1994年、アフリカのルワンダで長年続いていた民族間の諍いが大虐殺に発展し、100日で100万もの罪なき人々が惨殺された。アメリカ、ヨーロッパ、そして国連までもが「第三世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、ひとりの男性の良心と勇気が、殺されゆく運命にあった1200人の命を救う。
ホテル・ルワンダ パンフレット
映画の舞台はアフリカ中部の小国、ルワンダです。
今から20数年前、1994年に実際に起こった出来事をこの映画は題材にしています。
映画は2004年に公開されました。
メディア・プロパガンダが生んだ「ルワンダ虐殺」
アフリカ中央部にある小さな国「ルワンダ」。
この国には、人口の85%を占める「フツ族」と、14%を占める「ツチ族」という2つの主要部族がいます。
もともと、2つの部族は共存していたのですが、20世紀前半、当時植民地支配していたベルギーは、支配を効率的にするために、民族を分断する政策を行いました。
ヨーロッパ人に近い容姿を持った「ツチ族」を経済的にも教育的にも優遇したのです。
このことが、ルワンダの紛争の根っこになります。
1962年、ルワンダはベルギーから独立を果たします。
けれども、部族間の差別意識は解消されることはなく、とりわけ、経済的に優位である「ツチ族」に対する「フツ族」の憎悪は高まり続けていきました。
そんな中、1994年に「フツ族」の大統領、ハビャリマナが暗殺されます。
この暗殺の首謀者はわかっていないそうですが、フツ族至上主義者たちはこれをツチ族によるものだと決めつけ、ルワンダ全土にラジオでプロパガンダを行いました。
「フツ族大統領がツチ族に殺された」と。
そして、そのラジオ放送を鵜呑みにしたフツ族が、武器を手にツチ族を襲撃し始めるのです。
この虐殺はフツ系の政府とそれに同調するフツ過激派によって行われ、ツチ族反乱軍が同国を制圧するまでのおよそ100日間に約100万人もの人々が殺害されました。
これは、ルワンダ全人口の約20%にも及ぶ数であるのだとのこと。
ユーモアと機微で1200人の命を救った「ポール・ルセサバギナ」
映画の主人公である「ポール・ルセサバギナ」は、ルワンダの首都キガリにある高級ホテル「ミル・コリン」の支配人。
ポールはフツ族ですが、妻のタチアナはツチ族でした。
虐殺のあった1994年当時、このホテルには国連の平和維持軍が駐在していました。
各国のメディアも滞在する場所でもあり、このホテルだけは平和が保たれていたのです。
そんなポールのホテルに虐殺を逃れた多くのツチ族の避難民たちが避難してきます。
その数、1268人。
ポールは、彼らをフツ族民兵の虐殺の手から守るため、あの手この手を使って奔走します。
多額の賄賂を渡したり、フランスにあるホテルの親会社からの報酬をチラつかせたり、アメリカのスパイ衛星が見張っているなどと脅したり・・・。
ポールは、様々な困難をユーモアと機微で切り抜け、1268人にも及ぶツチ族の難民を最後まで守り続けるのです。
ポールの行動に感動するのはもちろんなのですが、この映画は様々なことを考えさせてくれます。
物語の途中、当地に居合わせた白人たちは、国連の飛行機に乗って故国へと戻っていきます。
その様子をポールを始めとしたルワンダの人々はじっと見つめていました。
国連は、ルワンダの人々を救うためではなく、現地に滞在する白人たちを避難させるために飛行機を派遣したのです。
ここには、明確な命の価値の違いがありました。
プロパガンダについても考えさせられます。
フツ族至上主義者たちは「ツチ族が我々を脅かそうとしている」などというラジオを流してツチ族に対する恐怖を掻き立てます。
そして、いつしかフツ族は一斉にツチ族を虐殺しはじめるのです。
軍隊や警察ではなく、一般の民衆が鉈を振りかざし手を血に染めていく姿はショッキングでした。
映画で象徴的なセリフをひとつ。
西側のジャーナリストが撮った虐殺の映像を見て、ポールは言います。
「これが世界中で流されればルワンダに国際援助が来る」と。
しかし、ジャーナリストは言うのです。
「いや、そうはならないだろう。世界中の人々はこれを見て、怖いね。と言う。でも、その後で何事もなかったようにディナーを続けるんだ」と。
「ポール・ルセサバギナ」という人物の感動的な行為と、世界から忘れ去られた「ルワンダ虐殺」の真実を知ることができるリアルな物語「ホテル・ルワンダ」
多くの人に観て欲しい傑作の映画です。
キャスト
ポール・ルセサバギナ :ドン・チードル
タチアナ・ルセサバギナ :ソフィー・オコネドー
ジャック・ダグリッシュ :ホアキン・フェニックス
デュベ :デスモンド・デュベ
デイヴィッド :デイヴィッド・オハラ
パット・アーチャー :カーラ・シーモア
ビジムング将軍 :ファナ・モコエナ
ジョルジュ・ルタガンダ :ハキーム・ケイ=カジーム
グレゴワール :トニー・キゴロギ
オリバー大佐 :ニック・ノルティ
スタッフ
監督 :テリー・ジョージ
脚本 :ケア・ビアソン テリー・ジョージ
製作 :A・キットマン・ホー テリー・ジョージ
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