見えます。
バスやベビータクシーが私の乗るリキシャにぶつかり、強引に追い越そうとしてきます。馬車や材木を運ぶ大八車などの、のろのろと進む車両には容赦ない罵声が浴びせられていました。
「ガンッ!!」
突然、何かがぶつかってきて、私の乗るリキシャが軽く弾き飛ばされました。私は慌てて手すりに掴まります。
ぶつかってきた方を見ると、そこには大型の市バスの姿がありました。
ぶつけられたリキシャのお兄ちゃんは怒ります。バスの運転手を睨みつけ、大声で罵声を浴びせ始めたのです。
けれども、それを聞いたバスの運転手が逆ギレ!
ものすごい形相で運転席から飛び降りると、リキシャのお兄ちゃんに近づいてきて、その顔を思いっきり殴りつけたのです!
もうびっくり!
お兄ちゃんの鼻から血が滴り落ちます。
でも、お兄ちゃんは反撃はしませんでした。ポケットからボロ布を取り出して、おとなしく血を拭い始めるお兄ちゃん。
バスの運転手はそれを見て満足したようです。さっさとバスに飛び乗り、アクセルを思い切り踏み込むと、エンジン音を響かせながら去っていってしまいました。
自分が殴られたわけでもないのに、何だか悔しい気持ちでいっぱい。
聞いた話によると、リキシャの運転手はバスの運転手などに比べて立場がかなり弱く、こういったトラブルにおいても大人しく引き下がることが多いようです。
それに、リキシャという仕事は、地方からやってきた者が何の元手もなく始められる唯一と言ってもいい商売であるとのこと。貧しく後ろ盾も何もない弱い立場なのです。
俯いて血を拭うお兄ちゃんの姿を見て、辛く、暗い気持ちになってしまう私。
けれども、そんな同情や心配は無用でした。
血を拭い終えると、お兄ちゃんは再びペダルを漕ぎ始めました。そして、まるで何事もなかったかのように、さっきにも増して大声で、周りのリキシャやバスに罵声を浴びせ始めたのです!
なんて逞しい! 私は感動してしまいました。
しばらくして、リキシャはショドル・ガットに着きました。
私から約束の10TKを受け取ると、お兄ちゃん、出会った時と変わらない無表情で、首を軽く傾げて礼をして、すぐにペダルを踏みながらダッカの車の海の中にあっという間に消えていってしまいました。
ダッカ最大の港「ショドル・ガット」は道路に負けず劣らず大混雑!
ダッカ最大の港「ショドル・ガット」
戦争のようなダッカの道を抜けて私が辿り着いたのは、ダッカ最大の港「ショドル・ガット」の船着場です。
私は港をぶらぶらと散策し始めました。
すぐ目の前に、茶色く濁ったブリコンガ川の姿が見えます。そして、その水面には川を埋め尽くさんばかりの小舟の群れが。
「ショドル・ガット」は先ほど歩いた道に負けないほど大混雑していました!
3階建ての客船とたくさんの小舟
タクシー代わりの小舟がたくさん
桟橋には白い大きな3階建ての客船がいくつも停泊しています。そして、その周りには小さな小舟が数え切れないくらい浮かんでいるのが見えました。
川の国、バングラデシュでは、船はなくてはならない交通手段です。人々は故郷へ帰るときも、日々の通勤にも船を利用します。
船着場のコンコースは大勢の人々でごった返していて、引越しでもするのかと思うくらいの巨大な荷物が山積みにされていました。
タクシー代わりの小舟をつかまえ、対岸へと向かう
舟に乗り込み、対岸へ出発!
1人を、または大勢を乗せた小舟が次々と岸辺に到着し、出発していきます。
私がそこへ近づいてゆくと、ボートに座っていた船頭たちが一斉にこっちを見ました!
「上物の客が来た」とでも思ったのでしょうか。みんな一様に手を振り回し、私を舟に乗せようとなにやら叫んでいます。
私はそれらの船頭のうち、まじめそうなひとりを選びました。
対岸まで5TK(10円)ということで話がまとまると、私は舟に乗り、ゴザの敷いてある甲板の上に腰を降ろします。
私が座り終えたのを見ると、船頭はおもむろに櫂を水の中に入れ、ゆっくりゆっくりとチョコレートのような色をした川の水を漕ぎ始めました。
川の中も陸の上と同じく大混雑
巨大なフェリーにたくさんの小舟が群がります
大小の舟で埋め尽くされている川。くねくねと舟と舟の間をすり抜け、ゴンゴンと舳先をぶつけ合い、時には罵声を浴びせながら対岸へと進んでいきます。
まるで、先ほどのリキシャでの道中のリプレイです!
クラクションやベルの音がないぶん陸の道よりは静かですが、そのごちゃつき具合と戦争のような激しさはここでも変わりません。ダッカという町はどこへ行ってもこんな調子です。
対岸では沐浴をしている人たちがいました
対岸に近づいてみてびっくり!
大勢の人が沐浴をしていました。バングラデシュはイスラム教徒が多数派。だけど、国民の16%をヒンドゥー教徒が占めています。
このブリコンガ川はヒンドゥー教における聖なる川、ガンジス川の下流にあたります。
彼らは神への祈りと共に沐浴をしているのでした。
旅行時期:2003年8月
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