毎年恒例、10月はインド映画祭!!
今年もインド映画好きにとって秋の風物詩「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」(IFFJ)が開催されましたー。
第5回目の今年は10月7日〜21日にかけて、ヒューマントラストシネマ渋谷で13本のインド映画が上映されました!
※大阪は、シネヌーヴォで10月8日〜21日にかけて上映。
往年のボリウッド映画を彷彿とさせる豪華絢爛なマサラ作品から、実話をもとにしたシリアス・ドラマ。スーパースターと狂信的なファンを描いたサイコ・スリラーや不正と戦う義賊の活躍が痛快なアクションもの、登場人物の複雑な人間関係の描写が見事な家族ドラマまで。
今回私が観た5作品をご紹介します。
もっと観たかった気もしますが、5本ともインド映画の魅力を感じさせる素晴らしい作品でした★
昨年の記事はこちら→インド映画を堪能!インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン
インド映画って、どんな映画?
そもそも「インド映画」ってどんな映画なのか?
知らない方にご説明しましょう。
インドでは、毎年1000本以上の長編映画が制作されていると言われます。
その数はもちろん世界一!
インドは多言語国家であり各地域・言語で映画が作られていて、代表的なのは、ヒンディー語映画、タミル語映画、テルグ語映画、カンナダ語映画。
ヒンディー語映画はその中でも最大の規模を誇り、その中心であるムンバイではインド映画の約50%が制作されていると言われます。
ムンバイの旧名は「ボンベイ」。アメリカの映画のメッカ「ハリウッド」をもじって「ボリウッド」(Bollywood)!
「ボリウッド映画」の特徴と言えば、何と言っても音楽と踊りが盛りだくさんであるということ。
ドラマの最中にいきなり周りの風景がガラリと変わり、ヒーローとヒロインが突如として歌を歌いながら踊り出す様子に、初めて観た時は唖然とさせられました。
けれども、発展著しいインド。
映画もここ数年でかなり進化を遂げています。
ハリウッド顔負けの派手なアクションと最先端のCG技術、エンターテインメント性溢れるストーリー展開、ヨーロッパ映画に引けを取らない社会問題を盛り込んだドラマ性、スタイリッシュな映像美、コメディーからシリアス、アクションまでこなす美男美女の俳優たち。
昔ながらの歌って踊る映画だけでなく、戦争を題材にしたシリアスな超大作から日常のひとコマを扱った私小説風の作品まで、ありとあらゆるジャンルの映画が登場するようになっています。
インドでは映画はまだまだ娯楽の王様。それに、インド映画はインドだけでなく南アジアや西アジア、アフリカ、東南アジア、そして、世界中に散らばるインド系の人々に愛好される市場の大きなコンテンツ。
社会が映画にかける熱意もお金も桁違い!
これからは「ハリウッド」ではなく「ボリウッド」の時代とも呼ばれているのです。
『プレーム兄貴、お城へ行く』( PREM RATAN DHAN PAYO)
さてさて、作品紹介と行きましょう〜♪
まずは、『プレーム兄貴、お城へ行く』( PREM RATAN DHAN PAYO)
往年のボリウッド映画を思わせる豪華絢爛なセットや衣装、華やかなダンスシーン満載の、”これぞインド映画”っていう感じの作品。
主演は「サルマーン・カーン」、ヒロインは「ソーナム・カプール」
監督は「スーラジ・バルジャーティヤ」で、2015年11月公開作品。
2015年のボリウッド興業収入第2位の作品だそうです。
王女(ソーナム・カプール)に憧れる市井の劇団員プレーム(サルマーン・カーン)はひょんなことから王宮を訪れるのですが、ちょうどその時、王は身内の陰謀に巻き込まれて瀕死の重傷を負っておりました。
