「ミルカ」悲劇を乗り越えたランナーの壮大な一大叙事詩【映画】

「ミルカ」悲劇を乗り越えたランナーの壮大な一大叙事詩【映画】

ミルカ エスニック映画館
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 ローマオリンピックの400メートル決勝の試合において、インド代表のミルカ・シンは世界記録を出した直後とあって、金メダルへの期待を一身に集めていた。

「走れ、ミルカ!」

コーチがかける声に重なるように、ミルカの心には渾身の力で叫ぶ父の声がこだました。すると、なぜかミルカはゴール前で後ろを振り向く。結果、4位まで転落、「インドスポーツ界最大の悲劇」と国じゅうを落胆させることとなった。

チャンディガルの家に戻った彼は、オリンピックでメダルを逃した無念さだけでなく複雑な思いを抱えて沈んでいた。インドとパキスタンの友好親善試合のためにインド側団長としてパキスタンへ行くようインド政府からの要請を受けたにもかかわらず、それをかたくなに固辞していた。

ネルー首相から派遣された担当大臣がミルカを育てたふたりのコーチに同行してもらい、彼を説得すべく訪ねようとチャンディガル行きの汽車に乗る。道中、ふたりがミルカ・シンの陸上選手としての苦難と成功の軌跡とともに、生い立ちのストーリーを語り始めた。

どうして彼はパキスタン行きを拒んでいるのか、そしてローマオリンピックで彼の心を後ろへと引っ張ったトラウマとは何なのか。ミルカの謎の行動が、解き明かされていく。

1947年。イギリスからの独立後、インドとパキスタンとの国土分断の混乱のなか、幼いミルカとその一家が暮らすシク教徒の村に、残酷な運命が襲いかかった。そのときからミルカ・シンが背負った厳しく激しい人生とは・・・

映画」ミルカ 公式ホームページ

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インドアカデミー賞14部門を独占した歴史的傑作

インド人なら誰もがその名を知っている国民的英雄「ミルカ・シン」

彼は、1959年に当時の陸上400m走の世界記録を更新したシク教徒のランナーです。

インド・パキスタン分離独立の混乱のさなか、家族が虐殺されるという悲劇に見舞われた少年ミルカ。

難民としてインドに逃れたミルカは、青年へと成長し、入隊した軍隊で陸上選手として頭角を現して、オリンピックに出場するまでになります。

しかし、そんなミルカの心の奥底には、少年時代の凄惨な記憶が深い傷となって残っていたのでした。

過去の悲しみと向き合う心の戦い、そして、必死に走り続けアスリートとして成長していくミルカ。

 

監督のラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラは、そんなミルカ・シンのドラマティックな人生を映画化しようと考えます。

公開された映画「ミルカ」(Bhaag Milkha Bhaag)は、インドで大ヒットを記録。

また、インド・アカデミー賞において14部門を独占し、権威のある映画賞であるフィルムフェア賞でも作品賞、監督賞、最優秀男優賞を含む7部門を受賞するなど、世界の50以上の映画賞に輝いています。

「ミルカ」、間違いなく、インド映画を代表する傑作です!

映画「ミルカ」公式予告編

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インド映画っぽい「踊り」のシーンは少ないけれど・・・

インド映画と言えば、ダンスシーンが有名です。

話の流れと全く関係のない場面で踊りだしたり、主人公とヒロインが踊りだすと、その周りにいた人々がみんな一斉に一緒になって踊るというアレです。

だけど、この映画にはそういう、いわゆるインド映画風のダンスシーンはありません。

監督のラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラがそういう踊りのシーンを入れない方針だからです。

だけど、それでもインドで大ヒット!

インド社会が、インドの映画に対する見方が確実に変わりつつあるのがわかります。

 

踊りのシーンがなくても、インド映画らしさは満点です。

ストーリー中に挿入される、思わずクスッてしてしまうようなコミカルなやり取り、わかりやすい演出。

なぜそう行動したか、なぜそうなったかを丁寧に見せてくれるストーリー展開。

凄惨なシーン、悲しいシーンとコミカルなシーン、前向きなシーン、感動的なシーンの明確なコントラスト・・・。

 

気分が沸き立つような音楽が場面場面に入り、観客をグイグイとストーリーに引き込んでいきます。

実際のミルカの競技映像

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いつの間にかミルカに感情移入してしまう

映画は、進行形の、

  • 大臣がパキスタンとの親善試合に参加するようミルカを説得に行くシーン(その道中でふたりのコーチにミルカの生い立ちを聞く)

回想シーン的な、

  • ミルカの少年時代からオリンピック選手になるまでの人生の軌跡のシーン

のふたつのシーンが並行して流れます。

 

コーチの話により、ミルカの過去を徐々に知るようになっていく大臣(映画の観客も同じです)。

少年期から青年期にかけて、ミルカは、過去の記憶を内にしまい続け、ひたむきに生き続け、走り続けます(人生の軌跡のシーン)。

物語の終盤、大臣にも観客にもミルカの過去の記憶のすべてが明らかにされ、そして、ミルカもそのトラウマと向き合うこととなります。

 

観客は、ミルカとともに暗い何かを胸の奥に抱えながら、

懸命に生き続け、トレーニングして走り続けるミルカの姿を、時には、美しい女性に恋に落ちたり、ひとときの欲望に溺れ失敗してしまったり、生き別れた姉と再会して涙したりするミルカの姿を、スクリーンを通して共有し続けます。

 

文化も宗教も、その境遇もぜんぜん違う日本人であるわたしですが、いつしかミルカに感情移入するようになっていきました。

 

「走れ、ミルカ!」

って感じです。

映画「ミルカ」主題歌

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爽やかな感動、奮い立たせてくれる挿入歌

劇中、何度も涙をこらえるのに苦労しました。

スクリーンを通して、ミルカの人生を共有したことの証です。

個人的には、ここ数年で一番感動した映画でした。

 

そしてそして、これまた良かったのが、映画の挿入歌!

劇中、ポイントとなる場面で何度か流れる歌なのですが(上のYOU TUBE動画の歌)、これが熱い歌なんです。

歌詞は、「ミルカ、炎になれ!」的な歌詞だったかな?

インド的なリズムに合わせ、伸び上がるように歌う男性ボーカルの声。

困難を乗り越え、遥か高みへと走り続ける、そんな感じ。

 

歌を聴いていると、映画の中の様々な場面が蘇ってきます。

あれれ、なんだか、また目頭が・・・

 

映画「ミルカ」、ぜひ見てみてください!

キャスト

ミルカ・シン:ファルハーン・アクタル
ビーロー:ソナム・カプール
イシュリ(ミルカの姉):デヴィヤ・ダッタ
ミルカの父:アート・マリク
ミルカ(少年時代):ジャプテージ・シン
グルデーウ・シン(軍の陸上コーチ):パワン・マルホトラ
ヴィーラパンディアン(軍の教官):プラカーシュ・ラージ
ランヴィール・シン(国家チームのコーチ):ヨグラージ・シン

スタッフ

監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
脚本:プラスーン・ジョーシ
撮影:ビノード・プラダーン
音楽:シャンカル・イフサーン・ロイ

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