そこで廷臣たちが考えたのが、王とそっくりな外見のプレームを身代わりに立てること。
厳格な王とは正反対の自由で陽気なプレームが、即席の王となって巻き起こすドタバタ劇。はたまた、敵役の王の弟やその廷臣たちとの激しいアクショシーン。そして、王女との甘いラブ・ロマンス。
インド映画の魅力が詰まったゴージャスな作品です★
ストーリー展開的にかなり無理がある部分もありますが、それはご愛嬌。
インド映画らしい歌と踊りも盛りだくさんで、期待通りのインド映画を堪能できます。
25年以上もトップ俳優のひとりとして君臨してきた主演「サルマーン・カーン」の安定感と、古典的な雰囲気を持ったヒロイン「ソーナム・カプール」の美貌も見どころのひとつ。
『エアリフト 〜緊急空輸〜』(AIRLIFT)
『エアリフト 〜緊急空輸〜』(AIRLIFT)は、「史上最大の脱出作戦」として知られる、1990年のイラクのクウェート侵攻時におけるインド人17万5千人の脱出の実話を映画化した作品。
主演のランジート役に「アクシャイ・クマール」、妻のアムリター役に「ニムラト・カウル」、監督は「ラージャー・クリシュナ・メーノーン」
2016年1月公開作品。2016年前半期のボリウッド興行収入第1位であるとのこと。
1990年のイラク軍のクウェート侵攻の時、現地で暮らしていた在住インド人17万5千人が身動きできない状態になりました。
その際、在住インド人たちを国外へと脱出させるために奮闘したのが、現地クウェートでトヨタの現地エージェントをしていたという「マシュニー・マシューズ」(Mathunny Mathews)という人物。
「アクシャイ・クマール」が演じたランジートは、この「マシュニー・マシューズ」をモデルとしているのだそうです。
様々な障害や危機に直面しながらも、自身の機転と人々の協力によってそれを乗り越えていくランジート。
自己中心的なビジネスマンだった彼ですが、困難に直面するうち、同胞のために命をかけるような人物に変わっていきます。
そんな彼の男っぷりが魅力です!
また、アムリタ役の「ニムラト・カウル」は、『めぐり逢わせのお弁当』でのイラの演技とは打って変わって、夫を支える強い女性を熱演。
映画は、シリアスな実話をもとにしているだけあって、イラク軍侵略の様子や崩壊したクウェート市街の光景などリアリティーたっぷり。
そして、17万5千人のインド人難民たちとともにバスで1000㎞離れたヨルダンに到着し、インド本国からの許可が降りて、インドの国旗が掲揚されるラストシーン。
感動モノでした★
『ファン』(FAN)
”キングオブボリウッド”の愛称で知られるインド映画界の大スター「シャールク・カーン」主演の最新作が、『ファン』(FAN)
シャールクそのもののような大スターと、彼を追う狂信的なファンの対決を描いたサイコ・スリラーで、大スターと彼そっくりのストーカーの一人二役をシャールク・カーンが見事に演じ分けています。
監督は「マニーシュ・シャルマー」。2016年4月公開作品です。
デリーに住む青年ゴーラヴは、インド映画界のスーパースターであるアリヤン・カンナーの熱狂的なファン。アリヤンのモノマネで地元のコンテストに優勝するなど、その心酔度は半端じゃありません。
そんなゴーラヴがある出来事をきっかけに、念願のアリヤンとの対面を果たすのですが、そこでアリヤンから言われたのは、「君は私のファンじゃない」という一言。
アリヤンのことだけを考えて生きてきた20年間をすべて否定されたゴーラヴは、その一言をきっかけに、彼を追い詰めるストーカーとなっていくのです。
ストーリーの斬新さと展開の面白さはもちろんのこと、アリヤンとゴーラヴの一人二役を演じる「シャールク」の演技がすごい!
顔は特殊メイクが施されているのですが、表情やしゃべり方、仕草や雰囲気など、まるで別人が演じていると思えるほど。
アリヤンを追い詰めるゴーラヴのストーカー的行動の数々や、美しいクロアチアの街を舞台とした追っかけっこアクションもなかなかの見どころ。
実は、「シャールク・カーン」、個人的に好きな俳優で、初めて観たインド映画が彼の出演作品だったんです。
その映画は、『DALL』(恐怖)という作品で、その映画でも彼はストーカー役でした(インドのジャイプルの豪華な映画館「マーン・マンディル」で観ました★)。
当時はまだ脇役級でしたが、今や押しも押されねスーパースターになってしまいましたね。
『ガッバル再び』(GABBAR IS BACK)
『ガッバル再び』(GABBAR IS BACK)は、汚職を行う役人や医者、実業家などを次々と破滅させていく謎の男「ガッバル」の活躍を描いたアクション・ムービー。
2002年にヒットしたタミル映画「Ramanaa」のボリウッド版リメイクだそうです。
主演のガッバル役に「アクシャイ・クマール」、監督は「クリッシュ」
ある時、マハーラシュトラ州で汚職の噂のある10人の役人が誘拐される事件が発生します。
犯行を名乗り出たのは「ガッバル」という人物。
警察は謎の男「ガッバル」を見つけ出そうと調査を行いますが、それをあざ笑うかのように、再び10人の汚職官僚が誘拐されてしまいます。
誘拐、殺人という不当な手段を用いながらも不正を一掃する義賊「ガッバル」。その行動は、次第に人々の支持を受けるようになっていくのです。
彼はなぜ、汚職官僚を誘拐し、殺すのか。
物語が進むにつれ、その謎が解き明かされていきます。
実は、この「ガッバル」という名前 、インド人にとっては悪人の代名詞的な名前なのだそうで、何でも1975年に公開され、インド中で大ヒットした映画『ショーレイ』(Sholay)に出てくる恐怖の悪役が「ガッバル」という名前だったのだとのこと。
汚職をしている官僚たちも、「ガッバルが来るぞ!」というだけで、戦々恐々なのです。
南インド映画オリジナルらしい、これ以上ないくらいの勧善懲悪モノ!
悪い奴はとことん悪く、悪の親玉であるパールティーは、極悪非道を形にしたかのような外見と言動です。
そんな悪者たちを徹底的にぶちのめす「ガッバル」
観ていて気持ちいい、「映画はこうでなくっちゃあ」って思える作品です。
『カプール家の家族写真』(KAPOOR & SONS (SINCE 1921))
今回観た5作品のうち、一番感動したのが、この映画『カプール家の家族写真』(KAPOOR & SONS (SINCE 1921))
夫婦、親子、兄弟、家族間で対立し、バラバラになってしまった一家「カプール家」が、様々な問題を抱えながらも再生していく物語。
リアリティーのある現代インドのファミリードラマです。
キャストは「リシ・カプール」「シッダールト・マルホートラ」「ファワード・カーン」「アーリヤー・バット」「ラトナー・パータク」「ラジャト・カプール」など。
監督は、シャクン・バトラ。2016年上半期のヒット作だそうです。
物語は、避暑地クーヌールに住むカプール家の最長老アマルジート(リシ・カプール)が急病で倒れ、入院するところから始まります。
アマルジートは、彼の息子ハルシュ(ラジャト・カプール)、ハルシュの妻スニータ(ラトナー・パータク)の3人で暮らしていましたが、入院の知らせを受けて、海外に住むハルシュとスニータの2人の息子、ラーフル(ファワード・カーン)とアルジュン(シッダールト・マルホートラ)が故郷に戻って来ることになりました。
90歳になるアマルジートの願いは家族みんなで記念写真を撮ること。
けれども、久々に集まったはいいものの、家族間の問題が次々と噴出。
ハルシュの不倫が明らかになり、小説家として成功したラーフルのベストセラーが実は弟アルジュンが書いたもので、アルジュンの原稿を見せたのがスニータであったと発覚したり。
街で出会った女の子ティア(アーリヤー・バット)を巡ってラーフルとアルジュンの確執が生まれたり、ラーフルが実はゲイということがわかったり・・・。
崩壊寸前になった家族ですが、様々な不幸や問題を抱えつつも、やっぱり「家族」ということで共に生きていく。
そんな物語です。
「誰にだって間違いはある」
そう語るアマルジートと共に、少し気後れしながらもファインダーに収まる家族の姿を見て、涙が止まりませんでした。
映画は、家族のうち、誰かを主人公とするのではなく、家族それぞれのエピソードを入れ替わり立ち代り織り交ぜていくスタイル。
そのため、見る人が夫か妻か、父か、兄か弟かで感情移入する対象が違くなりそう。
そんな中、一番魅力的だったのが、ただ一人、家族みんなで仲良く記念写真を撮りたいと願うおじいちゃんのアマルジート。
お茶目なキャラがとっても魅力的なんです★
2015年下半期から2016年上半期まで、ボリウッドを中心にインド映画のヒット作13本を集めた「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」(IFFJ)
今年も素晴らしい作品が目白押し!
大満足の観賞となりましたー★
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